一話シリーズ「アシュラさん」

今年の3月の終わりごろだったかな。

俺はいつもの様に、更新を楽しみにしながら洒落怖まとめサイトを見ていた。

その時、俺の伯父さん(オカルト好き)が家に遊びに来てて、一緒になって「へぇ~こんな面白い話がたくさんあるんだ」と楽しく見ていた。


丁度、投票ランキングを見ていた時。


「ちょっと、とめて」


画面を下にスクロールさせる俺に、伯父さんが言った。


「この、リョウメンスクナっての開いてくれる?」


俺は言われるがまま、カーソルを持って行き、クリックした。


「あぁ、これね。去年ちょっとは話題に上った話で、最後なんかちょっとスレがパロディ化して…」

「ちょっと黙ってて」


いつもは優しい伯父さんが、珍しく険しい表情で言った。

黙って真剣な表情で、リョウメンスクナの話を読んでいる。


10~15分は経っただろうか。伯父さんがようやく口を開いた。


「似てる…」

「えっ、何と??」

「今日は孝明(←俺の親父で伯父さんの弟、一部偽名)と良子さん(←母、偽名っす)は、旅行で帰ってこないんだろ?」

「うん、まぁ」

「じゃあ、酒でも飲んで何かつまみながら話すか。」


あの2人がいたら、『また変な話(オカルト系)ばっかりして』ってうるさいからな」

そう言うと伯父さんは、瓶ビールとチーズを勝手に冷蔵庫を開けて持ってきて、話し始めた。




「俺の実家が神社なのは知ってるだろう?(出雲大社系。西日本で、場所は勘弁して)

それでな、地鎮祭とか時々頼まれるわけじゃない?

その時の俺ん家の(神社の)決まり事としてな、その土地に骨や死体があった場合の、地鎮祭のやり方があるわけね。

他の神社もやってるかどうかは知らないよ?

まぁ詳細は省くけど、とにかく慎重に対処せにゃいかんわけよ。

割と近代の骨や死体なら、まだ良いんだよ。いや、良くはないんだがw、

問題なのは、古すぎる骨とか即身仏の類ね。

遺跡などの多い地域は、古代の骨は結構出るし、即身仏もごくごくたま~に出たりする。

完全な保存状態のはまずないけどね。」




「そこで俺の親父の話なんだけど、終戦からちょっと経ったくらいの頃ね、とある豪商から、『土地を整地してたら変なもんが出てきて、気持ち悪いから来てくれ』って言われたのね。

それで行ってみると、その豪商の家の大きな蔵に通された。

丁度、棺桶サイズの木箱が置いてあって、蓋が開いてたんだって。

『こんなもんが出てきてなぁ。気色悪いったらありゃせん』

豪商の言葉を耳にしながら、親父は木箱の中を覗いたんだ。


『アシュラさんやないか!!』


親父は叫んだらしい。

中に横たわっていたものは、まさしく阿修羅像の様な、干からびたミイラだったらしい。

まず、通常の人間のミイラを思い浮かべて欲しい。

その顔の左右両脇に、別の人間の切断した首2つを縫い付ける。

そして左右の脇腹に、これまた切断された別の人間の右腕2本、左腕2本を縫い付けてある。

そんなおぞましい(造られた)ミイラだったらしいんだ」


「『まだあったんか…こんな腐れ外法が…』

親父は真っ青になりながらも、急いで木箱の蓋を閉めたんだ。

そして、『見世物にしたらどうか?』と言う豪商の提案を激怒しながら一喝し、強欲な豪商がどうしても譲らないと言い張るので、『俺が金払ってでも引き取る』と言い、結局大枚はたいて買い上げたんだ。

そして、『あの腐れ朝鮮人がっ!!』と叫んだらしい」

「??…どう言う事??」




あまりに恐ろしく現実離れした話に聞き入っていた俺は、ようやく質問する事ができた。

もう瓶のビールは、あと4分の1ほどしか残っておらず、俺は代わりを冷蔵庫から持ってきた。


「ん、ありがとう…

そうそう、それでな、さっきのリョウメンスクナって話に、物部天獄って出てきたろ?

