ディープな京都マニアには一家言ある

旅行マニアに船好き鉄道好きある様に、食通に名店好き隠れ屋好きある様に、京都好きにも、京都の楽しみ方の流儀がある。
著者の朝吹さんの流儀は、寺社の庭探訪。
京都に住んでいた時期もある著者の頭の中には、京都の地図が入っている。
千年の古都・京都の名刹古刹が、「この道をこう行って、それからああ行って」と、迷いなく案内できてしまう。

そんな朝吹さんの楽しみ方は、朝早く、旅行客が湧き出す前に自転車で巡って、静かな庭を楽しむというもの。
その道には、その道の、嗜好を同じくする人たちがいる。
そうした人たちとぶつかっても、互いに場所を譲り合い、邪魔にならないように立ち回り、気を散らさぬように静かに歩き、見事な連携プレーを展開して、心ゆくまで楽しむ、そんな術も心得ている。

そういうディープな京都マニアの、隠し技エッセイ。

文芸の楽しみは、文章の楽しみです。
ワクワクドキドキのストーリー小説も良いけれど、物語などなく、ただ日常や情景を美しく描き出したエッセイの楽しさは、文芸ならでは。
京都を愛でる今言う「推し活」女性の、清々しい短編エッセイです。