スーパーリアル高校野球

今村駿一

 スーパーリアル高校野球

 最近仕事が暇でしょうがない。

 個人事業主だからあまり嬉しくない。

 それにしてもやる事が無い。

 暇つぶしでもしようかな。

 最近ツクールというもので素人でもゲームが作れる時代になった。

 玉石混合ではあるようだが中には面白い物もあるようだ。

 暇だしやってみよう。

 おっ、色々なゲームがあるんだな。

 その中で目を引くタイトルがあった。

『スーパーリアル高校野球』

 私は野球ゲームが好きだからこれをやってみよう。


『夜気宇高校3年生4月』

 3年生から始まるのか。

『「おい、お前ちょっとこっちに来い」』

『私は監督に呼ばれた』

 新学期からレギュラーになるのかな?

『「えーと、お前の名前は何だっけ?」』

 呼んでおいてそれかい! 

 まぁ部員数の多い部活あるあるだな。

 何々、

『名前を入力して下さい』

 面倒だからああああで良いか。

『「馬鹿野郎! そんな名前があるか!」』

『もう一度入力して下さい』

 変な所細かいんだなぁ。

 じゃあブラック企業に勤めていた時にいた1番嫌な上司の名前で良いか。

 入力、っと。

『「よし、坂中。最近お前ら3年の控えメンバーが弛んでいるぞ。全員野球なんだからレギュラーのサポートも大事な仕事だ。それを踏まえてしっかりやれ! とりあえずお前をサポートリーダーにする。6月最後のポジション発表までしっかりとやれよ」』

 ほう、野球の他にレギュラーメンバーのサポートもやらなくてはならないのか。

 本当にリアルな高校野球ゲームのようだな。

 暇つぶしにはぴったりだ。

『部活メニューを選択して下さい』

・球拾い

・長距離ランニング

・声出し

・グラウンド整備

・道具整備

・ユニホーム整備

・部室掃除

・お茶出し

・ティーバッティング

・走塁練習

・打席立ち

・マネージャーと交渉

・吹奏楽部と交渉

・応援団部と交渉

・監督に相談

・踊り


 ん?

 何だか野球と関係ない物がほとんどの様な気がするのだけど……

 しかもどれを選んでも野球が上達しそうもない。

 とりあえず一番野球の練習っぽい打席立ち、を選んでみるか。

 これならバッティングのアピールが出来そうだしな。

 

『打席立ち』

 おっ、打席に立っている選手が動くぞ。

 これを操作するのか。

 よしホームランを打つぞ!

 あれっ?

 バット振れないぞ?

 えっ?

 なにこれ?

 壊れてんの?

 ドカッ

 あっ、デットボールだ。

『「コラ坂中! ちゃんとボールを避けろ!」』

 何で当てられた方が怒られるんだ?

 ゲーム説明を読んでみるか。


・ミニゲーム、打席立ち

 ピッチャーが投球の度胸をつける為に打席に立ってあげます。

 内角いっぱい、時には当たる様な玉を投げてくるのでその球を避けて下さい。


 何だそりゃ? 

『「ピッチャーもっと内角」』

 監督が嫌な指示を出してくる。

 必死で避けるが結構難しい。

 何発か当てられその度に監督になぜか坂中が怒られた。

 ブラック企業の上司の名前だけどさすがにかわいそうだぞ。

 結局4発当てられた。

『「バカヤローちゃんと避けろ!」』

『技術経験値2、精神力3、向上した。監督好感度2マイナス。45のダメージを受けた』

 何だこれ?

 こんな事で野球の技術上がるのかなぁ。


『次のメニューを選んで下さい』

 あと野球の練習っぽいのはティーバッティングと走塁練習くらいだけど……

 お茶出しって何だ?

 選んでみるか。

 

『お茶出し』

 何か出てきたな。

 麦茶ゲージって何だ?

