NTR男の物語

名無しの権兵衛

NTRに見える全く別のナニカ

 オッス! オラ、寝取ねとら劣男レオ

 くそふざけた名前なんだが、少し説明させて欲しい。


 まず、俺は死んだ。本名は伏せておくがしがないサラリーマンとして普通の人生……訂正。くそみたいな現代日本に苦しめられ、最後は高齢ドライバーのアクセルとブレーキの踏み間違えによる事故であっさりと死んだ。


 そして、次に目が覚めたら、なんとD〇サイトで売ってそうな同人エロゲーの世界に転生していた。


 しかも、主人公。きゃっほい、やったね! これで人生勝ち組だ!


 なんてことも考えたが、悲しい事に俺が転生したのはNTRという罪深いジャンルの世界だった。何が悲しくてNTRされなければならないのだ、こんちくしょうめ!


 まあ、それはさておき、俺が転生したのは寝取劣男とかいう名前以外何の変哲もない普通の男だ。中肉中背といういかにもなキャラなのだが、一つだけ誇れることがある。


 それは、超絶美少女の幼馴染がいることだ。しかも、両思いとかいう、前世で徳をくっそほど積み重ねたくらいの幸運の持ち主。それが俺だ。


 しかしだ。先程言ったが、この世界はNTRというジャンルのエロゲー世界だ。つまり、彼女はNTRされる。十数年の思いも、チ〇ポには勝てないというわけだ。ふぇぇ……!

 まあ、逆も然りだが。十数年の思いはマン〇に勝てないというパターンもある。快楽に人は抗えないのだ。戦闘機を素手で破壊できる女忍者も屈服するのだから、そのすごさが分かるだろう。


 と、話は逸れたが、俺には超絶美少女で幼馴染な彼女のひいらぎかなでがいる。


 とんでもなく可愛いのだが、彼女はNTRるのだ。今もニコニコと俺の手を握って一緒に学校に登校しているのだが、この学校が問題だ。

 なんと、先輩に槍間やりま九里男くりおという黒い噂が絶えないヤリチン男がいるのだ。


 しかし、こう言ってはなんだが、もう少しまとも名前はなかったのかね?  

 なんだよ! 寝取劣男と槍間九里男って! 大事なのは快楽落ちするヒロインだけってか! 大正解だよ! 竿役にキャラクター性なんて皆無なんだ! 


 さて、俺の不満は置いておいて問題なのは槍間九里男である。こいつがいる限り、俺の学校生活は常に警戒しておかないとならないだろう。


 だが、あえて言おう!


 俺は別に彼女がNTRれても一切心は痛まない!


 え? 好きじゃないのかって? 


 好きに決まってるが……転生した俺からすればどうでもいい話だ。


 こんなクソ陰キャに不釣合いな超絶美少女の彼女など勿体無い。勿論、俺だって付き合いたいとは思うが、面倒なトラブルはごめんだ。彼女の容姿は絶対にトラブルを巻き起こす。


 そんなことよりも個人的には名前を改名したい。成人すれば役所で改名が可能なので早く大人になりたい。光宙ぴかちゅうとか獅子王らいおんきんぐとかいうキラキラネームを付けられた子の気持ちが分かる。一秒でも早く改名したい。


「どうしたの? 眉間に皺なんか寄せて」

「ううん。なんでもないよ」

「そう? 何かあったら言ってね?」


 いい子である。

 いい子であるのだが、NTRるのだ。快楽堕ちのメスになってしまうだ。なんと悲しい運命なのか。まあ、本来の主人公であれば絶望しかないが、俺には関係ない話だ。


 二人でラブラブな雰囲気を出しながら学校へ登校していると、そこへ件の男が現れた。


 髪を金髪に染め上げ、サロンで肌を焼いたのか、竿役にありがちな褐色肌でアスリートのような体型をしている槍間九里男が俺たちの前に立ち塞がる。


「よう、お二人さん。朝からお熱いことですね~」

「槍間先輩……」


 露骨にいやそうな顔をする奏。でも、チミィ……どうせ、こう言うんでしょ? 「ああいう軽薄そうな男の人って嫌い! それにいい噂は聞かないし」って! 俺、知ってるんだからね!


