「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉があります。ことわざで意味としては、「学問や技能が深まった人ほど、かえって他人に対して謙虚になることのたとえ」らしいのですが、この話はそれを表しているように私は感じました。米作りの難しさ、ぶち当たる壁。解決していく度に成長していく主人公。彼の頑張りを、是非とも読んでみてください。
棚田が並ぶのどかな田舎。そんな穏やかなスローライフの現実は甘くなかった。風景撮影が好きな主人公がひょんな事から魅了された、日本の伝統である米作り。保管温度に使う水までこだわった、宝石のような極上の米。それを掻き込む描写に主人公ともども魅了され、さぁ始めるぞ!と飛び込んだ農業の世界は…、果たして甘くなかった。作者ご自身が農業体験者と言う事で、エピソードのどれもこれもが非常にリアル。浮ついた憧れを吹き飛ばす一方でじっくりと農業の魅力が学べる、地に足の着いた農業小説です。
主人公の良太が、週末の小旅行で見つけた棚田。そこから米作りの魅力に取りつかれ、農業の道へ……という導入のお話です。お米がどうやって作られるのか、日本海側の某県の土地柄や方言など、タイトル通りにほんのり恋愛要素も織り交ぜつつ非常にリアルに描かれ、勉強になります。違う業種での会社勤めをしていると意識することは少なく、近くのスーパーでもどこでも簡単に手に入るお米ですが、それまでにはいろんな人のけして楽ではない仕事があってのことなのだなと、そんなことを今更ながら考えました。感謝です。