第3話 推したちに交際を迫られた
半年後、小生はやっと怪我が治って転校しました。転校の理由ですか? 親の転勤がたまたまあったのと、息子がまたひどい目に遭わないように、と。いい親を持った……小生にはもったいない。
ナンパ師たちは、小生をリンチした後に補導されたそうで、その後どうなったかは知りません。噂ではイズミ様とミオ様の会社が家族含めてまるごと潰したとか。ご愁傷様です。悪事の報いを受けてください。
しかし、もうあのベストカップルを見ることはできないのですね。残念ですが、しょうがありません。また推しを見つけるとしましょう。
本日より、転校先の学校に通うことになっています。田舎寄りの地域のため、地域住民同士の交流が活発で、ご挨拶した際にもとてもやさしく接してもらいました。おそらく学校にいる方々も優しいのでしょう。初めて、小生に友達ができるかもしれません。あれ、雨なんて降っていないのに顔が濡れてきた……。
◆
学校に到着し、職員室で軽く説明を受けた後、教室へと向かいます。さすがに単位が足りなかったため、また二年生からやり直すこととなっております。まあ、推しを護った代償だと思えば、痛くも痒くもございません。
担任の先生の合図とともに、教室へ入る。さて、新たな推し探し、そしてまだ見ぬ友達をつくるため、いざ参る――!
「転校してきました、シュウと申します。よろしくお願いいたし――え?」
「久し振り、シュウ君!」
「元気そうだねー」
な、なぜいるのですかー!
そう、そこにいらっしゃったのは『水分姉妹』のお二方、イズミ様、ミオ様たちだけでした。
「なな、お二人がなぜこの学校に!? というか、学年が違うと思うのですが!?」
「あはは、そこはなんというか、ね」
「二人でいろいろ考えてさ、シュウ君がいる方がうちらとしても都合がいいっていうか」
「はぁ……」
何やら煮え切らない返事。もしやまた何かあったのでしょうか。
「うちのパパがね? そんな素敵な人がいるなら、逃がさないように、って」
「あたしのところも同じ感じでさ。ああ、学年については大丈夫だよ。あたしたちはちゃんと三年生だから。学校に無理言って同じ教室で授業受けることになってるの。あ、シュウ君も一応課題をクリアすれば三年生として認める特例認定してもらえることになってるから!」
「一緒に勉強頑張ろうね!」
「……あの、そこまでしてなぜ小生を?」
疑問符を浮かべると、二人が苦笑いをする。
「えっとね、二人ともシュウ君が好きになっちゃって……」
「だから、三人で付き合おうよ!」
「絶対うちたちの彼氏にするから!」
「あたしともラブラブになるのー!」
な、なんてこったい!
まさか、推しカップルに交際を迫られる日が来るとは……。小生はどうすればよいのでしょう……。
完
同じクラスの百合カップルをナンパから護ったら交際を迫られた件 嬾隗 @genm9610
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