 そんで、最終的には「このチン〇! 先輩のチ〇ポの方がいいのォッ! あんな短小包茎クソ雑魚〇ンポなんかより、気持ちよくしてくれるカリ高極太チン〇の方がいいのォッ!!!」って言うんだろ!

 アヘ顔晒しながらダブルピース決めて「ごめんね、劣男。貴方の短小包茎よわよわオチン〇じゃ、私イケないの……」とか言うに決まってるんだい!


 おっと、妄想が激しすぎた、反省、反省。


「槍間先輩。僕たち、先に行きますね」

「へいへいっと。お邪魔虫は消えようかね~」


 と、すんなりと道を開けてくれた。一種の演出だろう。エロゲー的には彼が竿役ということを教示してくれる為の登場だったのだ。多分、そうに違いない。


「私、槍間先輩って嫌い! 軽薄そうで、いっつも女の子にちょっかいかけてるんだよ! それにいい噂も聞かないし!」


 うっひょ~~~! 想像していた通りの台詞です! ありがとうございます! いい塩梅になります!


「僕も知ってる。奏も気をつけてね」

「大丈夫! 私は劣男以外の男なんて全然興味ないから!」


 くそ~~~! まさかの二段構えだったか~! やるじゃないの!


 思わず、噴いてしまいそうだったがなんとか堪えた俺は学校へ向かうのであった。


 ◇◇◇◇


 あっという間に放課後。俺は漫画研究部とかいう部活動に入っており、奏は女子テニス部に所属しているので放課後は部活が終わる時間まで会えない。


 というわけなのだが、転生を果たした事で人生経験が豊富な俺は天体観測を行っている天文部から望遠鏡を拝借して学校の屋上へと向かっていた。

 賢明な諸君らならお分かりだろう。朝方に全く無関係であった槍間がわざわざ待ち伏せしてまで俺たちに絡んできたのだ。


 つまりだ。彼は奏を陥れる決定的な証拠を持っている! 


 脅迫のネタを手に入れた槍間がやる事は一つ!


 彼女を脅して肉体関係を迫り、快楽落ちさせることだ!


 方程式といってもいいぐらいの鉄板ネタである推理を果たした俺は、どのような感じでNTRされるのかを観察することにしたのだ。


 そんな訳で天文部から借りた望遠鏡で屋上から校舎のどこかにいる槍間を探す事にした。


 簡単に見つける事が出来た。案の定、使われていない教室に槍間と奏がそ揃っている。望遠鏡から覗いて見えるのは彼女の焦った表情と槍間がスマホを突き出している姿だ。


 槍間は後ろを向いているので表情は確認できないが、恐らく酷く醜悪に歪んでいるに違いない。げっへっへっへ!


 残念な事に何を話しているか聞こえないので内容は分からないが、奏にとっては槍間の命令に従うくらい大事なことなのだろう。服を脱ぎ始める奏さんエッロ!!!


 その後は、語るほどのこともない。奏さんが今まで味わった事のない快楽を槍間に部活動の時間が終わるまで叩き込まれただけである。ビクンビクンしてるのエロいな……。


 色々と済ませた槍間はズボンを履きなおし、疲れきって倒れている奏を放置して帰っていった。

 それから、しばらくすると俺の携帯が鳴る。分かりきった内容だ。今日は一緒に帰れないという奏からのメールであった。


 すぐに俺は「わかった」とメールを送り、走り出した。槍間を追いかけて。


 何故、彼女を慰めるのではなく槍間を追いかけるのかって? 


 そんなの決まってる!


 ゲームでは語られない槍間の日常を知るためだ!!!


