第4話 持ち帰った本から始まる物語


そんな僕の物語は、千一話あって、

どの本の最後にも書かれていたことがあるんだ。


それは……


【どれか好きな本をいっさつだけ、もちかえろう!】


だった。


僕は、いろんな本の中から一番面白そうな本を手にした。


『これにする!』


気づいたら、僕はあの絨毯に描かれていた絵とそっくりの大きな虹を

びゅんと滑っていたんだ。


滑りきったら、勢いよく宙に放り出され、小舟の上に落っこちた。

大きな波しぶきが上がり僕がのっていた小舟は、波にのってぐんぐん水上を流れて行った。そうしているうちに、真っ赤な太陽が東の海へ沈んでいく光景が広がった。

どこもかしこも赤く染まり、僕はきれいだなぁと太陽を見ていると、いつの間にか体が軽くなり、宙に浮いていたんだ。


なんと、僕の背中には羽根がついていて、僕は飛んでいた。

そして、ゆっくり、太陽の中に引き込まれたんだ。

やがて、ぐんと引っ張られて、太陽の中にトンネルが開いて、中を飛びながら進んて行った。


そして、気がついたら、家のトイレの中で、便器に腰をおろしていたんだ。

あの手に持っていた本は、消えていた。


僕は、トイレから出ると、廊下をあるいて、静かにリビングに戻った。


『あらぁ、長いトイレだったわね。ちゃんとでたの?』


と、ママに言われたので、うなずいた。


ここまでは、あの不思議な部屋で、

最後に選んだ本の始まりの部分にそっくりだった。


僕は、本の中で、また絵本を読みはじめて……そしてすぐ、5時50分にパパが帰ってくるはずだ。


『ただいま!』


ほら、パパの声だ。


もう僕が選んだ本の物語は始まっているんだ。

僕は次に自分が何をすべきか、分かっていた。

本を置いて立ち上がると、僕は玄関へかけて行って、パパの胸に飛び込んだ。


『おかえりなさい!』




君はこの話を信じるかな。


『信じる子は手をあげて! 』


目の前で、座って聞いていた子供たちの半分が手をあげた。


『じゃあ、信じられないな、うそだよって思う子はいるかな?』


康司が、子供たちの前で手をあげると、


『は~い』


残りの半分の子達も手を上げた。



じゃあ、いいことを教えてあげるね。


『実はね~』


康司は声をひそめていった。


『僕が不思議な部屋で選んだ本の中には、今日のことが書かれていたんだ』



〈続く〉

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る