 どんどん減っていくぞ。

 これもゲーム説明を読んでみるか。


・ミニゲーム お茶出し

 部員が飲む麦茶がすぐ無くなってしまいます。

 切らさない様に補充し続けて下さい。

 部室に行って麦茶を作って持ってきます。

 その他、色々なレギュラー部員に必要な栄養食を運びます。


 部室まで行かないといけないのか、

 よし行こう。

 地図が出ているな。

 グラウンドを出て右か。

 あとは真っすぐに進めば、着いたぞ。

『麦茶を作って下さい』

 作ったからグラウンドまで持って行こう。

 ん?

『女子マネージャーがあらわれた』

 急にRPGの戦闘画面になったぞ。

『女子マネージャーの先制攻撃』

『「麦茶無くなりそうなのを気づくのが遅い! レギュラーメンバーが脱水症状になったらどうするの! ほらっさっさと運べ!」』

『10のダメージを受けた』

 何でそんな事を言われなくちゃならないんだ?

 第一麦茶を作ったのは坂中じゃないか。

 顔グラは可愛いけど嫌なマネージャーだなぁ。

『コマンドを入力』

・戦う

・逃げる

・呪文

・道具


 おっ。

 このマネージャーと戦えるんだ。

 じゃあ戦う、を選ぶぞ。

・小声でじゃあお前が気づいて持って来いよマネージャーだろ、と言う。

・遠慮がちに俺も気をつけるけどお前も注意して見ていてね、と言う。


 この2つしかないのか。

 全然戦うになっていねーじゃねーか。

 呪文は?


・小声でぶつぶつ言う


 これしかないのか……

『坂中は逃げ出した』

 これじゃ何も言わない方が良いだろう。

 早く麦茶を持って行くぞ。

『他の部活の妨害や流れ弾に気をつけて下さい』

 ん?

『ドカッ』

『サッカーボールが当たった。10のダメージ』

 えっ、他の部活のボールが飛んでくるのか。

『ドスッ』

『ラグビーボールが当たった。15のダメージ』

 避けながら持って行かないとダメなんだな。

 上手く操作しながら移動しているつもりだけど結構難易度高いなぁ。

 おっ、敵にエンカウントしたみたいだぞ。

『チアリーディング部部長があらわれた』


 何か派手な子が出てきたぞ。

 今度は何だ?


『チアリーディング部部長の先制攻撃』

『「この手紙、レギュラーの川島君に渡して」』

『精神をえぐられる。30のダメージ』

 まぁそれはなぁ……

『コマンドを入力して下さい』

・戦う

・逃げる

・呪文

・道具

 敵の攻撃力が強すぎるからこれは逃げておくか。

 逃げる、っと。

『いい? ちゃんと届けてよね』

『チアリーディング部部長は去って行った』

 

 ……まぁ良いか。

 よしグラウンドに戻ってきたぞ。

 ここに麦茶を置けばいいかな。

『「コラー! 遅い!」』

『「サポートはもっとレギュラーの事を考えて動いてほしい」』

『あなたは麦茶を届けた。しかし遅かったので監督好感度マイナス2、レギュラー部員好感度マイナス5』


 いやいやいや。

 確かに他の部活から飛んできたボールが体に当たったり、(理不尽な)敵とエンカウントしたりして遅かったかもしれないけどまずはありがとうじゃないの?

 何かレギュラー部員の圧が強すぎるぞ。

 ……まぁ良いか。

 次は何をやろうかな。

『「おにぎりが足りていないぞ。どうなっているんだ!」』

 えっ、まだお茶出し続いているの?

 今度はおにぎり?

『部室に戻ってマネージャーから受け取って下さい』

 あのマネージャーにまた会わなきゃいけないのかよ……。

 おにぎりが終わったらプロテインや栄養ドリンクも運ぶ事になってしまった。

 ようやくこのミニゲームが終わった時には100あった坂中の体力ゲージが5になってしまった。

 ようやく野球の練習が出来ると思ったら、

『「本日の練習はこれまで。補欠はグラウンド整備」』

 時間終了となってしまった。

 結局ほとんど野球らしい事は出来なかった。

 次の日はもっと野球の練習をやろう。



『2日目』

 今日は野球をやるぞ。

 よしこれにしよう。

『ティーバッティング』

 これで打撃を鍛えよう。

『一緒にやるメンバーを選んで下さい』

 メンバーはこの20人の中から選ぶのか。

 全員ベンチ入りしているメンバーみたいだな。

 ベンチ外のメンバーを鍛えてくれるのかな。

 じゃあキャプテンのこいつにしよう。


・ミニゲーム ティーバッティング

 打者が打ちやすいようにボールを上げて下さい。

 

 おっ、結構難しいぞ。

『「もっとちゃんとボールを上げてくれ」』

 注文のうるさい奴だなぁ。

『「ちゃんと投げろよ。それ位出来る様になってくれ」』

 性格も悪いなぁ。

『ティーバッティング1セット目終了。レギュラー部員好感度マイナス5』

 やばい。

 2セット目はちゃんと投げないと。

 しっかし、ボール上げるのむづいなぁ。

 結局3セット目までちゃんと上げられなかったよ。

『「そんな事だから今まで1度もレギュラーになれていないんだぞ」』

『レギュラー部員好感度マイナス5』

 あーあ。

 結局好感度はマイナスかぁ。

 まぁでも次は打つ番だからこれで挽回だ。

『次のメニューを選んで下さい』

 えっ、坂中は打たせてもらえないの?

 何で?

 ……まぁちゃんとボール出せる様になったらやらせてもらえるのかな。

 次のメニューで挽回だ!

 でも全然野球が上達しそうなメニューが無いんだよなぁ。

『踊り』なんて全く関係ないものまであるし。



 とりあえず色々なミニゲームは究極の暇つぶし位にはなったので続けてみた。

 そしてゲームの中では6月になった。

『3年生 6月』

『私は監督に呼ばれた』

『「4月から私は坂中の行動をよく見ていた。お前にはやはり才能がある」』

 おっ、レギュラーに昇格か?

『「坂中を全道具取締役に任命する」』

 ん?

 まぁ4月からやっていたのは打席立ち、お茶出し、ティーバッティングの他は長距離ランニング、球拾い、声出し、グラウンド整備、道具整備、ユニホーム整備、部室掃除等のミニゲームしかやっていなかった、というかほとんど野球と関係の無いメニューばかりしか選択肢が出なかったから仕方が無いのだけど、当然と言うかやっぱり坂中はレギュラーにはなれなかった。

 しかし全道具取締役とは何をやるのだろう?


『「野球道具管理は勿論の事、レギュラー部員のサポート全般及び応援や他の部活との合同練習の責任者となる重要な役だからしっかりとやれ」』


 野球道具管理、レギュラー部員のサポートはわかるけど他の部活との合同練習って何をやるのだろうか?

『6月2日』

『「それでは応援合同会議を始めます」』

 ん?

『参列者、吹奏楽部、チアリーディング部』

 ああ、この部の人達と話し合いをするのかな?

『2部活とも学校の方針で強制的に野球部の応援に参加させられます。色々と穏便に話し合って下さい』

 それって監督とか部長先生がやる事じゃないの?

 坂中もかわいそうに。

『「じゃあさっさと終わらせましょうか」』

 随分ド派手な顔グラだなぁ。

 本当に高校生?

 無料案内所の看板じゃないんだからさぁ。

『チアリーディング部部長があらわれた』

 戦闘画面になったぞ。

『「日に焼けるからあんまり長い試合の応援はしたくないんだけど」』

 随分とハッキリ言うなぁ。

『コマンドを入力して下さい』

・戦う

・逃げる

・呪文

・道具

 逃げる、を選択したい所だけど、どうせ逃げると監督好感度やレギュラー部員好感度が減るんだろ。

 道具って何を持っているのだ?

 道具を見てみよう。

『ガム、アメ、筆記用具、レギュラー部員の川島からチアリーディング部の部長に

渡せと命令されて預かっていたが言い方がムカついたので渡していなかった手紙』

 何かサラッととんでも無い道具があったぞ。

 これを使えばいいのかな?

『坂中は、レギュラー部員の川島からチアリーディング部の部長に渡せと命令されて預かっていたが言い方がムカついたので渡していなかった手紙、を使った』

『「えっ、川島君から?」』

『「わっ、わかったわよ。試合の日程表渡しなさいよ」』

『チアリーディング部が仲間になった』

 おお、これで良かったのか。

 そういえば預かっていたんだよな。

 ここで使う物だったのか。

 それとももっと早く使っていればチアリーディング部部長と川島が仲良くなってレギュラー部員好感度が上がったのかな?

 まぁこのゲームに出てくるレギュラー部員全員ムカつくから別に良いか。

『「じゃあ次は私ですね」』

『吹奏楽部部長があらわれた』

 今度は吹部の部長が相手か。

 大人しそうで真面目な外見だから協力してくれるかな。

『「コンクールの練習で忙しいので早く負けて下さい」』

 とっ、とんでもない事を言いだしたぞ。

 まぁ貴重な練習時間や夏休みを使わせてしまうのは申し訳ないとは思うけど。

『コマンドを入力して下さい』

・戦う

・逃げる

・呪文

・道具

 お願いするのだから戦うはおかしいし、逃げたらもう来てくれそうも無いし、道具の残りはアメとガムしか無いし。

 呪文を見てみるか。

『変な踊り』


 ここで使うのか!

『坂中は変な踊りを踊った』

『「ふざけているの?」』

 やばい、吹奏楽部部長怒っているぞ。

 怒りゲージが50も上がってしまった。

 失敗だったか。

 でも笑いゲージも60上がっているな。

 ここはもう1回だ。

『坂中は変な踊りを踊った』

『吹奏楽部部長は笑い出した』

 よっしゃ。

 成功したか?

『「その踊りに合わせて演奏するわ。うちの部員のストレス解消位にはなるでしょう」』

『吹奏楽部が仲間になった』

 何かバカにされた様な感じがするが、とにかく仲間になってもらった。

 しっかし、全道具取締役って大変だなぁ。


 そしてついに甲子園予選まで日程が進んだ。 


『甲子園県大会予選一回戦』

・北部竜神高校戦 (情報 毎年ほぼ1回戦負け)

『一回の表、夜気宇高校の攻撃』

 やっと野球の試合になったぞ。

 ここからは普通の野球ゲームになるのかな。

 ん?

 選手を動かせないぞ。

 勝手に試合が進んでいる。

 何だ、このゲーム?

 あれっ、観客席は動かせるな。

『カーソルを合わせて下さい』

・スタンドで応援している野球部補欠

・チアリーディング部

・吹奏楽部


 野球部のレギュラー部員はオートで試合しているな。

 じゃあ野球部補欠をクリックしてみよう。

『行動を選択』

・応援

・ハード声援

・メガホン叩き

・踊り

・変な踊り

・合わせ技

・ちゃんと応援する様指導


 とりあえず応援をクリックするか。

『応援』

『がんばれぇ~』

 あれっ、あんまり頑張れって感じじゃないな。

『レギュラー選手士気マイナス1、補欠士気マイナス2』

 選手の士気も下がったし、何故か補欠の士気も下がったぞ。

 まぁレギュラー部員の補欠に対する態度が悪いから試合出られない補欠の態度が悪いのもわからなくも無いけどな。

 あ~あ三者凡退しやがった。

『一回の裏、北部竜神高校の攻撃』

 今度は守備か。

 守備も操作出来ないんだな。

 

『行動を選択』

・応援

・ハード声援

・メガホン叩き

・踊り

・変な踊り

・合わせ技

・ちゃんと応援する様指導


 今度はハード声援にしてみるか。

『くっ、補欠の士気が足りない』

 

 何だ、これ?

 基本補欠はやる気無いんだな。

 こんな感じで試合は勝手に進み、他にもメガホン叩きや踊り、変な踊りもやってみたが試合に影響があるのか無いのかわからないまま5回8対0コールドで勝利した。


『試合後、全部員集合、監督からの言葉』

『「今日の試合お疲れ。レギュラーは良くやったから俺からは何も言う事は無いが補欠の動き、応援がまるでなっていない。そんな事なら明日から来なくてもいいぞ」』


 いや、そんな事言ったら全員来なくなるぞ。

 

『「全員野球がうちの部のモットーなのだから補欠だからって弛んでいないで明日からちゃんと気合を入れろ! じゃあ解散!」』


 大丈夫かなぁ。


『甲子園県大会予選二回戦』 

・山歌東高校戦 (情報 ベスト4の常連校)

 

 あらっ、結構強い所と当たってしまったぞ。

 夜気宇高校は勝てるのかな?


『「コラー! 坂中! レギュラーのお世話部員が半分しか来ていないじゃないか!」』


 やっぱりな。

 そりゃ来なくていい、なんて言われたら今時の若い子が来る訳ないだろ。

 まったく、この監督も何考えているんだか。


『「お世話部員が足りないからスタンドで応援する補欠から何人か出せ!』

『声援マイナス20』

 声援ポイントが減ってしまった。

 最も何の役に立っているのかよくわからないポイントではあるが。

そして野球の試合になった。

 夜気宇高校は頑張った。

 坂中も応援や踊りを頑張った。

 だが健闘空しく5―3で負けてしまった。

 レギュラー部員と女子マネージャーは大泣きしているけど、補欠は何とスッキリした顔をしているんだ。

 チアリーディング部と吹奏楽部に至ってはさっさと帰ってしまったぞ。

『「レギュラー部員はよくやった。この試合は補欠どものせいで負けた! 補欠は気合を入れる為、帰りはバスに乗らないで走って帰れ!」』

『ゲームオーバー』


 なんじゃこのゲームは?

 第一補欠には三年もいる訳だろ?

 気合入れも何もあったもんじゃないだろうに。

 いや~凄いゲームだなぁ。

 作者のパワーバントホームランは何考えてんだ?

 

 少し調べてみたらこのゲームはくそゲーの方で有名で、クリアまでいく人はほとんどいないらしい。

 その為、攻略サイトもクリア動画も存在しなかった。

 ただ、作者のパワーバントホームランがトゥルーエンドを見た人はきっと感動する、と書いていた。

 よし、どうせ暇だしトゥルーエンドまで見てみるか。



 ミニゲームのクオリティは高かったので暇つぶしにはなった。

 基本4月から監督やレギュラーの他にも女子マネージャー達や補欠部員、チアリーディング部や吹奏楽部の好感度を上げておかなくてはならないゲームの様だった。

 そしてそれに並行してチアリーディング部や吹奏楽部と話し合いや応援の練習もしなくてはならない。

 更に辞める部員を引き留め、怒鳴りこんできた親の対応までしなくてはならなかった。

 全道具取締役って大変なんだなぁ~、と思っていたら監督に呼び出され細かい事で説教され、レギュラー部員からは動きが悪い、とかもっと部の事を考えてほしい、だとかこれ以上どうせいと言うんだ、という事を言われ、女子マネージャー、チアリーディング部、吹奏楽部からも様々な文句を言われる。

 これこなしていたら凄い高校生になるなぁ。

 何度も細かくセーブして様々な問題を上手く解決するまでやり直し、それぞれの好感度を上げていく。

 そして甲子園予選を迎えた。


『甲子園県大会予選一回戦』

・古宮高校戦 (例年2回戦止まりだが今年はピッチャーレベルが高い)


 対戦相手はランダムに変わる様だ。

 無駄に凝っているなぁ。

 勿論レギュラーの選手は動かせない。

 動かせるのはベンチ入りも出来なかった補欠部員とチアリーディング部、吹奏楽部、その他に今回はレギュラー選手の彼女も動かせるようになった。

 勿論坂中達補欠にはそんなものはいない。

 試合は0対0のまま6回まで進んだ。

 何だよいきなり負けそうなのか。

 よし、そんな時には、

『行動を選択』

・応援

・ハード声援

・メガホン叩き

・踊り

・補欠みんなで踊り

・全員で踊り

・変な踊り

・合わせ技

・ちゃんと応援する様指導

 チアリーディング部や吹奏楽部、野球部補欠の好感度を上げたから選択肢が増えていた。 

 合わせ技を選択する。

『がんばれ~夜気宇高校~』

 何とチア、吹部の他にも親、見に来ていた友達も含めた全員で声を合せて応援を始めた。

『レギュラー選手士気プラス10』

 これは効果大だ!