 言っておくが男が好きという訳ではない。俺も女の子が好きだ。


 そう遠くへは行ってないだろうと思い、槍間を追いかけていた俺は彼を見つけることに成功した。

 どこへ向かっているのだろうかと俺は物陰に隠れながら、槍間のあとをついていく。


 辿り着いた場所は普通の繁華街。槍間を見失わないように俺は龍が〇くとメタ〇ギアで鍛えぬいたスニーキングスキルで追いかける。

 彼が入っていったのはジムなどが入っているビルの中だった。あそこで何をしているのか気になった俺は彼の後ろをついていく。


 槍間についていくと、彼は二階に入っているジムへと入っていく。会員でもない俺は入るのを躊躇ったが、槍間のことがどうしても気になり、中へ足を踏み入れた。


 槍間が入っていったジムはあまり大きくないがトレーニング機器が豊富であり、多くの者が利用していた。俺は槍間がどこにいるのかと探し回っていると、トレーニングウェアに着替えた槍間を発見した。

 彼はトレーナーに教わりながらベンチプレスを行っていた。その光景を見て俺は自身の敗北を認めたのだ。


 見えないところで彼は努力してたんや……ッ!!!


 軽薄そうな男? 違う! 彼は女の子にモテるため、必死で努力を続けることの出来る立派な男や!!! 


 その後も、槍間はトレーナーに色々と教わりながらトレーニングに励んだ。そりゃ、アスリートみたいな体型になるのも納得できるわ。


「あれ? 君、見かけない子だね? もしかして、ご新規さんかな?」

「あ、すいません! ちょっと、友人がいたもので思わず入ってしまいました! すぐに出て行きます!」


 ジムの関係者と思われる人に声をかけられた俺は逃げるように、その場から走り出した。


 繁華街を飛び出して、自宅へと帰っている途中、俺はある一つの決意をした。


「槍間先輩の調査をしよう!」


 槍間の身辺調査を行う為に俺は犯罪行為に手を出す。具体的に言えば、盗撮と盗聴である。自宅に帰った俺は早速ネットでポチるのであった。


 これで後は盗聴器とカメラが届くの待つだけである。数日は掛かるだろうが仕方がない。こればっかりはどうしようもないのだから。


 ふと、気になったことがある俺は横に住んでいる奏の部屋を窓から眺めた。家が横同士という設定に加えて、窓からでも移動が出来る距離と言うのは流石と言えよう。


 だからといって、彼女を慰めにいくことはしないが。


 恐らく、今頃はあの暗い部屋の中で放課後の事を思い出してオナニ〇をしているに違いない。忌々しい記憶だろうが身体に刻まれた快楽はきっと彼女の心を蝕んでいるのだ。


 悔しい! けど、感じちゃう! ビクンビクンッ!!!


 きっと、そうだ。彼女も〇ナニーして果てた後、背徳感や罪悪感やらで情緒は乱れるだろうが安心してくれ。数週間後くらいには、アッパラパーになって立派なメスになっているから。


 ◇◇◇◇


 翌日、化粧で隠しているが目の下にクマが出来た奏がいた。いつもと変わらない様子だが、俺は知っている。すでに彼女が槍間の魔の手に落ちていることを。あえて、追求しないが。


 どことなくギクシャクしている彼女の手を取って、俺はいつものように奏と登校する。当然、道中にはにやけ面の槍間が待ち構えていた。

 こいつ、もしかして態々回り道をしてまで奏に会いに来ているのか?

 そうだとしたら、なんて健気なんだ。昨日も筋トレで身体を酷使していると言うのに、女一人の為にそこまでするなんていい男ではないか。


 誰だ、屑野郎だなんて言った奴は!


「な、なにか用ですか? 槍間先輩」

「ん~? 俺がいちゃいけないの?」

「べ、別にそういうことを言っているわけでは……」


 ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべている槍間に奏は昨日の勢いはどこにいったのかと言うくらい、うろたえていた。


 二人がどういう関係なのかも完全に理解している俺は、とりあえず困っている彼女を庇う彼氏の役割を果たす。


「先輩! 奏が困っているのでやめてくれませんか!」

「おっとっと~。怖い、彼氏だな~。奏ちゃ~ん」


 ちゃ~んのところでキーを上げるのはやめて欲しい。

 イ〇ラちゃんか、テメーは!


