第5話 夢の中でも


そして、康司は少しずつ声を大きくしていった。


『今日、大谷田児童館キャラバン隊が、大谷田幼稚園を訪れて、

紙芝居のあとに、きみいろ図書館の話をするって!』


『え~っ』


『ひゃーっ』


子供たちが歓声をあげた。


『そしてね、僕の本の中にはこうも書かれていたんだ』


康司は、子供たちの座っている目の前で急に両手を広げて大声で言った。


『きみたちみんなは、お誕生の午後5時5分にじゅもんをとなえて、

きみいろ図書館にいくことになるんだって』


子供たちは、きゃっきゃ、きゃっきゃと大はしゃぎだった。


あとは最後に、みんなであのじゅもんの練習するだけだった。


『いち、に、さん、し、ご、きみいろとしょかんへのトンネルひらけ!』


子供たちは、のりのりで練習してくれるだろう。



君はこのお話を信じるかい?

もし信じるなら一緒に練習してみよう、きみいろ図書館へ行く方法を。


最後にいいことを教えてあげるね。


『実は、この世に生まれた全ての子供たちは、

5歳の誕生日にきみいろ図書館へ行っているんだ。

そして、自分が望む物語を選んで帰ってくる』


はしゃいでいた子供たちがだんだんと静かになっていく。


子供たち皆が康司の顔を何となく見上げている。

康司は、目の前の子供たちに、真実を話す時が来たことを理解した。

何か宇宙のような広大な力がその時間を創ってくれるのだろう。


じゅもんをとなえて、意識的にきみいろ図書館へ行く子供は少数だけど、

これを聞いたら皆が無意識に夢の中で、きみいろ図書館へ訪れることになる。


康司は子供たち皆をゆっくり見回すと、一つ大きな深呼吸をして、話し始めた。


自分が選んだ1冊の本。その物語の内容は、思いがけなかった。

きみいろ図書館へ行く4歳の子供たちの案内人であり、お世話係だった。


『さあ、みんな。このじゅもんを一緒に練習しよう。

いち、に、さん、し、ご! 5歳の誕生日に、

夢の中でも、きみいろ図書館の扉よ開け!』



〈完〉

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

きみいろ図書館 夢ノ命 @yumenoto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