第6話



小学生の頃

失敗は即、いじりの対象だった


からかっている側や

みているだけの立場から

からかわれる側への転落


「からかっているつもり」の連中は

イジメの自覚がない


助けない教師

役に立たない大人

責める親

絶望から自殺した同年代の子たちを報じるニュース


一歩間違えれば

自分の名もニュースで読まれるだろう



それを避けるには

「失敗しないこと」が一番




でも

一度も失敗しない人は

どれだけいるのだろうか



「いじめられるのは

お前自身にも原因がある」


信じられないけど

平気でそう言う大人はいる


「いじめ?

ちょっとからかわれただけだろ?

大袈裟なやつだ

被害妄想も大概にしろ!」


勇気をだして助けを求めても

突き放す教師



「死〜ね! 死〜ね!」


そう囃すいじめっ子たち


見て見ぬふりをして

助けないクラスメイトも

いじめの加担者だ



誰ひとり味方のいない

子どもの「逃亡先」はどこにもない


「と〜べ! と〜べ!」


囃し立てる声に背を押されて

校舎の窓から身を投げ出すしかない



「からかっただけ」

「だって『やめて』って言わなかった」

「だから嫌がってたなんて気づかなかった」

「「「こんなことで死ぬなんて思わなかった!!!」」」


いじめていた子どもたちは

口を揃えてそういう


たとえ嫌がっても彼らは笑っているだけ

もっといじめが酷くなる


絶望から口を閉ざした

ただそれだけだ



「助けたいと思ったけど怖かった」


それは加担したのと同じだ


助ける気があれば

親でも教師でも訴えればよかった

声をあげればよかった


それをしなかったのは「自分じゃない」から



「助けたら! 今度は自分がいじめられるじゃないか!」


我が身可愛さに一人を差し出し

見殺しに……いや、死に導いた

お前たちもまた加害者だ



「ひとりでいることの多いクラスメイトを仲間に入れてやってた」


教師よ

本当にそう見えていたというなら

お前の目は節穴だ


その目をえぐり

目の不自由な人に譲れ


「見えるのに


だったら

その両の眼はいらないだろ?



きっと

自分たちが追い詰めて

目の前で失われた生命を悼む心は

そのうち忘れ


数年後には

まるで自慢話のように

まるで他人事のように


笑いながら誰かに話すだろう



その話をされた相手は笑顔か?


死んだ子と

どこかで繋がってないか?


幼なじみだったり

親戚だったり

同じ習い事をしていたり



苗字がかわった

君が笑い話にした子の


きょうだい


ではないのか?



苗字がかわったのも

離婚か?


もしかして

無理心中だったら……



社会的に追い詰められて

次にのは

きみか

家族かもしれない



大丈夫

きみたちが死んでも


「こんなことで死ぬなんて思わなかった!!!」


と言われるか


「悩んでるようには見えなかった」

「いつも仲間たちに囲まれて楽しそうだった」


なんて言われるだけさ



そう

きみたちが主張したように…………ね

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