 いかん、いかん。思わず突っ込んでしまう所だった。


「劣男! いいから行こ!」


 と、奏に無理矢理連れられて槍間の横を抜き去っていく。去り際に不気味な笑みを浮かべていたが俺は全て知っている! この後、休憩時間に彼女を呼び出してフェ〇とかさせる気だろ! まあ、いいけど。


 学校に到着後、気分が悪いということで奏は保健室へ行く事に。一応、彼氏である俺は一緒についていこうかと優しく訊いてみたが、予想通り断られた。


 というわけで俺は普通に授業を受ける事にした。これまた予想通り、彼女は帰ってこなかった。なので、俺は行動に出る事にした。


 休憩時間を利用して槍間先輩の教室に向かい、適当な嘘で彼の情報を得ることにしたのだ。


「あの槍間先輩ってどういう人なんですか?」

「う~ん。いい噂を聞かないって言うけど、割と普通だよ。困ってる子がいたら助けてあげるし、休んでる子の所にプリント届けてあげたりするいい人だね」

「おお~……! あの家の場所とか知ってます?」

「ああ、知ってるよ」

「教えてくれませんか? 俺、この前、カツ上げされそうになったところを先輩に救われたんです!」

「それくれいだったらいいよ」


 げっへっへっへ!

 個人情報ガバガバで助かりますね~!


 俺は槍間の住所を手に入れて、学校をサボることにした。どうせ、今頃は奏に夢中なので槍間は気がつかないだろう。俺と言う犯罪者が自宅に向かっている事を。


 槍間の家は俺たちの地区から離れており、バスか電車で行かなければならないほどであった。そう考えると、やはり槍間は健気な男であろう。手に入れたい女の為に朝早くから俺たちの所に来るのだから。

 今まで見えなかったNTR男の努力を知って俺は涙を零しそうになった。


 ううッ! 努力してるんやね!


 俺なんかと違って真面目に努力してるんやね!


 槍間の家に着いたのはいいが、マンションだから入ることが出来ない。だが、そんなことは問題ない。俺は管理人のもとへ向かい、適当な嘘で鍵を開けてもらい、槍間の自宅に侵入した。犯罪なので真似しないようにね!


 俺は槍間の部屋に入り、監視カメラを設置し、盗聴器をコンセントの中へ設置した。とりあえず、一か所だけでは足りないので複数の場所に監視カメラと盗聴器を設置し、俺は一仕事を終えて家に帰った。


 家に帰った俺はパソコンを立ち上げて監視カメラとモニターを繋ぐ。これで準備は整った。後は学校が終わるまで寝て待とう。


 ◇◇◇◇


 目が覚めると夕暮れであった。スマホには奏から連絡が来ていたので、適当に具合が悪かったので早退したと嘘をついた。

 奏からはお大事にという簡素なメールだけが返ってきた。彼女ならもう少しは心配してくれてもいいだろうと思ったが、まあ仕方がない。


 なにせ、彼女は今、槍間の部屋にいるのだから。


 監視カメラから送られてくる映像と盗聴器から聞こえてくる音声を確認すると、やはり二人は保健室でヤッていたらしい。エロ漫画みたいな展開で笑い出しそうになるが、とりあえず、モニターに映る二人の動向を眺めた。


 なんてことはない。嫌々言いながらも、快楽に喜んでいる奏の姿といちいち彼氏と比べたがる槍間の姿が映っていただけだ。


 当事者だったなら脳が破壊されていたことだろうが、生憎俺は転生もとい憑依しているようなものだ。とくに思うようなことはない。

 いや、思うようなことはある。槍間の体が逞しいのとチ〇コがデカいことだ。同じ男として羨ましい。


 槍間がアメリカンドッグなら俺のはよくてシャウエッセンだ。悲しい。勝っているのは付き合いの長さだけ。チン〇の長さは完全敗北である。


 夕日が沈み、月明かりが差し込んでくる時間になって二人は行為を終えた。モニターの中の奏は急いで服を着替えて帰っていき、残された槍間はシャワーを浴びている。


 後は飯食って寝るだけなのかと思っていたら、槍間は身綺麗にしてパソコンの前に座った。はて、一体何をしようと言うのかと注目していたら、彼は動画配信を始めるのであった。


 ふぁッ!?


 動画配信者だったんか、アイツゥ!


