7-1 常世の蟲

剛田の肩に銃剣を突き刺した時、『飛跳閃光』を通じて剛田の心が津波みたいにわたしに流れ込んできた。

金、金、殺し、金、殺し。男、男、女、男女。肉棒、チンコ、ケツマンコ、ないしちゃん、ないしちゃん、ないしちゃん……。

剛田が鬼の形相でグローブを振り下ろすより早く、わたしは銃のスライドを引いていた。

「ブバァッ!! 」

剛田の上半身が爆発して放射線状に血と肉片が飛び散った。同時に欲望渦巻く剛田の思念がパッと晴れた。

この人、ホントに最低だ……。

「ふぅ……」

わたしは切り株みたいに下半身だけ残った剛田からヨロヨロと離れた。

「ズザッ! 」

背後で野比沢が崩れ落ちた。

「大丈夫? 」

駆け寄って声を掛けると野比沢は掠れた弱々しい声で吐くように言った。

「あまり……、よくない……」

改めて見た野比沢は本当に酷い状態だった。

ひしゃげた頭。千切れた腕。穴が空いた腹……。耳や目から赤黒い血が流れ出している。傷はさっきからほとんど回復していない。

これ……、もう助からないんじゃ……?

わたしがそう思った時、野比沢が呟いた。

『鞠夫先生(ドクターマリオ)』

すると黒いポケットからキラキラした何かが出てきた。

何かがゆっくりと回転しながら宙を舞い、仰向けに倒れている野比沢の胸に着地した。

それは銀色の小さなケースだった。見た目は秘密の書類を運ぶアタッシュケースみたいに丈夫そうで大きさは掌くらい。

野比沢は残っている方の手で「カシャ、カシャ」とケースを2回振った。それから痙攣している指先で難儀そうにケースを開けた。

中には風邪薬みたいなカプセルが2つ入っていた。カプセルは白と赤の物が1つ。もう1つは白と青だった。

「口に……、入れてくれ……」

苦しそうに野比沢が呟く。今にも死んでしまいそうだった。

わたしは境内を見回して、奇跡的に無傷だった水飲み場から柄杓に水を汲んで持ってくると、2つのカプセルを野比沢の口に入れて水で流し込む。

「ゴクン……」

苦しげに薬を飲み込んだ野比沢はそのまま目を閉じた。

すると……。

野比沢の体からブクブクと水のような、ゼリーのような半透明の何かが噴き出した。

それはあっという間に野比沢の体全体を包み込み、ポコポコと沸騰したお湯みたいに泡立つ。

あの時の……、満月の夜のアレみたいだ……。

野比沢を包んだゼリー状の何かは、しばらくお湯が沸くような音と共に白い湯気を上げていたけれど、やがて全てが蒸発した。

煙が消えた時、野比沢の体の傷はすっかり修復されていた。

大きくへこんでいた頭蓋骨も、脇腹にあいていた大穴も、そして千切れた腕まで何もかもが元通りだ。

すごい! ……まるで魔法だ。

「ふぅぅ……」

野比沢はゆっくり息を吐き出して目を開けた。そして起き上がる。

「大丈夫……、なの? 」

「ああ、問題ない」

いつもの落ち着いた口調で野比沢は言った。

野比沢は少しの間、感情のよくわからない瞳でわたしを見つめていた。

それから静かに言った。

「あの傷なら簡単に僕を殺せたが……」

言われて初めてその事に気づいた。

ああ、そっか……。さっきまでの野比沢なら、わたしでも殺せたのか……。けれど、そんな事、思いつきもしなかった。

「別に……」

わたしが言いかけた時。

『ルゥゥアァァ……』

不意に歌うような音がした。

わたしと野比沢は驚いて音の方を振り返る。

その音は先程、剛田との戦いで『漆黒の不可解物質』が吐き出したガラクタの山から聞こえてきた。

ガラクタの山が淡い金色の光を発していた。

積み上げらたピアノや掃除機の間から金の糸のような何かがユラユラと揺れていた。

「まさか!? 」

