第2章

1.幼馴染からの電話。








 それは、あまりにも唐突なことで。



「ん、この番号って……」



 ボクのスマホに、ずいぶんと懐かしく思える番号から連絡があった。表示されている名前は、中学の最後まで同じクラスだった女の子のそれ。家も同じ学区内にあるので、いわゆるところの幼馴染、という存在だった。

 高校に進学して以降は連絡をしていなかったけど、急にどうしたのだろう。

 そう思いつつ、ボクはスマホをタップした。



「もしもし、アヤ? 急にどうしたの」

「あ、久しぶり~! 元気してた?」



 するとスマホの向こうから聞こえてきたのは、どこかのんびりとした女の子、赤酒アヤの声。彼女はどことなく嬉しそうな声色でそう訊いてきたので、ボクは最近の自分を思い返しながらこう答えた。



「ん、ん~……元気といえば、元気だけど……」



 元気いっぱい、というわけではない。

 学校には結局行っていないし、かといって病気というわけでもない。それに加えて、アイドルの影武者をやっているんだから、説明に難しかった。そんな曖昧な返答をアヤはどう思ったのだろうか。

 彼女はしばし首を傾げたような間を開けて、こう続けて訊いてきた。



「ねぇ、ミコトくん。もしかしてだけど――」



 何の気なし。

 本当に、世間話をするような声のトーンで。



「最近、旅行に行かなかった?」――と。




 ヒヤリ、とした。

 いったいアヤはなにを言っているのだろうか。

 そう思ったが、しかし偶然ということもあるだろう。ボクが地方の祭りに参加していたなんて、父さん以外の誰にも伝えていないのだから。

 そんなボクの動揺が伝わったのかどうか、定かではなかったが、アヤは「うーん」と唸ったのちにこう言った。



「えっとね……いま、動画送るね?」

「動画……?」



 そして、こちらに『とある動画』へのリンクを送ってきた。

 そこには『美少女すぎる新人アイドル』という題名で、見覚えしかない光景が映し出されている。再生してみると、それは先日の祭りのステージの様子だった。

 ちなみに、コメント欄には気恥ずかしい内容ばかりが躍っていて……。



「こ、この動画がどうしたの?」

「あのね! いま、学校ではこの動画の女の子の話題で持ちきりなの!! こんな可愛い子がいていいのか!? ――ってね」

「そ、そっちの学校はそうなんだ……」

「え、いま全国的にだと思うよ? だってこの動画、テレビでも取り上げられてるし。ミコトくんの学校って、男子校だよね?」

「うん、あー……」

「だったら、なおのこと話題じゃないのかな、って!」



 そう、無邪気に言うアヤ。

 なるほど、どうやら彼女が電話をかけてきた理由はそれか。しかしそうなると、先ほどの質問は何だったのだろう。

 そう考えていると、まるで見計らったかのように。

 アヤは一つだけ間を置いてから、言った。



「それにしても、さ。この女の子、って――」








 核心に迫る、一言を。









「ミコトくんに、そっくりだよね?」――と。






 

――――

(*‘ω‘ *)さて、更新するぞー




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女みたいな顔だからと男子校でいじめられ、引きこもっていた少年は国民的美少女となる。 あざね @sennami0406

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