11.波乱の先に。
「…………アンタ、やっぱり才能あるわよ」
「え……?」
帰りの新幹線で。
隣に座るミライはふと、ボクにそう言った。
才能がある、というのはどういう意味だろう。そのことを訊ねようとすると、しかし彼女は少々慌てた様子でこう仕切り直すのだった。
「いいえ、やっぱり何でもない。それよりも、アタシがライブを拒否した理由、知りたいでしょ?」
そして、ある秘密を教えてくれる。
「アンタも女だし、分かるかもしれないけど。アタシの『あれ』は他人よりかなり重くて、痛み止めがないと立っていられなくなるの」
「……『あれ』?」
だけど、ボクには彼女の言う『あれ』が分からなかった。
首を傾げていると、ミライは一気に顔を赤らめて怒り始める。その上で、ボクにしか聞こえない声量で告げるのだった。
「『あれ』ってのは『生理』よ! 察しなさいよ、バカ!!」――と。
……ヤバい、かなり気まずい。
ボクは思わぬ告白に、苦笑いを浮かべるしかできなかった。
そうしていると、ミライは小さく鼻を鳴らす。そして、少しだけ沈んだ声色でこう続けるのだった。
「だから、アタシにはアンタが必要なの……」
「……ミライ?」
カーテンを閉めた窓の方を見る少女の表情は、窺い知れない。
それでも、笑顔でないことは明らかだ。
「ミコト、アンタにはアタシの手伝いをしてほしいの。――アイドルとして、この芸能界で一番の場所へたどり着くために」
そんなミライの言葉には、覚悟がにじんでいるように思えた。
彼女の夢や目標はあまりにも大きい。それでも、だからこその決意があって、熱い気持ちが感じられるのだ。だったら、ボクは――。
「……うん。もちろん、そのためにボクはいるんだから」
――自分にできることで、彼女の支えになろう。
そう感じて、そっぽを向いたままの少女に頷き返すのだった。
◆
――一方その頃。
一人の少女が、SNSを確認していた。
そこに映し出されているのは今日、地方で開催された祭りでライブを行う『瀬戸ミライ』の姿。短い動画ながら鮮明な映像は、すでに大きな反響を呼んでいた。
返信欄や引用欄には、どれも肯定的な意見が並んでいる。
『うわ、なにこの子かわいい!』
『美少女すぎる件について』
『守りたい、この笑顔』
その中には『国民的美少女』だ、と述べる者もいた。
それほどまでにミコトのライブは人々を魅了し、熱狂を得ている。だが、それを見つめる高校生と思しき女の子の眼差しには、違う色が宿っていた。
そして、小さくこう口にするのだ。
「これ、もしかして……ミコトくん?」――と。
色素の薄い色の髪をした彼女は、首を傾げていた。
確証はないし、あり得ないはずの直感。だけど、
「……うん、間違いない。これ、ミコトくんだ」
その少女はまるで、確定事項であるかのようにそう言うのだった。
一つの波乱を乗り越えた先。
しかし、そこには新たな波乱が待ち受けていた……。
――――
この少女はいったい……!?
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