フローレンス

 全てを語り終えると弟子のユーリは泣きそうな顔で私を見つめ「俺のこと、嫌いになりましたか?」と首を傾げた。

 可愛いユーリ。

 私がお前を嫌いになるはずないのに、そんな顔をして。

「君が私を閉じ込めたかった、としても。結果としてそれは私を守ることになっただろう。つまり、私は君に感謝しても嫌う理由がないよ」

 そっと抱き締めてあげると、ユーリは安心したのか子供のように私の腕の中で泣いた。

 彼女の頭を撫でながら、囁く。

「ユーリ、私も君のことを愛しているよ。…二人でずっと、一緒にいよう」

 よっぽど嬉しかったのだろう。

 一瞬泣き止んで私の顔を見上げると、こくこくと頷いて今度は嬉し泣きをしてしまった。


 ◇◆◇◆


 暫くして、落ち着いたユーリは私を見上げて笑った。

「……そういえば、言うのは恥ずかしくて今まで黙ってたんですけど。フローレンス先輩の髪ってさらさらで、とても綺麗な銀髪ですよね。俺、若干クセっ毛で…羨ましいです」

「自分の髪は嫌いかい?」

「うーん、あまり好きではないですね」

「そう、私は好きだよ。君のそのふわふわした髪」

「え、と……ありがとうございます」

 照れるユーリに微笑みかけると、シャワーを浴びてくると告げて私はテップを肩に乗せ、研究室をあとにした。


「テップ」

 肩に乗っているソレに、声を掛ける。

 するとソレは私の声に反応するように触覚らしき目を向けてきた。

「お前の主人は本当に可愛く、素晴らしい才能を持っている。そして何より、純粋な狂気を兼ね備えている。私は彼女ほどの“魔女”を見たことがないよ」

 同意するように目を揺らすソレの頭を指先で撫でてやると、続けた。

「最初は彼女が“魔女”に育ったら、城で首を手折るつもりだったけれど。私は彼女を気に入った」

「このまま、神をも凌駕する“魔女”に育てていこうと思う」



 ────そう呟くと、白衣を纏った“白銀の魔女”は口元に弧を描いた。

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本の虫研究室 霧谷 朱薇 @night_dey_

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