第13話 カラスを待たず
ドンっ大きな音がして、身体に衝撃が走る。目を開けると、逆さまになった僕の部屋。黄土色に透けたカーテンがふわふわ揺れて、隙間から青く明るい空が覗いていた。
「寝相わるっ」
澄んだ声に振り向くと、扉のところに妹がランドセルを背負って突っ立っていた。
「朝だよ。あたしはひとりで起きたってのにいつまで寝てんの?」
……。まだ頭がハッキリしなくて、モゾモゾと身体を起こす。床が硬くて冷たい。でも、何だか長い夢を見たような満足感が胸の奥にあった。どんな夢を見たのかはちっとも覚えていないけど。
「愛の色を教えて」
ふいに窓の外から声が聴こえた。聞き覚えのある妙にかすれた声だった。
「ハァー、もう最悪」
妹はそういうと、踵を返して「白」とつぶやいた。
「……え?」
「だから、あたしのは白だって言ってんの」
扉がバタンっと乱暴に閉められる。
「パンツじゃないからね!愛の色の話だから!」
わけが分からず、床に座り込んでぼんやりしていると、窓の外で乾いた声が笑った。腹が立って窓を開けると、パチンと軽い音が辺りに響いて、甘い香りが朝の空気とともに流れ込む。何だか妙に懐かしい。妹と同じ名前の花の香り。結局、何も分からない。けど、ただ一言言葉がこぼれた。
「ありがとう」
昇りつつある太陽が青い世界を白く照らしていた。
白の境に舞う金烏。 おくとりょう @n8osoeuta
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