「よう、メス豚ども。待たせたな~。九里男のなんでもやるちゃんねるはじめっぞ~! 今日はメス豚にオススメしてもらったゲームしてくっから、よろしく~!」


 チャラい。でも、顔と声がいいから腹立つけど、トークも面白くて楽しそうだ。


 一応、チャンネル確認してみよう。


 チャンネル登録者数、90万越え!?

 人気配信者じゃねえか! え? やばいんだけど!

 こりゃ勝ち目ないわ!


 槍間はその後、二時間ほど配信を行った。これで後は寝るのかなと思ったが、彼はパソコンの前から動かなかった。もしかして、他の配信者の動画でも見ているのだろうかと視点を変えて見ると、彼は有名AV男優が配信しているエッチの講座を真面目に聞いていた。


 ほわぁッ!?

 そりゃテクも向上するわ!

 なんなんだ、こいつ!

 求道者か、なんかか!?


 動画を見終わった槍間は爪の手入れを行ってから眠りに就いた。それを見て、俺は尊敬の念を抱く。俺も爪を定期的に切ってはいるが、槍間のようにやすりなどで綺麗に整えてはいない。奴は人の女を奪うくそ野郎だが、女性への配慮は俺よりもあった。そりゃ勝てんわ。


 ◇◇◇◇


 休日、俺は久しぶりに奏とデートした。エッチもしたが、奏は満足していなかったのだろう。俺が寝ている横でオ〇ニーをしていたのだから。せめて、俺が本当に寝てるか確認して欲しい。めっちゃムラムラしてんねん!


 ここで襲ってもいいが、敢えて鈍感な彼氏を演じておこう。


 デート後、分かれて家に帰った奏と俺。恐らくは彼女は火照った体を冷ますために槍間の家に向かうはず。というわけで俺はモニターを起動した。


 すると、予想通り、奏は槍間に連絡を取っていた。部屋で他の女とエッチをしていた槍間のスマホが鳴り、彼は愉快そうに三日月状に口元を歪めるとエッチしていた女性を帰した。きっちり、アフターケアしてるところが凄い。


 彼女もセフレの一人なのだろう。

 しかし、槍間に不満はなく、帰る際には軽くキスをしていたりするので、やはり槍間は女性に対して真摯な男に違いない。

 まあ、落としたい女の為に早起きしてまで態々遠い所まで来ているのだ。しかも、筋トレ、配信活動、セフレのケアまでしているのだから男としてというより一人の人間として尊敬できる。


 とはいっても、人の彼女に手を出すのはどうかと思うが、そもそも優秀なオスが魅力的なメスに惹かれ、手籠めにしようと思うのはなんら不思議ではない。むしろ、自然界では当たり前だ。


 対して、俺はどうだ?


 くそ陰キャみたいな見た目に犯罪紛い……犯罪行為を平気で行っている最底辺の人間だ。努力をしている槍間を軽蔑出来るようなものではない。なにせ、彼は犯罪行為をしては……してたわ。普通に脅迫してたわ。


 でも、それ以外はただ普通に快楽堕ちさせてるだけだから悪くはないのでは?


 いや、でも、やっぱり脅迫で迫るのはダメだろう。終わりよければ結果よしだが、まあ、奏が彼を訴えないのなら意味はないだろう。


 と、そうこう考えてる内に奏が槍間の家にやってきた。後はいつも通りだ。彼氏ではもう満足できないとメス堕ちである。実に呆気ない。もう少し、幼馴染の十数年分の思いで抵抗して欲しかったが、多感な年頃なんだ。仕方がないとも言えよう。


 幼馴染はくそ陰キャ、かたや、槍間は努力を欠かさず、女性の扱いも上手く、金まで持っている。どちらに靡くかなど馬鹿でも分かる。普通に槍間の方だ。


「む?」


 モニター越しに二人の性行為を見ていたら、槍間が三脚を用意し始めた。


「こ、これは、まさかッ!!!」


 三脚の上にセットされたカメラを見て、俺は全てを悟った。完全にメス堕ちし、槍間のセフレになったのだ。そして、その宣言をし、俺にNTRビデオレターを送りつけるための準備をしているに違いない。


