第31話 刺激的な日常
「そろそろ帰ろうかな。ちょっと冷えてきたかも」
「山から聞こえた露出狂の声。その翌日に風邪で休む
「背景くんはその共犯者として二人で刑務所に入るのでした」
「勝手に俺を巻き込むストーリーにしないで」
「えー? 共犯者になってくれるって言ったのに」
背中越しに会話しながら衣擦れの音がする。脱ぐのではなく服をまとっていく。体を重ねたあとみたいな雰囲気ってこんな感じなのかなと考えたら冷たい風に当たっているのに全身が火照る。
バリバリバリバリ!!!!
「え? なに? ヘリコプター!?」
遠くの方から高速で羽が回転する音がする。その音は徐々に近付いているが、その姿を確認することはできない。
「木もいっぱい生えてるから平気だよね?」
「いや、ここは特別見晴らしが良い! ちょうどこの上を通過されたら……」
NPC子ちゃんが今どれくらい制服を着れているのか確認したい。だけどもし裸同然だったりしたら気まず過ぎる。もう安心して良いのか、それとも教室で露出した時みたいに何か行動を起こした方が良いのか、その判断すらできない。
「もう服は着れた!?」
「ぜ、全然。どうしよう。手が震えて……ああっ!」
「うわぁ!」
頭上をヘリが通過する。こんな低飛行で大丈夫なのか心配になるレベルで機体が近くに見えた。それは同時にものすごい風圧に晒されることを意味する。
「風ヤバッ!」
「それよりも……っ!」
ヘリの羽音とエンジン音が大きすぎてそれ以外の音が全て消える。
バリバリバリバリ……!!
反射的に
「
茫然と立ち尽くすNPC子ちゃんはブラウスを羽織っただけでブラをしていない。ギリギリのところで乳首は隠れているものの、おっぱいはほぼ丸出しだ。あまり大きな山じゃないからブラウスで隠れているが、初めて正面から見る生のおっぱいは他の部位とは明らかに違う張りと柔らかさを持っていることが伝わってくる。
「あはは。ブラ、飛ばされちゃった」
「え……っていうか、そうだとしてもボタンは閉めれるでしょ!」
NPC子ちゃんは俺におっぱいを見られているのを一切気にしない様子ではにかんだ。俺にオカズを提供するために脱いで、撮影まで許可してくれてるんだからガン見しても良いはずなのに、反射的に不利向いてしまう。
ここぞという時に小心者だから俺は背景なんだ。NPC子ちゃんが露出を止められないように、俺の背景としての性質もそう簡単には変えられない。
「もうボタンは閉じた?」
まずおっぱいに目が行ったのでちゃんと確認しなかったけどスカートも履いていなかったはずだ。ぴったりと股を閉じていて、数十秒前の記憶を鮮明に思い出してみてもその股間に黒いものは見当たらなかった。
NPC子ちゃんってやっぱり……。
せっかくなら無修正の大事な部分をこの目に焼き付けておけば良かった。こういうチャンスをものにできないのも情けない。
「ブラは遠くに飛んでいったの?」
「うん。風に乗ってあっという間に見えなくなっちゃった。あ、名前は書いてないから私のだってバレないよ」
「洗濯物はどうするのさ。ブラだけなくなるなんて普通ありえないでしょ?」
「新しいのを洗濯機に入れるよ。上下バラバラなんてよくあることだし」
「そうなんだ」
女子の下着事情はよく知らないけど、上下で色や柄が違うのはよくあることらしい。NPC子ちゃんに関しては下を履いてないからバラバラという概念とはちょっと違う気もする。
「はあ、露出狂の噂が出ないといいけど」
「次の日とは限らないもんね。しばらくはホームルームがドキドキだ」
人生のピンチにも関わらずNPC子ちゃんはいつもと同じようにニコニコと笑っている。
「全然楽しくない」
口ではそう言ったものの、内心では刺激的な日常に心躍っていた。背景に溶け込む地味な高校生。周りからそう見られても一向に構わない。俺は、誰よりも刺激的なクラスメイトが居ることを知っている。
NPCと背景。主人公からすれば地味で他愛もない存在だけど、世界を作り出すのに必要不可欠なもの。
世界を刺激的でおもしろくしているのは、自分達なんだ。
「ところで背景くん、私はもう制服を着たでしょうか?」
「……そういう質問するってことは、まだなんでしょ?」
「どうでしょう。キミ自身の目で確かめよう」
「ゲームと同時に発売する攻略本みたいだ」
「背景くんが確認するまで私は帰れないよ? 露出狂が放置されてたら簡単に捕まっちゃうね」
「それ、俺のせいなの?」
「だって背景くんは共犯者だもん」
考えたって答えは出ない。俺にできることは振り返ってNPC子ちゃんの姿を見るだけ。
期待と不安を胸に後ろを見るとそこには……!
NPC子ちゃんと背景くん くにすらのに @knsrnn
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。