第1話:入学式初日
愛知異能学園。
今から約90年前に設立された国際防衛機構…『協会』によって作られた能力者育成機関。日本に無数と存在する学園のその中でも、特に優秀な者のみが入学可能となる狭き門にして、憧れの地。
日本を代表する四つの学園…大阪異能学園・東京異能学園・京都異能学園と肩を並べし一角。それが、この愛知異能学園。
昔のようにただの名前に過ぎず、大した意味を持たなかったのが、今では建造物含め、県名の名を冠すということは、即ち…日本を代表する事と同義となった。県名を冠する学園は今の所この四つだけ。
それだけ、この四つの学園は優秀な者を輩出してきた。
そして、この学園に限ったことでは無いが『未来ある原石を育み、人類の守護者たる人材を磨く』をモットーにしてるそのせいか、完全実力主義を掲げているのが特徴だ。
この四つの学園に共通して言えることだが…基準値に多少及ばなくても、知能が低かろうが、性格に問題があろうが…原石と認定されれば入学可能となる。
ここで言う原石とは、成長性と実力のどちらか或いは両方が優れている者を指す。
しかし、逆を言えば原石と認められなければ入学はできない。たとえ、基準値を大幅に超える頭脳を持とうと…ここでは意味が無い。
文字だけ見れば簡単そうに聞こえるが、実はそうでも無い。
先も言ったように、この四つの学園は日本を代表する能力者育成機関。
その設備、人材共に国内最高峰クラスであり、もし四つの学園のどれかに入学出来ればそれだけで、能力者としての泊が付くとさえ言われているからだ。
そんな学園が簡単だと思うか?そんなわけない。原石としての基準が高く、毎年えげつないほどの不合格者が現れている。
まぁ、とにかく。俺はそんな栄えある愛知異能学園に入学を果たしたのだ。
そして、今。
「…相も変わらず、デケェな」
目の前に聳え立つ、どデカい校舎。門から数百mも離れているというのに、その存在感は間近で見ていると錯覚するほど。
これで、二度目になるが…やっぱり慣れない。来る度に門の所で立ち止まる自信がある。
「…邪魔になるな。行くか」
周囲から刺さる目線から逃れるように、門を潜った。
―――――――――
この学園には、数々のルールが存在する。その中でも、特に目を引くものがある。
それが、能力判定によってクラスが分かれるというもの。S~Eの七段階あって、その判定を元に作られたクラスへと向かう事になる。
しかし、実は試験を受ける前にこれを受けてる為、その時に判明した判定と同じ英数字が記載されてるクラスに行けばいいだけの、楽な仕様だ。
「…にしても、広いな」
校門を潜り、適当な所で入学式開始の五分前まで時間を潰そうと、辺りを見渡すが…敷地内が広すぎて、今がどこか分からなくなった。
やばい、本格的にやばい。入学初日で迷子になるとは…。
「はぁ…考えながら歩くんじゃなかった」
とはいえ、ここで落ち込んでいても仕方ない。スマホの地図アプリ開いて…と思ったけどここは映されてないんだった。マジでどうしようか…と悩んでいたその時。
「────困っているのか?」
獰猛なライオンを彷彿とさせる、力強く野太い声が後ろから響く。時代間違えてないですか?なんて失礼な考えが脳裏を過ぎったが、返事をして振り返った。
振り返った先には…
「あ、あぁ…」
なんていうか、やはり時代背景間違えてるだろ……と叫びたくなる侍のようなイカつい男が居た。
黒髪は後ろで束ねられており、綺麗に整えられている。金が入り交じったような黒い瞳はその容姿と合わさって鋭く、覇気がとんでもなく感じられる。身長は俺よりも大きく…185は確実にあり、偉丈夫がトコトン似合う。そして、その腰に刺されている長刀のドス…。
正に、侍。正に、ヤクザ。目んとこの傷もシマ争いかなんかで負ったの??
俺と同じはずの制服がどうしても、組長と盃を交わす為に着てきたんですか?と思わせるような礼服に見えて仕方ない。
「…そうか。その色…新入生か」
1年、2年、3年とその制服に彩られてる線の色が違う。1年は緑、2年は青、3年は赤と言った具合に光の三原色が使われている。
そして、目の前のサム…ヤク…先輩は赤い線。3年生だ。
「先輩でしたか…」
「いや、気にするな。ここは広いだろう、俺が案内しよう」
何処までだ?と、その見た目によらず優しく問い掛ける。
「はい、講堂へと行こうと思っていたんですが……まだ時間があってどうしようと悩んでいたんです」
俺の言葉を聞いた先輩は、そうだな…と頷いて、何かを考えるように目をつぶった。
……え、なに?
「ふむ。あと、30分…か」
今のはなに?なんで目をつぶったんですか?時間確認したんすか?そんな異能なの貴方?
声に出せば失礼なことも、心の中ならば失礼にならない。心は災いの元とは言わんからな、あまり声に出して言えないこともこうして心ならば簡単に言える。
いや、聞きたいな。聞けないけど…。
「ならば、中庭に行くといい。あそこならば講堂からも近いし、カフェがある。俺が案内するから、着いてこい」
中庭ってなんですか?と思う。なんで中庭にカフェがあるんだ、どうなってんだこの学園は…。
尽きない疑問はあれど、確かにカフェならコーヒーでも飲んで待っとけばいいか…と考えた俺は、
「ありがとうございます」
それだけ言って、先輩の後ろについて行った。
題名、悩んでるんですけどいい案ない? アルましろ @AdidasAdidas222
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