時代的にも違う人物とは思うが、親父の生きてた時代に、金成羅って在日朝鮮人がいたらしいんだ。

天魁教ってカルト教団作って、細々と活動してたらしい。

こいつがとんでもないヤツで、『教団の教え』とか偽って信者たちと乱交したり、大金巻き上げたりするわで、まぁ小物っちゃ小物だったらしけどね。

それでも、こいつの先代か先々代の教祖が本物だったらしく、色んな呪法のかけ方とか書いて残してた、経典があったらしい。

その中に、『人工的に即身仏を作り出し、呪いの道具とする』方法みたいのがあって、それがさっきのアシュラさんってわけなんだ。




親父が何でそんなに詳しいかと言うと、親父の妹がこのカルト教に感化されてしまって、連れ戻すのに苦労した時期があったらしいんだ。

それで金成羅ともゴタゴタがあったわけね」


「う~ん、でも、そんな教団も教祖も聞いた事ないよなぁ」

「そうだろう。でも、本当に小さなチンケな教団だったらしいよ。

信者もほとんどが、在日朝鮮人とか中国人だったらしい。

そのくせ、やってる呪法とかが危険な物ばかりだったと。

大体ね、どの宗教や邪教の秘術とか呪いを見てもね、リョウメンスクナやアシュラさんみたいな、生命を冒涜するような呪法・呪物ってのはないんだよね。

悪魔教でさ、赤子とかを捧げるのはあるらしいけど、それは一応太古や中世からの伝統であって、このスクナとかアシュラの類は、完全に個人で勝手に考えた思いつきの様な気がするんだよね。

狂ってると言うか。

逆にそういう素人考えが、凄まじい怨念を発する、危険なものを造り上げたんだろうね」

「うーん…それで、そのアシュラさんはどうなったの?」

「親父もホント頑固で昔気質な所があってさ、アシュラさん引き取った後、『朝鮮近海の海に捨ててやる!!』とか言い出したらしくてさ。

その頃、金成羅は消息不明だったらしく、ほとんど腹いせだよね。

朝鮮半島に持ち込むにしても、検問や入管でそんなミイラ通るわけないし、それで少しでも近くの海に…って。

今思えば、親父もちょっと狂ってたのかもなぁ。

それで、知り合いの漁師に頼んで船出してもらったらしいんだけど、そのアシュラさん積んだ船が、今のK州の西方沖で沈んだらしいんだ。

あぁ、もちろん親父は船には乗ってなかったよ。

それが今から約50年ほど前かなぁ」

「で、分からずじまいと…他にもどこかに、そんなミイラがある可能性ってあるの?」

「分からんねぇ…親父もアシュラさんの件以来、そういう情報には神経を尖らせていたらしかったけど、とうとう新たな、そういう造られたミイラの情報は入ってこなかったらしいよ」


「で、これは完全に俺の推測と言うか妄想に近いかもしれないけど、去年の春ごろ、K州の西方沖で大地震があって、F県を始めK州各地にも被害が出ただろう?」

「あぁあれは怖かったなぁ…CDラックとか滅茶苦茶になって」

「あと最近、K州発の韓国行きの高速船や、K州西方沖を走る高速船に、『クジラのような生物がぶつかる』ってニュースが多いだろう?怪我人も多数出て」

「あったねぇ。あまりにもぶつかる数が多すぎるよね」

「アシュラさんが沈んでるK州西方沖と、何か関係があるのかな…なんてな」

「まさか。ハハハ」

「まさか、ね。

あと日本神話にもさ、天津神、国津神ってのが出てきてさ、天津神が朝鮮半島か中国大陸からやってきた騎馬民族で、国津神が日本列島の先住民。

戦に天津神が勝利して、朝廷が出来た…(あくまでも一説)と言う神話もあるし、7世紀に起きた白村江の戦いや、秀吉の朝鮮出兵、さらに近年に起きた戦争と、日本と朝鮮の怨恨みたいなものは、深くて根強くあるのかもしれないね…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

怖い話シリーズ oreo黒猫丸(=^・・^) @oreokuronekomaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