主人公の佑は、妻を失い傷心でいるところ、そりが合わなくなっていた息子まで飛び出してしまい……。追いかけたその先は、異世界だったという導入からスタート。
そこで助けてくれた魔女リディアと共に、旅の準備を整えながら妻の事を話し、息子の事を話し。そしてこの世界にいた頃の彼女を知って行く、という内容です。
主人公自体が、妻となった彼女の事をよくわかっておらず、知らなくても愛せていた状態だったからというのもあって、彼女が何者だったのか、この世界がどういうものなのか、佑と一緒に読者も知りながら旅をする形に。息子を探しながら、道中で語られるそれぞれの情報を編み上げていくと、彼女の真実が見えて来るという。
少しキナ臭い世界情勢に、彼らはどうするのか。彼女が亡くなった本当の理由など、色々と気になる要素も。
読者も佑と共に、世界を巡る。派手なアクションがあるような大冒険ではありませんが、優しい人たちの優しさゆえの行動の結果を見守りたくなる、そんなお話です。
家族愛。
あまりにも身近な存在である家族。
いて当たり前と感じてしまう肉親。
ある日突然、それを失った主人公。
自殺によって妻を。
仲違いによって息子を。
異世界へと降り立ってしまった主人公が、
喪った妻を知り、失った息子を探す物語。
等身大な現代の家族の姿が見える、そんな作品であると感じました。
異世界へ行くと若返ったり現実世界の事をすっぱりと忘れる作品もありますが、
この作品の主人公は何の変哲もない一人の夫であり、一人の父親です。
まだ2章3話(で数え方良いのかな?)の時点でのレビューですが、主人公が優しい人物であるのがよく分かり、それ故に家族がバラバラになってしまった物語の状況に心がキュッとなります。佑さん、どうか幸せになってくれ...!