慌てた様子の野比沢か立ち上がった。

『漆黒の不可解物質』

野比沢のコールで黒いポケットの口がグワッと開いた。

積み上がっていたゴミの山は掃除機に吸い込まれるみたいに次々と『漆黒の不可解物質』へ収納されていく。

そして……、ソレが姿を現した。

ソレは金色に輝いていた。発している金色の光は鈍く淡いはずなのに、なぜかソレの姿形を見る事ができない。

わたしは必死に目を凝らす。握った黒い銃が熱を待ち、ブルっと震えた。そして徐々にソレの姿が認識されていく……。

両脇に広がるハートマークみたいな羽。白い羽には墨で引いた文字のような模様があった。頭、胸、腹の三対に分かれた体。全身が白くて短い体毛に覆われていた、腹は米粒を逆さにしたような尖った楕円形。腹の先端、お尻の部分から触手のような金の糸が束になって蠢いていた。小さな体から針金みたいな黒くて長い脚が6本生えていた。足の先には鍵爪が鈍く光っている。

そして頭は……、人間のソレだった。

長い黒髪。浅く閉じられた瞳。その顔はわたしに驚くほど似ていた。

「お母さん!! 」

野比沢が叫んだ。

それは羽化した『常世の蟲』だった。

野比沢の体がガタガタと震え出す。

『ルルウゥゥアァァァァ』

『常世の蟲』は歌うように鳴きながら、ゆっくりと上昇し地面から3メートルくらいのところで止まった。その鳴き声は頭に直接響いていた。そして蟲の羽からはキラキラと金色に輝く鱗粉が舞っていた。辺りに甘い甘いあの匂いが充満している。さらに蟲のお尻から出ている金の糸には何かに巻きついている……。

あれは!?

糸の隙間から垂れた長い耳が見えた。白い尻尾、茶色と白と黒の毛色……、それはビーグル犬のなななだった。野比沢があの時、『漆黒の不可解物質』に保管していてものがさっきの戦いで吐き出されたんだ。

巻き付いた金の糸はビーグル犬の鼻や口から体内にスルスルと侵入している。

「シュワワッ……」

糸が一段と金色に輝いたかと思うと、ビーグル犬の体は粉々に崩壊し、光の粒になって宙を舞った。

そして光の粒は『常世の蟲』の頭へ……。

わたしによく似たその顔が目を閉じたまま、口を開いた。

なななだった光の粒が、スーッと蟲の口に吸い込まれる。

蟲の体がグンと一回り大きくなった。

やがて、さっきまでビーグル犬を捕らえていた金の糸はスルスルと別の所へ伸びていった。

そこには下半身だけになった剛田がいる。

剛田の下半身に金色の糸が巻きついていく。死んでいるはずの剛田の股間が一気に盛り上がり膝がガクガクと震え出す。そしてパッと光が弾けて剛田の体は金のチリになった。チリは蟲の口に吸い込まれていく。

そして……。

それはわたしと野比沢へと向かってきた。

『ルルルゥゥゥアア』

とっさにわたしは銃の引き金を引いて迫ってくる糸を吹き飛ばそうとした。

「バシュ! バシュ! 」

しかしわたしの弾丸は金の糸に当たると水面に浮かぶ波紋のように消えてしまった。

「無駄だ……。その程度の攻撃では蟲に吸収されてしまう」

拳を握りブルブルと震えながら野比沢が言った。

「あれが『常世の蟲』なの? 」

「ああ……、成虫だ」

野比沢がガックリと膝をつく。

「どうなるの? 」

絶望を讃えた瞳で野比沢は言った。

「もう終わりだ……。お母さんはこれから月に帰る。月は奴らの巣なんだ。奴らは元々そこで生まれた生き物だ。そして月までの道すがら、蟲は鱗粉を撒いて人々に新たな蟲の種を植え付けていく。同時にすでに発現した蟲は月に連れて行かれる。今いるサナギは全てお母さんに吸収される。俺も……、おまえも……。虫を宿したものは全てお母さんの糧になる、あの犬のように……。剛田宗夫のように……」

