第060話 暖簾の意味とは……
暖簾を潜ると、そこには大衆浴場の脱衣所に似た空間が広がっていた。ただ、木造の内装と、木製の棚や植物性のカゴが置かれていて癒される雰囲気だ。
それにしても、こんなに辺鄙な場所にあるにも関わらずきちんとした造りで、綺麗に管理されている所に驚く。
普通ならちょこちょこ管理しないとホコリまみれになってしまいそうだが、コテージ同様に掃除したばかりのように綺麗だ。
俺はそんな空気を楽しみながら服を着替えて浴場に出る。
そこにはまるで高級旅館のような情緒溢れる露天風呂があった。
「おお~」
俺は無意識に感嘆の声を上げる。
まさかこれほど本格的な温泉に入れるとは思わなかった。
「よし、すぐに体を洗って温泉に浸かるぞ!!」
早く湯船に体を付けて癒されたいのでシャワーのある場所に向かおうとする。
「わぁ~!! すっごーい!!」
「中々いいね」
「いいでしょ?」
しかし、突然すぐ後ろから声が聞こえた。
その音は何かに隔てられているような気配はない。
俺は物凄く嫌な予感がした。恐る恐る後ろを振り返る。
「「あっ」」
そしてそれは相手も同じだったようで、俺はそこにいた人物達と目が合った。それはどう考えても俺が良く知る人たちだった。
「「「「……」」」」
辺りに沈黙が流れる。
「きゃーっ」
しかし、視界の中の一番小さな女の子がタオルで体を隠して悲鳴を上げる。それは俺の妹の蛍に違いなかった。
ただ、他の二人は俺の方を見ても悲鳴を上げる様子はない。大事な部分は都合のいい湯気によって隠れているが、ほぼ裸体が丸見えになっていた。
「な、なんでいるんだ!?」
ハッとなってすぐに後ろを向いた俺は三人を非難する。
一瞬しか見えなかったが、來羽はいつもの戦闘スーツで見ているのとほぼ変わらない女性の曲線の造形部がこれでもかと詰まっていて、一方ですみれさんは女性らしい丸みを帯びた体つきと、大ボリュームの二つの果実にきゅっとくびれた腰、そしてむっちりとした太ももが包容力を感じさせる。
俺ちゃんと男湯の暖簾潜ったよな、な?
「お兄ちゃんこそなんで女湯にいるの!?」
「いや、俺だってわかんねぇよ!!」
蛍が俺に向かって抗議の声を上げるが、俺もパニックになって訳が分からない。
「ふふふふふっ……」
そんな緊迫した空気の中、たった一人おかしそうに上品な笑い声をあげる人物がいた。
すみれさんだ。
そうだ……來羽の反応を聞く限り、すみれさんはここの事を知っていそうな唯一の人。何か知っているに違いない。
「すみれさん、何がおかしいんですか!?」
「ふふふふっ、言ってなかったわね。ここはこ・ん・よ・く・よ♡」
それに気づいた時、蛍が菫さんを責めるような声色で問い詰めた。
「「はぁああああああああああああっ!?」」
俺と蛍の声が揃う。
いやいや、混浴ってどういうことなんだ?
それなら暖簾ってどういう意味が?
完全にトラップじゃねぇか!!
でも……冷静に考えてみれば、他の銭湯があったとしても脱衣所は別れてるか……。
「それなら最初から言ってくださいよ……」
「だって言ったらつまらないじゃない」
俺が呆れたように返したら、すみれさんが不満そうに返事をした。
「つまるつまらないんじゃないですよ!! 俺出てるんで皆だけ入ってください」
「だ・め・よ。これも仕事よ」
「くっ。でも皆嫌でしょう? 男と一緒に入るなんて」
流石にそういう問題じゃないので、彼女たちを見ないようにしつつお風呂から出ていこうとしたら、すみれさんに手をガッシリと掴まれて阻まれてしまった。
その上、仕事言われたら断り切れない。
それでも諦めきれない俺は他の二人に訴えかける。
「別にいい」
「お、お兄ちゃんが目隠しするならいいよ……」
しかし、無情にも条件付きとは言え許可されてしまった。
俺の受難はまだ続くようだ。
退魔師になったのに相方の戦闘服がエロ過ぎて煩悩も祓えない ミポリオン @miporion
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