 俺は脳が破壊されそうになったが、どちらかと震えた。


 どこぞの狩りゲーのように啓蒙が高まった気がする。とりあえず、NTRビデオレターが送られてきたら、ネットに投稿して稼がせてもらおう。


 ◇◇◇◇


「オーマイガッ!!!」


 後日、俺のもとにNTRビデオレターが送られてきたので、早速ネットに投稿して稼いでやろうとしたのに、すでに上げられていた。他の誰でもない槍間の手によって。

 奴はエロビデオ配信サイトにNTRビデオを上げており、収入を得ていたのだ。しかも、かなり高評価なのが腹立つ。どうせ、NTR好きの日本人が高評価ボタンを押しているに決まっている。

 どこぞのアンケートでNTRジャンルが一位をとった国だ。頭どうかしてるぜ! そんなに脳を破壊されたいのか!


 しかし、どうしたものか。


 俺は槍間から送られてきたNTRビデオレターで荒稼ぎをしてやろうと思っていたのに、先手を打たれてしまった。おかげで俺の計画がパーだ。槍間の部屋に取り付けた監視カメラの映像を配信してやりたいが、そのようなことをすれば槍間に気が付かれるだろう。


 どうするか…………!


 そうだ。小説を書こう!


 流石に槍間もweb小説には手を出していないだろう!


 いや、待て。


 あれだけ、ネットを駆使している槍間だ。web小説を書いていないという事はありえないかもしれない。まずは敵情視察だ。ペンネームは分からないが適当に九里男で検索してみよう。


 あった。

 クリオと言う名前で槍間らしきペンネームのweb小説があった。一応、読んでみると、最近流行りの異世界恋愛がメインであった。NTRモノがないのが解せぬ……。


 まあ、いい。ならば、俺が書いてやる!

 一連の流れからすべてを知っている俺ならば傑作を書ける!

 いいや、書くんだ!

 前世で何も残せなかった俺が今世では何者かになってみせる!


 うおおおおおおおおおおッ!

 槍間!

 俺はお前を尊敬するよ!

 やり方こそ汚かったけど、お前は努力を欠かさなかった。

 毎日の小さな努力をコツコツと積み上げて今の自分を作ったんだよな!

 凄いよ、本当に!

 誰だって出来るけど、簡単には出来ない。

 多くの人間が途中で挫折するだろおう。道半ばで諦めて足を止めてしまうだろう。

 でも、お前は最後まで頑張った!

 本当に本当に凄い奴だよ、お前は!

 だから、俺も頑張ってみる!

 もしかしたら、何一つ成し遂げることが出来ないかもしれないけど!

 それでも俺はお前を超える為に足掻いてみせるよ!!!


 ◇◇◇◇


 結果で言えば、俺は最初に書いたNTR小説が受けて小説家になった。ジャンルは官能小説だが、まあ、悪くはないだろう。百万部を超える大ヒット作も出した。


 槍間を見習って小説だけでなく、AVの脚本をやったり、エロゲ―の脚本をやったり、作詞なども手掛けたりした。文才があったかどうかは分からない。ただ、富裕層と呼ばれる人間になれた。


