登場人物たちは、第二次世界大戦期、身分があったり、運が良かったり、技能を持っていたりして、どちらかといえば「ましに」生き延びられた人々だと言えるかもしれない。
けれどもそんな彼らもまた、生まれながらのものを剥奪され、戦争体験に蝕まれ、苦悩して、「戦後」を生きている。
空に憑かれた男たちと、そんな男たちに出会った女優。
虚々実々、貴族であり、前線で戦争を体験し、生臭い政治にもおそらくはかかわっているだろう彼らは、しかし女優の目を通して見れば、不思議に「純」だ。
そして魂のどこかで、ほとんど会話すら交わしたことがないはずなのに、通じ合っているようにも思える。
それはきっと「空に憑かれた」ものの共感なのだろう。
彼らよりもずっと雄々しく、逞しく、強かにさまざまな仮面を操って生きる女優が、ラストの独白で、どこか寂しさを滲ませているのは、彼女にはどうしても触れられなかった魂を共有する彼らに対する微かな嫉妬なのかもしれない。
語られていること以上の物語を感じさせてくれる作品。