第2話 大黒天
本殿の前に到着すると
「おん まか きゃらや そわか」
印を結び真言を言葉にすると、辺りが無色透明になったような感覚に陥り、空気が澄んで身体が軽く感じる一瞬がある。
軽く目を閉じて、ゆっくり瞼を開く。
パッと目の前に浮かんで現れたその神様は、楽立膝の姿で現れた。
『おせーんだよ。すぐ連れて来いっていっただろ』
この神様は
神名:
印名:大黒天神印
能力:怨敵の調伏、商売繁盛、除災招福などを
「大黒天様!申し訳ございません!!こやつ、素直に赴こうとせずー」
「俺だってヒマじゃないだけどー、大黒さん」
龍樹はカバンを砂利の上にドサッと置き、ズボンのポケットに手を突っ込んだ。
最初に神様と話せたとき、まぁ交信?いや
大黒天といえば、にこやかな表情に、ふくよかな体型。
福耳に、手頃な手に収まるような打出の小槌。そんなイメージだった。
しかし、俺の前に姿を現した大黒さんは、スラっとした筋肉質の男で、まぁ、福耳に打出の小槌と傍に白い袋もあるから間違ってはいかいのかと頭が混乱した。
今では、このキラキラと光るイケメン神を『大黒さん』と呼んでいる。
大黒天はいつものように少し、気だるそうに楽立膝でぷかぷか浮かびながら近寄ってきた。
「まぁ我の話を聞け、龍樹よ。」
そっと、大黒天は龍樹の額に手をかざす。
頭の中に映像が流れ出した。
ー同じ学校…いや、高等部の制服姿の女子ー
大黒天の受け取る映像を目を瞑りながら確認する。
「…何か、大黒さんの本殿に一生懸命祈って…る?」
「理解できたか?今回、龍樹に頼みたいこと」
大黒天の手が目の前からなくなり、今度はずいっと顔が近づいてきた。
少し引き攣った顔をしながら龍樹は、距離を取る。
「いや、わかんないよ!わかるわけないだろー!!お祈りされてるのは大黒さんでしょ?仕事しろよー」
珍しく大黒天が、ふむ。と顎に手を置き、眉間に皺寄せた。
「そうなんだが、その
「黒いもや?」
見えなかったか?と問われ、確かにぼやっと見えたようなと思い出してみる。
「この者、何やらよからぬモノに憑かれておる。気になる願いもしてくる毎日でな。」
少し困った様子で大黒天は、話を続けた。
「龍樹には、あの者に憑いてるモノを探り、我に協力して欲しいのだ」
でた。面倒臭いことは丸投げ。
顔を歪める龍樹を見て、苦笑いをする大黒天。
「そう嫌そうな顔を見せるな。
その言葉に、今度は
「嫌ですっ!大黒天様のお傍を離れるなどっ!」
「龍樹、指示は
そのまま、パッあたりは暗くなってしまった。
「大黒天様ぁー!!」
「あんまりよ…」
「それは、俺の気持ちだ…。」
龍樹は、眉間を押さえて首を振った。
もう、この状況にもだうぶ慣れてきている自分自身には、笑うことしかできなくなっていた。
八神くんの悩みごと 志穂 @leo8
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