野比沢の声が震えていた。感情的になっている彼を初めて見た。膝をついて俯く野比沢は既に何もかも諦めているように見えた。

蟲の糸がわたし達のすぐ側まで伸びてくる。

糸は野比沢の足元に広がる『支配者領域』の結界に入った。

その瞬間、野比沢のメガネに亀裂が走った。

「キィィィ!! 」

悲鳴のような破裂音がして、周囲の空気に紫色の亀裂が走る。そしてわたし達を囲っていた見えない壁が崩れさった。

手を伸ばせば届くほど、金色の糸が迫る。

わたしは呆然としている野比沢の襟首を乱暴に掴むと、全力で後ろに飛んだ。

「ダンッ! 」

景色がギュンと流れて、金の糸との距離が数十メートル開く。

それでも蟲の糸は取り立てて急ぐ風でもなく、ひどくゆっくりとわたし達を追いかけてきた。

「無駄なんだよ……。お母さんはこれから更に大きく膨らんでいく。十キロ四方を覆う程の大きさで全てを飲み込んだ。

「もう何もかも遅い。手遅れだ……。あぁ、お母さん! お母さん!! こうなる前に元に戻してあげる筈だったのに! こんなはずじゃなかったのに!! 」

野比沢は涙を流して地面を殴った。

わたしは取り乱し絶望している野比沢を見るともなく眺めた。

きっと野比沢の黒いポケットから出てしまったサナギは、時の流れを取り戻して羽化が再開してしまったんだろう。あの時の野比沢は満身創痍でそれに気づけなかった。

蟲は蝶になり、美しく輝く禍々しいあの蝶は月に帰る。わたしを飲み込んで……。

わたしはここで終わる。わたしによく似た顔の蟲に飲み込まれて……。

……。……。……嫌だ。

絶対に嫌だ!

あんなものに飲み込まれたくない。あんなものになりたくない!

もう誰かの顔色を伺って生きるなんてうんざりだ。誰かの影に隠れて日陰にいるのも耐えられない! もう誰にも踏みにじられたりしない! ましてや! わたしにそっくりの顔した知らない女の糧になるなんて!! 絶対に受け入れられない!!!

わたしはわたしだ。お姉ちゃんでもあの見知らぬ女でもない。だからわたしはやりたいようにヤル!

ギュッと銃のグリップを握りしめてわたしは『飛跳閃光』の銃口を『常世の蟲』へと向けた。

目に映るロックオンサイトは『常世の蟲』を捉えるとビックリした様に金色に輝きグルグルと回転した。それからパッと弾けて消えてしまった。

それでもわたしは銃の引き金を引いた。引きまくった。

「バシュ! バシュ! バシュ! バシュ! 」

闇雲に放った弾丸は蟲の手前で波紋を生み霧みたいに消えてしまう。

「カチッ、カチッ……」

弾を打ち尽くしたわたしはそれでも虚しく引き金を引き続ける。唇を噛む。

「……無駄なんだよ」

野比沢が俯いたまま吐き捨てるように呟く。

ムカついた。深いところから怒りが湧き出した。感情がこんなに昂るなんて久しぶりだった。

すると強く握りしめた銃のグリップから思考が流れ込んでくる。『飛跳閃光』が「まだ諦めるな」と言っている……。

わたしは銃の弾倉を引き抜くと野比沢の胸ぐらを掴んで言った。

「野比沢ぁぁ!! 蟲をよこしなさない! 」

野比沢はキョトンとしてわたしを見つめた。

「何を……」

「早くっ! 早く蟲を渡して! それもありったけ!! 」

説明している暇はない!