 少しは人に誇れる人間になれた気がする。

 ほとんどがエロ方面だが。

 それでもいいさ。

 前世の様に何もない人生より百倍マシだ。


 そんな俺は今、同窓会に参加している。俺が金持ちと知って、当時のクラスメイトが群がってきた。その中には当然、かつて俺の彼女であった奏の姿もある。


 昔よりもさらに綺麗になった彼女と俺は同窓会を抜け出して個室の飲み屋にいた。


「久しぶり」

「久しぶりだな。風の噂で聞いたが槍間とは別れたんだってな」

「あ……うん。九里男さんは仕事が忙しくて、すれ違うばっかりでね」

「ふーん。そっか」


 グイッと酒を煽る。喉が焼けるような感覚に俺は唸った。


「く~~~ッ! それで、俺に何の用だ?」

「えっと、久しぶりだから何か話したくて」

「NTRのことか! いや、あれは最高だった! あの経験があったおかげで今の俺があるんだからな!」

「ご、ごめん――」

「ああ、いや、気にするな。当時、全部知ってたから」

「え?」


 鳩が豆鉄砲喰らったような顔をする奏に俺はケラケラと笑いながら当時のことを説明した。

 正直、殴られるかと思ったが彼女は安心したようにホッと息を吐いた。


「それなら、少しは罪悪感薄れるかもね」

「途中から完全にノリノリだったじゃねえか! ガハハハハ!」

「まあ、だって、九里男さんエッチ上手かったし! 劣男よりも数倍もね!」

「当時はな! 今じゃ俺の方が上だね!」

「へ~。それなら試してみる?」

「ほう。面白そうだな! ホテル行こうぜ!」

「え? 冗談で言ったんだけど、本気なの? 私、あんなことした相手なのに出来るの?」

「当時の事を思いだして燃えるのもありだろ! ほら、さっさと会計済ませて出るぞ!」

「え、あ、うん」


 というわけで、俺達はホテルで猿蟹合戦をした。

 勿論、俺はさっきも言った通り、学生時代の陰キャではない。

 槍間を見習って、筋トレ、整体などで体つくりを行い、有名AV男優のエッチ講座を受けて風俗で練習し、チントレでチン〇を魔改造している。


 槍間のおかげで今の俺がいるといっても過言ではない。奏には悪いが、彼女のおかげで槍間という素晴らしい先輩に出会えたのだ。そこは感謝しておこう。


「で、どうだった?」

「…………九里男さんよりもよかった」


 枕で顔を隠しながら照れたようにこちらを見詰める奏。


「ハハハハハ! やったぜ! 取り返してやったぜ!」

「それが目的だったの?」

「いや、そんなことはない。そもそも学生時代の恋愛なんてそんなもんだろ。槍間の方がよかった。だから、そっちに行く。浮気だなんて言うけど、婚約したわけでもない。なら、そんなどこにでもありふれた話だ」

「そっか……」

「そういえば、奏は今どこで働いてるんだ?」

「〇✕会社」

「大手じゃん。やっぱり、容姿か! 容姿がいいからか!」

「違うから。むしろ、そのせいで苦労してるんだよ? 上司からはセクハラされるし、同期からは嫉妬されて虐められる! ホント、ブラックすぎてやめてやりたいもん!」

「それなら、結婚すっか?」

「はへ?」

「いや、俺も奏と別れた後は色々と経験して、それなりに彼女も作ってみたけど上手くいかんかった……。でも、奏なら幼馴染だし、俺の悪い所も良い所も知ってるだろ? あと、体の相性も今確認したし、悪くはないだろう?」

「いや、でも、私、彼氏にNTRビデオレター送ったくそ女だよ?」

「ハハハハハハ! 今じゃいい思い出さ! なんなら、俺の家で鑑賞してみるか? モザイクなしのが見れるぜ!」

「やめてよ! そんな黒歴史! てか、なんで消してないの!?」

「参考資料として残してる。後は原点回帰するため」

「訳がわからないわ!」


 興奮して起き上がっていた奏だったが、叫び疲れたのかポフッとベッドに倒れる。


「さっきさ、結婚しようって言ったじゃん。本気?」

「本気。嫌じゃないならしようぜ! 俺は奏の嫌な所も良い所も知ってるしな! あ、でも、流石に結婚後にNTRされたら離婚だけどな!」

「もうしないってば!」


 それから、しばらくして奏は消え入りそうな声で返答してくれた。


「…………その不束者ですがよろしくお願いします」


 紆余曲折あったが、俺と奏は結婚と言うゴールを果たした。


 数年後、男三人女三人の計六人の子供を授かり、大家族として頑張っている。いつか、時が来たら昔お母さんがNTRビデオレターを送ってきたことを子供達に教えようかと思う。多分、超気まずくなるか、俺が殺されるか、大爆笑するかだが。

 こういうこともあったんだと子供達に教えるつもりだ。父さんはそのおかげで強くなれたと言おう。


 ◇◇◇◇

 あとがき


 深夜テンションの勢いで書きました。お目汚しすいません。

 でも、後悔はしてません。書いてて楽しかったです。

 ちょっと、過激な言葉を書いてるので運営から削除されるのだけが怖いです。


 では、また('ω')ノ

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