大体千文字で書く逢いたかった著作

秋月蓮華

大体千文字で書く逢いたかった著作

【大体千文字で書く逢いたかった著作】


純喫茶にてレコードがクラシック音楽を奏でている。

僕は簿記の勉強をしていた。傍らには珈琲だ。簿記検定三級が欲しいので日々、この喫茶店で勉強をしている。

問題集を解いていると僕の座っている席の前に二人、女子高生が向かい合って座った。

(お嬢様学校の……)

その制服を知っている。キリスト系のお嬢様学校の制服だ。女子高である。

彼女たちはケーキセットを頼んで、飲み物は紅茶だ。この喫茶店は紅茶の葉の名前がちゃんと書いてある。

店によっては紅茶、だけで終わるところがあった。明日も僕はここで勉強をする予定だから、

その時は紅茶でも頼もうかと考えた。

「朗読会、楽しかった。誘ってくれて嬉しい」

「良かった。あの図書館。たまにやってくれるんだ」

図書館、近くにある大きめの図書館だろうかとなる。各イベントをやっていた。

どちらもお嬢様といった様子の二人は店長が持ってきた水を飲みつつ話している。僕は問題集を解きながら聞いた。

「気になっていた話で、学校でよく聞いている話を派生させたものだから」

「確かにあれは毎日と言っていいほど聞くよね。寝てるけど」

「眠いのは分かるかな」

「でも凄い。あんな風に出来るなんて。愛憎劇……絶対に学校じゃ聞けないから」

何の朗読をしていたのだろうかとなる。学校じゃ聞けない話と言うと何なのか。

店長が珈琲とケーキセットを彼女たちに持ってきた。僕も珈琲のお代わりを頼む。ここは珈琲のお代わりが安いし珈琲が美味しい。紅茶もちなみに好きだ。カフェインが大好きと言えばそうなる。

「学校は堅苦しい話ばっかりだって。パンが増えたとか目が見えるようになったとか」

堅苦しい話ってそれは聖書の話ではないだろうかとなる。一部分を取ればそんな話ではあるが、神の奇跡を

伝えている話なのだ。神の奇跡、端的に言うとなんだこれになる。

「感謝してる。前に聞いたことがあって、引っかかっていたから」

「文字を読むより音で聞いたほうがわかるよね」

「それはあるかも」

認識はヒトによって違う。文字がいいとか、絵がいいとか、動画がいいとかはその人次第だ。

朗読は上手い人はとても上手い。

「再会できて、幸せ」

「喜んでくれて何より」

お互いに笑顔を浮かべている。幸せそうだなと感じていた。

お嬢様の誘われたほうは、紅茶をゆっくりと飲み干した。

「凄くよかった。――太宰治の『駆け込み訴え』新しい扉が開いた気がする」

僕は飲んでいた水を吹きかけたが堪えた。

それか。

それと出会ってしまったのか……。出会いたかったのか……。

店長が珈琲を持ってきた。僕はお代わりを受け取り、何食わぬ顔で勉強を続けた。

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大体千文字で書く逢いたかった著作 秋月蓮華 @akirenge

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