第2話

「ふーん。これが黒斗君の部屋ね…。なんか男の子って感じ」

「そりゃしがない男子高校生の身なもので…」

「なんでそんなにかしこまってるの?変なの」


いや、お前はなんでそんな平気そうなんだ?

男子の部屋で男と二人きりだぞ?


女子が自分の部屋に来たことなどあるはずもなく。

その上件の人物が、かの有名な宮野ときたものだ。

緊張するに決まっている。

それなのに、うちに来て俺の部屋にあがった宮野は、悪びれもなく早々と俺の椅子に座っている。


宿主である俺がベッドに座るってどうなんだ?

まあ宮野に座られても、それはそれで問題あるっていうか……


もはや驚きを超えて、呆れる黒だった。

その間、宮野は手持ち無沙汰なのか、俺の部屋の中を見渡している。

すると突然ニヤニヤした顔で俺の方を向く。


「黒斗君ってさー、なんか人に見られちゃいけないものとかないの?私図々しくも突然来ちゃったけど、隠したりしなくて大丈夫?」


「自分が図々しいことが分かっててよかったよ…。それに何のことだよ。人に見られちゃいけないものって」


「そ、それは〜、ほら…って女の子に何言わせようとしてるの?変態っ」


「いや変態って……。というか、そっちが言い出したことだろ」


「正論は聞こえませーん」


「自分で正論って言っちゃってんじゃん」


「うるさーいっ」


そう言って耳を塞ぐ宮野。

それをいいことに、ベットで転がり出した。


「おいっ分かったから起きろって!俺が悪かったから!」


「許す!」


勝ち誇った顔で起き上がる宮野。

流石にそれは洒落にならんて。

ってかなんで俺は謝らされてんだ……


「それはさておき、さっきはありがとう、ほんとに助かったよ。黒斗君めっちゃかっこよかった!」


「それはどうも……。大事にならなくてよかったわ。まさかうちに来るとは思いもしなかったけど」


「それは……ごめんだけど。ほらっ、助けてもらったお礼をするために、相手の好みとか探っとこうと思って…」


「その言い訳は少し苦しんじゃないか?ってか、そんな理由で男の部屋に安易とあがるなよ……危ないだろ」


「ふーん。黒斗君は私にイケナイことするような人なんだー、へー」


白々しい様子で、手を交差させながら体を反らせる。

ジト目で見つめてくる宮野の瞳が綺麗で、少し狼狽えてしまった。


「な、なんだよ。別に俺がするってわけじゃなくて、そいういう危険性がな…」


「ふーん。ってことは黒斗君は安全ってことだよね?それじゃあ大丈夫だねっ」


「いやだからそういうことじゃなくてだな…」


どうしよう…話が通じない…

でも意外と悪い気がしない俺も俺である。


宮野も心なしか普段より雰囲気が軽く感じる。

なぜかは知らんが。


まあ考えるだけ無駄か


そう思い至った俺は、勝手に棚から本を取り出し読み始めた宮野を見て、ため息をつくのだった。

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君は蓼食う虫 @Latte90

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