わたしは野比沢のヒビが入ったメガネの奥を覗き込む。

野比沢が少し怯んだ。

大きく息を吸い込んでから、意を決して野比沢に言葉を叩きつけた。

「死んでいるお母さんより、生きてるわたしを選びなさい!! 野比沢武!!! 」

ハッとした表情。

その瞬間、彼の世界の何かが変わった。

すぐに野比沢は『漆黒の不可解物質』から7、8匹の蟲をつかみ出した。

わたしは野比沢の手でモゾモゾ動いている蟲に弾倉を重ねた。

わたしと野比沢の重ねた手の間から赤紫の煙が立ち上る。煙は紫から漆黒の光の筋に変化する。そして黒い光は束になって弾倉に吸い込まれる。ずっしりとした重みのある弾丸が補充された。

わたしは素早く銃に弾倉をリリースする。銃尻に弾倉が挿入された瞬間、子宮がズンと疼いた。

「んんっ……」

心臓の鼓動が跳ね上がる。指先が痺れる。毛穴から汗が噴き出してくる。

自分でもよく分からない不思議な高揚感……。

わたしは緊張と快感でカタカタと震える銃口を『常世の蟲』に向けた。

成虫の顔は目を閉じたまま、かすかに笑っていた。

わたしは静かに目を閉じる。視界が銃口の先に移り変わる。銃に意識を集中させる。

心臓の音がヤケに近い。アソコが熱い。

視界にロックオンサイトは現れない……。

わたしはガイド表示を諦めてトリガーに指をかける。けれど銃から溢れ出す何かで指先が震えて狙いが定まらない。体の感覚がグチャグチャだ……。

その時、頭の中で声がした。

「うぉん、うぉん(ビッチにしては上出来だ。その弾ならヤツをヤレるぜ! )」

ビーグル犬のなななだった。

どうしてなななの声が聞こえるのかわからない、……けれど、わたしはその声を一瞬、懐かしいと思った。

「うぉん! うぉん! (少しだけ力を貸してやる! 感謝しろよ、ド貧乳ぅぅ! )」

「だから! 貧乳じゃないって……」

言いかけたわたしの視界に靴下の形をしたロックオンサイトが浮かび上がった。

靴下型サイトは蟲の本体を捕らえると、自動的に蟲の下腹部辺りを捉える。そして靴下に足を入れるような図が表示された。

多分、弱点を補足出来た……、のかな?

「うぉん!!(出来たに決まってんだろ! こんな時にぶりっ子してんじゃねえよ、ドブス! いいから早くちゃーじってやつをやれ! )」

「ブスじゃないし! 」

わたしは怒鳴って引き金を絞った。

靴下型サイトがクルクルと回る。銃口に何種類もの黒い光が渦巻いている。

『常世の蟲』はゆっくりと近づいてくる。瞳を閉じたまま、その顔に薄らと笑顔を浮かべたまま。

銃口の黒い光の渦が丸い球になる。

漆黒の球。球の周りに天使の輪のような白い光。さらにその周辺にはプラズマみたいな青い亀裂が走っては消え、走っては消えていた。

「まさか……、過重力弾!? 」

銃口を見つめる野比沢が息を飲んだ。

視界に映る靴下型のロックオンサイトが回転を止めた。

「うぉん!! (今だっ! 撃て、くしちゃん!! )」

わたしはなななの声と共に銃のトリガーを解放した。

「ブゥゥゥゥゥゥゥンンンン」

低い唸りのような音を立てて、黒い塊は緩やかに『常世の蟲』へ向かっていく。

遅そっ……、この弾丸、遅すぎる!

黒い塊は赤ちゃんが転がしたボールみたいにゆっくりと空中を滑っていった。

こんなの絶対、当たらないじゃん!!

