第10話 新たなる旅
王都に戻ると、勇者は国王に、魔王を討伐した事を伝えた。
国王はとても喜び、勇者に褒美を与えた。
「それと、別件ではありますが、一つ報告があります。」
「うん、なんじゃ?」
上機嫌で、勇者を見ながら国王が聞いた。
「暗黒王城の近くにある村ですが、あの村の村長は、人身売買を行っていると思われます。」
「そうか、では、さっそく調べるとしよう。」
国王はそう言うと、軽く右手を挙げ、近くに居る近衛兵に合図した。
国外れにある小さな街に、馬車に荷物を積み込んだ、一組の夫婦が着いた。
「ここがそうなの?」
女が男を見ながら聞いた。
「ああ、俺の故郷さ。」
男は嬉しそうな顔で、街の入口にある門を見た。
「さあ、入ってくれ。
俺の実家だが、今は誰も住んでないから、のんびりくつろいでくれ。」
「うん、ありがとう。」
女は男に手を引かれながら、中に入った。
部屋が5部屋あるだけの、小さな家だった。
「小さいが、2人で住むには十分だろ。」
「ええ。
でも、しばらくは掃除しないとダメね。」
「ハハハ、そうだな。」
家の居間に入ると、男は暖炉のレンガを1つ外した。
すると、そこには、小さな穴が空いており、小物を入れるスペースがあった。
「じゃあ、その石は、ここに隠すと良い。
キミのお父さんの、大切な形見だからな。」
「うん。」
女は返事をすると、石をそのスペースに入れた。
男は女を抱き寄せると、少し長いキスをした。
「あなた、いろいろ、ありがとう。
でも、まだ何も思い出せないの。」
少し悲しそうな顔で、女が男を見つめながら言った。
「いいさ、思い出せなくても。
どう生きて来たかより、これから、どう生きるかが大切だと思う。」
「そうね。。。
ところで、仕事は見つかりそうなの?」
女が少し悪戯っぽい目で、男を見ながら聞いた。
「それなら大丈夫だ。
ここのギルドには、俺の友人が居るから、しばらくはクエストで金を稼ぐさ。」
そう言うと、男は腰に提げている剣を軽く叩いた。
魔王討伐 @KumaTarro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます