戦時下の貴方と私

叶 海帆

第1話

1941年12月4日 6時

朝が来た。


まだ朝日が昇りきっていなく寒く、少し薄暗い朝だった。

ご飯の炊けた匂いがする。私はこのご飯の匂いを嗅いで下へと降りた。

朝ご飯は白米、味噌汁、胡瓜の浅漬け。

普通のご飯。もっと豪華なものが食べたいと思うが文句は言えない。ただ、ご飯があるだけ幸せと思う。

私は朝ご飯を食べ終わり学校へ向かう支度をする。服を着て髪を整える。そして7時20分、

私は家を出た。

私の家から学校までは40分ほどあり、

徒歩で向かっている。家の周りには交通機関はあるが、使うことが許されない。

朝は嫌いだ。こうやって朝から何分も何分も寒い中歩き、学校へと向かわないと行けない。それが憂鬱でしかたなかった。私は重い足取りで学校へと向かった。

「千恵ちゃんおはよ!!!」

「あっ、おはよ。」

この子は奈乃ちゃん。だったかな。

私は学校で表面上笑って仲良くしているように見える。

だが本当は名前も正確には覚えられていない。

この子は明るくて誰にでも優しく、クラスのムードメーカーだ。

私とは真逆の性格なのにここまで仲良くしてくれる。こんな奇跡が起きていいのか。

私は席について教科書と筆記用具を出した。

そこから私は1人で色々な事を考え始める。色々な事とは将来の事、今やるべき事など。

もう1人で色々なことを考えて想像しているためもうネタは尽きた。こういう時1人は不利なのだ。嗚呼あの子が羨ましい。

こう考えている今あの子は友達と話している。何の話だろう。好きな人の話だろうか。昨日見たテレビの話だろうか。なんの話であろうと私には関係ない。

私は机に伏せて寝たフリをした。


1時間目が始まった。1時間目は国語。

楽しくはない。ただ読んで書いて覚える。それだけだ。_


こうして歴史、英作、算術、地理、英訳を終えた。

やっと帰れる。だがここからまた40分1人で家まで歩く。私はこの時間が大っ嫌いだ。ただの街並み、何も綺麗な景色は無い。

入学当日は新しい通学路、街並みに心を弾ませていたが今ではそんな気持ちは一切ない。

見飽きた街並み、歩き飽きた通学路。

入学初日の私が見たらどう思うことか。

空は曇りで寒く、歩いても歩いても暖かくなることは無い。今の気温は何度なのだろうか。

私は大通りを抜け、小さい細道に入った。

車は通れない。歩いている人しか通れないぐらい細くて草が生い茂っていて虫も沢山いる。この道は嫌いだがこの道が一番の近道なのだ。じっと耐えよう。もうこの先は家だ。

私は草の生い茂った細い道を抜けようやく家に着いた。

先に手を洗ってから、椅子に座った瞬間溜息と同時に疲れがどっと出た。

流石に学校終わりに40分歩き続けるのは何年経っても辛い。

いきなり睡魔が私を襲い意識が朦朧とする。

私は少しふらつきながらも自分の部屋に行き眠りについた。


「千恵、ご飯よ」

この声で目が覚めた。

もう晩御飯の時間かと思い時計を見ると19時だった。16時40分に帰ってきたので、ざっくり2時間20分は寝たのだろう。

少し疲れが取れて体が軽くなった気がした。

「千恵、ご飯冷めちゃうよ。」

「今行く。」

そう言って私は晩御飯を食べに下に降りた。

晩御飯は白米、味噌汁、鮭。

いつも通りの献立だ。

少し飽きてきた気もするが朝ご飯の時と同様、文句は言えない。私は箸を取り、こう言う。

「いただきます。」

慣れた味だ。暖かい白米に少し味の薄い味噌汁。味噌汁の中にはとうふが入っている。

鮭は味が意外と濃く美味しかった。

「ご馳走様でした。」

私はお皿をキッチンの洗い場に出した。

また睡魔が私を襲う。今日は眠くなるのが早い。早くお風呂に入るとしよう。

着替えを持ち、お風呂場へと向かった。

狭い浴槽に体を収める。

狭くて仕方がない。しょうがない事だ。

もう15年もこの家で過ごしているから慣れたもんだ。

石鹸で髪を洗う。1ヶ月ぶりだろうか。

節約して生きないといけないためシャンプーは毎日できない。いや、しない。

みんなそうだ。1ヶ月、2ヶ月、頭を洗わない。冬は1ヶ月に1回ほど、夏は少し洗う頻度を増やし5日〜10日に1回ほど。

清潔では無いが我慢する。これがきっと当たり前の事なのだろう。

お風呂から上がり髪を乾かす。



「はぁ、やっと終わった」

そう言って私は歯を磨いたら階段を登り部屋のドアを開け、布団に入った。

疲れが溜まっていたせいか。5分も経たずに深い眠りに入った。

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