 それからは7回に2点、8回に1点、9回は3点入り結局6対0で勝利した。

 まずは2回戦進出だ!

  

『甲子園県大会予選二回戦』

・固河高校戦 (それほど強くはないが打撃レベルは高い)


 ここは初回から3点入り、5回に1点入れられたけど7回に2点入り危なげなく試合が終わろうとしていた。

 今回は普通に応援だけしていれば勝てそうだな。

 あっ、7回の裏に3点入れられたぞ。

 やばい!

 ハード声援やってみるか。

『「頑張れー! うおー!」』

『レギュラー選手士気プラス10』

 よし、これでいけるだろう。

 あれっ? 

 補欠部員士気がなぜかマイナスになってきたぞ?

 話しかけてみよう。

『「疲れた」』

 おい~、いくら何でもやる気無さ過ぎだろ……

 まぁでも補欠部員士気が下がりすぎると退部してしまうからあまりこの応援はしないほうが良いな。

 結局9対4で夜気宇高校が勝利した。


『甲子園県大会予選三回戦』

・町辺工業高校戦 (ベスト4常連校 21世紀枠で甲子園出場1回)


 あ~この辺から強い高校が出てきたな~。

 1回1点、2回1点、3回2点、と毎回点入れられて夜気宇高校は0点。

 やっぱ強いわ。

 そろそろ何とかしないと。

 チアリーディング部も選択できるんだっけ。


『カーソルを合わせて下さい』

・スタンドで応援している野球部補欠

・チアリーディング部

・吹奏楽部

 

 よしチアリーディング部をクリックしよう。


『チアリーディング部の行動を選択』

・個人応援

・少しセクシー応援

・ハード声援

・踊り


 色々あるなぁ~。

 個人応援って何だ?

 これにしよう。


『「渡辺ク~ン。頑張って~」』

 マジか。

 選手個人に応援がいくのか。

 ちょ~羨ましいぞ。

『渡辺の士気プラス50』

 そりゃそうだろ。

 4回裏に渡辺がツーランホームランで2点入れて2対4。

 だが5回にまた1点入れられて2対5に。

 まずい、負けるぞ。

『行動を選択』

・応援

・ハード声援

・メガホン叩き

・踊り

・補欠みんなで踊り

・全員で踊り

・変な踊り

・合わせ技

・ちゃんと応援する様指導


 よし、変な踊りやってみるか。

 どんな効果があるかわからないけど。

『「が、ん、ば、れぇ~、ええええぇ~」』

 これなぁ~。

 練習の時も思ったけどこんなんやる意味あるのか?

 相手高校のレギュラーも笑っているぞ。

 ちょ~恥ずかしいだろ。

 あれっ、相手高校のバッティングが急に悪くなったぞ。

 6回7回0点に抑えた。

 結構意味あるんだなぁ、変な踊り。

 でも夜気宇高校入らないぞ追加点が。

 どうしよう。

『カーソルを合わせて下さい』

・スタンドで応援している野球部補欠

・チアリーディング部

・吹奏楽部


 吹部も選択できるんだったな。

 よし、吹部頼んだぞ。

『吹奏楽部の行動を選択』

・大音量応援

・踊り付き応援

・個人応援

・気合応援

 

 色々あるなぁ。

 しかし吹部にも個人応援もあるのな。

 これにしてみるか。

 おお、1人1人に個人の応援曲があるのかよ~。

 すげ~な。

 8回に3点入れているぞ。

 そして5対5の同点で9回の裏になった。

 よし、ここでハード声援いってみるか。

『くっ、補欠の士気が足りない』

 何なんだよこのやる気の無さは。

 メガホンも叩きすぎて壊れちゃったし。

 もう見守るしかない。

 あっ、でも渡辺がまたホームラン打ったぞ。

 やった~。

 6対5で準決勝進出だ~! 


