同じクラスの百合カップルをナンパから護ったら交際を迫られた件

嬾隗

第1話 小生の推し

「ふおお」


 おっと、声出ちゃった。はあ、尊い。思わずため息が出るほど、今日も推しが尊い。正しくは推しカップル、略して推しカプだ。まさか、男女共学の高校で百合カップルを見守ることができるとは。夢が叶って大興奮でございます。

 あ、小生はシュウと申します、高校生です、ハイ。今まで人と話すのが苦手で友達もほとんどいなくて、SNSを流し読みする中で見つけた、未だ日本では世間一般的ではない百合にどっぷりハマりましたのが中学二年生。そこから三年ほど熟成されて現在高校二年生。それはもう立派な陰キャぼっちに育ちましたよ、ええ。小学校の友達とは小生の親の転勤で中学校に上がる前に離れましたから、新天地でコミュ障が友達を作れる訳もなく、そこから拗れに拗れ、現在の小生が完成しました。大変ですね(他人事)。


 さて、本日も小生が観察しているのは、校内で『水分姉妹』と呼ばれているお二方。イズミ様、ミオ様にございます。どちらもお名前が水に関係していることから、そう呼ばれています。水姉妹だと高貴なお二方には卑猥だということで、水分なんだそうです。だそうです、というのは、名称はクラスメイトが話をしているのを盗み聞きしたので、確証はないためです。小生に友達はおりませんので。

 イズミ様、ミオ様は幼馴染。どちらも中堅企業の社長令嬢だそうで、何事もなければ大学卒業後、それぞれの会社を継ぐとか。こちらも盗み聞きなので確証はありませんけれど。

 

 まあ、そんなことはさておき。お二方の距離感は、まさに百合カップル。どこに行くにも引っ付いておられますし、登校も部活も下校も同じという徹底振り。ええ、これで付き合っていないなんて、おかしいでしょう。え、何故登校と下校が同じことを知っているのかって? それは小生の通学路が同じだからですよ。高校生になった時、一人暮らしをしたいと親戚の経営しているアパートに住み始めたのですが、お二方も同じような考えで同じアパートに住み始めたのです。それで、入居のあいさつの際に顔見知りになった訳です。いえ、恐れ多くて、入居して一年半の間にほとんど話したことはないですが。階層も違いますので。

 そして情報を付け加えると、お二方は隣同士のお部屋を借りていますが、必ず片方の部屋は空いています。というのも、階層違いでも多少はドアの開け閉め音がするのですよ。変態だって? そりゃあ百合を目の前にすれば変態にもなりますよ。ならない方がおかしいと思いますよ? しかし、さすがの小生でも体型を目測する技術はありません。残念です。

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