第2話 推しの護衛
先程、小生が思わず声を上げてしまった理由ですが。今日も尊いお二方の後ろを一定の距離を保ちながら下校しているからでございます。え、ストーカーだって? いえいえ、通学路が同じだけですよ。お二方の安全を願っているだけのただの厄介オタクです。もっと駄目? そうなんですか……。やめませんけど。隠れて盗撮している訳でもないのですから。
「でさー、今日さー」
「あはは、うけるー」
はあ、会話しているのを見ているだけで浄化されます。今日の授業で起こった出来事で話に花を咲かせているのでしょう。小生は基本的にお二方を観察することに手一杯で、授業なんて粗末なものは聞いておりません。たまに教師に当てられて問題を解くことはありますが、それ以外はずっと百合観察日記を書いています。実技教科ではさすがに自重しますが。成績など百合の前では些細なことです。
(彼はこんなことを考えていますが成績は学年一位です。教師は彼の言動について目を瞑っています)
◆
もう少しで小生たちが住んでいるアパートに着くか、といった頃。事件は起こってしまったのです。
「お、可愛い子たちはっけーん。ねえねえ、一緒にお茶しない?」
むむ、ナンパ師! 百合に挟まる男は死すべし! というか住宅街でナンパしようとしている奴の気が知れないのですが! ど、どういたしましょう……。
「い、いやです……」
「ミーちゃん、逃げようよ……」
「あっはは、逃がさないよー」
「ひっ!?」
何!? 三人も潜伏者がいたのですか……。グループ犯でしたか。なるほど、住宅街の死角を利用していたのですね。これは逃げられませんぞ……。
「お茶するだけだってば~」
「う、うぅ……」
「あぁ……」
ん、あっちからなら逃げられそう。幸い、小生には気づかれておりません。二人を逃がしたいところですが……。二人の前に姿を現すのは……。いや、背に腹は代えられぬ! いざ参る!
「二人とも! こっち!」
「え、う、うん!」
「わわ、わかった!」
「な、なんだこいつ!」
「追え!」
物分かりのいい二人で良かった。あと、小生のコミュ力も完全には終わってなくて良かった。
「ふー、逃がせた……」
同級生と話したのは久方振りでしたが、うまく逃がせて良かったでござる。こうして、また一つ、百合が守られた――
「おいてめえ、何してくれてんだ?」
「アッ」
二人を逃がして小生は逃げ遅れました。小生の命は守られませんでしたね。積みました。
「はいじゃあこっち来ようねーすぐ終わるからねー」
「ギャー!」
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