『甲子園県大会予選準決勝』

・東芝橋口高校戦 (夏の甲子園出場3回 春の甲子園出場2回の強豪校)


 甲子園に出た事もある強豪校だから夜気宇高校は初回から5点入れられて大苦戦。

 コールド負けも十分考えられる状態になってしまった。

 初回からハード声援やメガホン叩きを使い、変な踊りやチアリーディング部、吹奏楽部もフル活用し、何とかコールド負けにはならなかったが9回表が終わった時点で4対10と6点差で負けていた。

 くそっ、ここまで来たのに。

 何とかならないのか。

『行動を選択』

・応援

・ハード声援

・メガホン叩き

・踊り

・補欠みんなで踊り

・全員で踊り

・変な踊り

・合わせ技

・ちゃんと応援する様指導


 そういえば全員で踊りはまだ使った事がなかったな。

 やってみるか。

『全員で踊り』

 おお、補欠部員、チアリーディング部、だけじゃなく親、見に来ていた友達まで吹部の音楽に合わせて踊り出したぞ。

……なんだこれ。

 相手も唖然としているし。

 夜気宇高校のレギュラー選手たちも何だか恥ずかしそうだぞ。

 あれっ、でも相手ピッチャーの球威が明らかに落ちたぞ。

 そして夜気宇高校も急に打ち出したぞ。

 早く試合終わらせたいのかの様だぞ。

 しっかし、変な踊り以上に変な踊りだなぁ。

 でも勝ってしまった!

 よっしゃ!

 次はいよいよ決勝戦だ!


『甲子園県大会予選決勝』

・未来山知識高校戦 (甲子園の常連校 夏優勝1回)

 ここに勝ては甲子園だ。

 よ~し踊るぞぉ~。

『試合前夜』

 ん?

『坂中はチアリーディング部の部室に呼び出された』

 おっ!

『チア部長「あのさぁ~そろそろ負けてくんない? 日に焼けるしさぁ。間違って甲子園なんか出たら全校応援で夏休み減るだろ」』

 なっ、なんちゅう事を言いだすんだ!

『吹部部長「そうですよね。私達もコンクールの練習したいので甲子園の応援なんかで時間を無駄にしたくないですね」』

 おっ、お前もなんて寂しい事を言うんだ……

『坂中「そうだな。俺も受験勉強したいしな」』

 コラ坂中! お前は同調しちゃダメだろうがぁ~。

『チア部長「だからさぁ、明日はうち全員休むから。お腹痛いとか言ってさぁ」』

 部員全員お腹痛いは無理があるだろ。

『吹部部長「あっ、うちの部も全員風邪をひきまーす」』

 えー。

『坂中「じゃあ俺も3年補欠は全員欠席させるわ。あと補欠の親には絶対明日は来るなって連絡しておく」』

 さっ、坂中!

 お前はダメだろぉ!!


『結局決勝は盛り下がり夜気宇高校はコールド負けした』


 まぁそうなるわな……

 おっ?


『トゥルーエンディング』


 これで見れるのか。

 と、いう事は決勝は勝てない仕様なんだな。

 ……まぁ良いけど。



『タワーマンションから下界を見下ろす俺。

 野球部での経験は人生の糧となった。

 監督は淫行で捕まり、レギュラー部員だった奴らは俺に金を借りに来る日々だ。

 チアリーディング部部長は無料案内所の看板になり、吹奏楽部部長は挫折して引きこもりになった。

 野球では勝てなかったけど人生で勝ったのは、


 そう


 補欠で全道具取締役の俺だった』


 『完』


 感動のエンディング?

 これパワーバントホームランの願望じゃねーの?

 絶対作者の高校時代の実話が元になってんだろこのゲーム?

 ……

 まぁいいや。

 良い暇つぶしにはなったな。

 もう夕方かぁ。

 明日はちゃんと仕事しよっと。

 



 あれっ?


 野球部に入部したんだよね?



 野球、した?



 何気なく外を見ると夕映えの街が黒い夜の幕を下ろそうとしていた。





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