最終話 それぞれが歩む道
「えへへ、そうちゃんおはよ」
「……おはよ」
色々なことがあった初夜を終えた翌朝。
あまねは上機嫌なまま朝食を作っていた。
「ね、夏休みは何する? 何する?」
「べ、別に海とかでいいんじゃないか?」
「海でするの?」
「いや、何をだよ」
「ナニを」
「しない!」
「しないの? 昨日のおもちゃはダメだった?」
「……だめ」
ちょっとあちこちがじんじんする。
というのもおもちゃで昨日俺は……おっと、思い出したくもないことだから振り返るのはよそう。
でも、それを除けばあまねとの一夜は夢のようだった。
感じたことのない快感、幸福感。
もう一度あまねを抱きたいと、朝からそんな邪なことを考えてしまう。
でも、それをしてしまうとあまねはまた俺におもちゃを……うーん、どうすればいいのやら。
「いや、そんなことを気にしてたら前に進まないな」
「そうちゃんどうしたの?」
「あまね、今日は休みだろ。何する?」
「えー、それじゃそうちゃんと寝たいなあ」
「寝るだけ、か?」
「したいの?」
「……うん」
「じゃあ、いいよ。えへへ、そうちゃん、今日は私がいっぱいしてあげるから覚悟してね」
「う、うん」
というわけで朝からあまねとベッドイン。
今日は新しいおもちゃを使用されることはなく、あまねは終始ご機嫌なようすで俺に絡んでいた。
絡み合った。
もう、何もかも忘れて交じり合った。
そして時間も忘れて数時間。
昼飯も食べずにそのままベッドの上で一日を過ごした俺たちはようやく体力が尽きて眠りについた。
◇
「……ん?」
「あ、そうちゃんおはよ」
「お、おはようあまね……ん、何してるんだ?」
「えへへ、そうちゃんにいっぱい気持ちよくなってもらうためにお勉強してたの」
起きたらあまねはテレビをつけていた。
で、見ていたのはアダルトな動画だった。
「お、おいそれって」
「えへへ、そうちゃんとどういうことをすればいいのか学んでたの」
「ど、どっから持ってきたんだそれ」
「イリアお姉ちゃん秘蔵のコレクションを借りてきたの」
「……またあの人かよ」
ていうか女の人がAVを持っているものなのか?
いや、見るのが好きな人もいるのかもしれないけど、コレクションだと?
「イリアお姉ちゃんからね、色々と教わってもきたよ」
「聞きたくないけど、何を聞いたんだ?」
「えへへ、やってみる?」
「い、いや別に」
「そうちゃんは私の全部を受け入れてくれるんだよね?」
「……全部っていうか、いや、まあ」
「気持ちよくなりたいよね?」
「……それはそうだけど」
「じゃあやってみよ? 大丈夫、うまくやるから」
「……」
不安が八割。
でも、どこか期待をさせられてしまっている自分がいた。
多分、一度そういうことを経験したせいだ。
気持ちよかった快感が残っているからだ。
だからもっと楽しいことがあるのではないかという、未知の部分への期待感が捨てきれない。
こうやって人は、変態になっていくのかもしれない。
許容できる範囲が広くなって、それがだんだん快感に変わっていって。
イリアさんも、あまねも、そして俺も。
こうして成長していくんだろうか……。
「じゃあ、いくよそうちゃん!」
「ま、待ていきなりは……あー!」
この日はもっとすごかった。
何が、というのは敢えてぼかすけどすごかった。
とにかく、責められるということへの快感がすさまじいのだと学んだ。
自分が、マゾ体質なのだということを知った。
案外、こうして振り返ってみればパンツくれと迫ってくるあまねをなんだかんだ期待していた自分すらいたのかと。
嫌よ嫌よも好きのうち、ってやつだったのかもしれないと。
そう思わせられながら俺は果てた。
多分、こんな日常が続く。
そしてこんな日々を繰り返して俺は、あまね色に染まっていくんだと思いながら。
精魂尽き果てて、眠りについた。
☆
「どうやら順調なようね」
「何がだよイリア」
「いえ、あまねと彼氏君は順調に変態の道を歩んでいるわ」
夕食を食べながらこの俺、志門司は彼女であるイリアの唐突な呟きに反応した。
「お前さあ、人を巻き込むのはやめろよほんと」
「え、布で巻き込んでコスコスされるのが好きなくせによく言うわね」
「あ、あれは別に好きじゃない」
「あまねは言っておくけど私より素質があるわ。私はあくまで変態的な目線でしか物事を見れない人間だけど、実践力においてはあの子の方が上よ」
「なんかすげえほめてるようで全くほめてないなそれ」
「これ以上ない称賛よ。司、早く帰って私たちもしましょ?」
「今日もするの? 元気だなあお前って」
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど」
「そういえば最近チェンソーの悪魔になる主人公が暴れる作品が流行ってるわね。私も悪魔になりたいわ」
「なんだよ急に」
「変態の悪魔で登場させてくれないかしら」
「お前はただ悪魔的な変態だろ」
「変態が変態の悪魔に変態して周りも変態に変態させて周りが変態だらけになったらむしろ変態が変態じゃなくなって変態じゃないやつこそが変態になるっていう話はどうかしら」
「あーもう変態変態言うな! 頭おかしくなるわ」
「あと、昔の作品のリメイクとかも多いわよね。鬼の女の子の話とか」
「ああ、あれは可愛いな。でも、お前が電撃を出せるようになったら鬱陶しいよな」
「私から出るのは愛液だけよ」
「言わんでいい」
「あなたから出るのは汁だけどね」
「汁って言うな」
「私がビキニ姿で現れたらあなたが股間から白いものを出してくたばるという話は面白くないかしら」
「俺がただの変態じゃねえかよ!」
「え、違うの?」
「違うわ!」
「違わないでしょ!」
「なんで急に逆切れ!?」
「失敬、熱くなったわ。あ、熱くなったのは頭の話であって決して」
「聞いてねえわ!」
「さて、そろそろネタも尽きた頃だしおさらばしようかしらね」
「……どうせ明日になったらまたネタ復活するくせに」
「あなたのタネだって翌日になれば復活するでしょ」
「一緒にするな」
「一緒にならない?」
「何の話だ」
「結婚しない?」
「……は?」
「一緒にならない?」
「……急に言うなよ」
「急にイくくせに」
「関係ないだろ」
「で、どうなの?」
「……いいけど」
「いいんだ。変態」
「なんでだ!」
「変態な私が好きだなんて、あなたも立派な変態よ」
「……いいだろ、好きなもんは好きなんだから」
「そう、そういうことよ。誰が何をどう好きになってもそれは人の自由。変態とか言われても、それもその人の趣味趣向ってこと。決して悪いことではないのよ」
「いい風にまとめるな」
「あら、まとまったと思ったのに」
「とにかく、結婚するなら段取りとかをだな」
「司、実はできちゃったの」
「え、それって……まじか?」
「ええ、手を使わずに濡れることについに成功したわ」
「着替えてこい!」
こうして、日が暮れる。
桐島一族の変態的な日常は、これからも続く。
あまねちゃんの彼氏さんがこれから歩く道はいばらの道なんだろうけど。
多分、その茨のとげの痛みすら快感になっていくんだろう。
南無さん。
……こんな終わり方でいいのか?
おしまい
幼い頃に結婚の約束をした可愛い幼馴染が変態だったとしても、昔の約束は有効なの? 天江龍 @daikibarbara1988
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます