第4話

 霧が引いてきたように見えたその時。


 琴葉が立っていたのは、いつもの帰り道だった。


 あの空の夕焼けもいつも通りだった。


 …どうやら、あの異世界…ホワイトワールドで過ごした時間は、現実世界に反映されないようだ。


 琴葉は、しばらく目の前の景色を見つめていた。


 そして、真っすぐ歩き出した。


 …ホワイトワールドのことは、夢だとは思わなかった。




 ガチャ…


「ただいまー」


 玄関の扉を開けた。


「おかえりー」


 母の声がキッチンの方から聞こえてくる。


「今日の学校はどうだったー?」


「うーん…いつも通り」


 琴葉の言う「いつも通り」は、どちらかと言えばネガティブな意味だった。


 理紗がいないから、つまらない…と言うような。


「そっか」


 キッチンの方に行くと、母の優しく微笑んだ表情がチラッと見えた。


「今日も…理紗は来なかったよ…」


 琴葉は少し寂しそうな顔をした。


「そう…。理紗ちゃん、元気かな…」


 母も心配そうな様子を見せる。


「…勉強してくるね」


 琴葉は階段をゆっくり上っていった。




 勉強を終えた琴葉は、鉛筆を紙の上に滑らせた。


 何度も何度も、優しいタッチで曲線を描く。


 そこに書き上げられたのは、あの白い少女だった。


「ホワイトワールドって何なんだろう…?」


 琴葉は机に突っ伏した。

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White world 夜桜モナカ @mokanagi-b21

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