そう思ったけれど、蟲は自分の方からヒラヒラと黒い球に近づいてきた。

そして黒球はあっさり蟲に衝突した。

「ギギュィィィィンンン!! 」

閃光で辺りが真っ白になる。

蟲の周りの空間がグニャりと歪む。黒球に触れた蟲の体が焼けたチリみたいに崩れて舞い上がり、黒い塊へと吸い込まれていく。

球の中心に掃除機でもあるみたい……。

「ブゥゥゥゥゥゥゥ……」

黒い球は低い唸り声を上げ続ける。

あっという間に『常世の蟲』は黒い球体に全て吸い込まれて消えた。

けれど、黒い球体は蟲を吸い込んだ後も、そこに止まっていた。

「ブゥゥゥゥゥゥゥ……」

わたしはその黒い球をぼんやり見つめていた。

「早くもう一度、トリガーを引け! 」

野比沢が叫んだ。

「えっ!? 」

わたしは慌てトリガーを引いた。

「シュシュシュッ…… 」

まるで内側に閉じていくように黒い球は消滅した。

今の弾丸……、一体何なんだろう?

わたしは蟲が消滅した空間を見つめる。そこにはもう何も無い。

「うぉん……、うぉん……(やりやがったな、ド貧乳。ブラックホール弾が撃てるガンナータイプなんて滅多にお目にかかれないぜ。お前はホントにすげえよ。俺を倒したんだから、まぁ、それくらい当然だけどさ。ま、まぁ、とにかく、……これで、おまえとはお別れだぜ。あ、あの、……あのさ。今まで……、色々と悪く言ってごめんな。お嬢ちゃんがあんまりかわいいからさ、……つい、噛みついちゃったんだ。ごめんね、くしちゃん。バイバイ……)」

なななの声がフッと消えた。

視界のロックオンサイトはいつもの形に戻っていた。わたしはなんだか心許ない気持ちになる。誰も彼もわたしに謝ってばかり……。

「ななな……」

「お母さん……」

野比沢はバカみたいに口を開けて茫然と『常世の蟲』が消えた空間に呟いた。

その時、小さな鈴の音が響いた。

「リィィン……」

音に呼応するように辺りにチラホラと舞っていた蟲の破片、金色のチリが徐々に一ヶ所へ集まっていく。

やがてチリはひと塊になるとパッと発光した。そしてそこには人間の赤ちゃんくらいはありそうな巨大な芋虫が現れた。

特大の『常世の蟲』だった。

蟲から小さな音がする。

「リィィィン……」

そしてあの甘い匂い……。

わたしはツカツカと歩いていくと、今生まれたばかりの大きな蟲を小脇に抱えた。それから野比沢をチラリと見た。

「……」

野比沢は無言で頷くと『漆黒の不可解物質』からお札のようなモノが貼られたクーラーボックスとベージュのダッフルコートを取り出した。

野比沢のポケットは本当に何でも出てくる魔法のポケットだ。

わたしはダッフルコートを羽織る。野比沢サイズなのでかなり大きめだけれど、剛田を倒した時に浴びた返り血や、変態チックに露出していた胸とお尻をすっかり隠せた。

コレがあるなら……、はじめからコッチを出して欲しかった。

そう思いながら、わたしは屈んでクーラーボックスを受け取り、それに『常世の蟲』を収めた。クーラーボックスはこの大きな蟲を収めるのにちょうどピッタリのサイズだった。

立ち上がったわたしは荒れた神社の境内を見回す。これだけの大破壊があったのに人気は全くない。

野比沢のヒビが入ったメガネをチラリと見た。

彼の『支配者領域』はまだなんとか機能しているみたいだ。

野比沢に対して複雑な感情が湧き上がる。

野比沢を憎むべきなのか、それとも……。

どちらにしてもわたしは蟲の味を知ってしまった。そしてあのお姉ちゃんはもういない。

「……、……」

ため息をついたわたしは考えるのをやめた。

そのまま立ち去ろうとしたけれど……、やっぱり思い直して振り返る。

そして言った。

「……またね、野比沢」

驚いた野比沢の顔。

わたしはその表情に満足して、今度こそ神社を後にした。

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蟲を食べずにいられない いまりょう @ryoryoryo2219

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