5章144話 着せ替え人形
綾のダークマタークッキーを食べたあと数日間胃の調子がおかしくなってたけど、やっと回復した。ほぼコゲだと思ったら本当に黒いクッキーだったり、甘いかと思ったら苦かったり酷かった……
「あらかた準備も終わってあと何かすることあったっけ?」
「んふふふ、血桜さん。あるでしょう?一番大事なことが!!」
うおっ!?びっくりした。裁縫部門がゾンビみたいに背後に群がってた。みんな、目の下にくま作りすぎだろ!
「ということはメイド服が出来たってこと?」
「そりゃあもう、男子たちの目を釘付けにする悪魔のメイド服が完成したわ!という訳で女子チーム、裁縫部にレッツゴー!」
やけにテンションが高いなぁ。もしかして、寝てなさすぎて深夜テンションなのか?いや、それはともかくとして、メイド服かぁ。見る分にはいいとしてまさか自分が着るとは。これ、精神持つかな。
少し歩くと部室棟の一角、機織りの音が聞こえてくる部屋に案内された。そういえば化紺先輩も居るのかな。
「失礼しま、え、事件現場?」
中に入った俺が見たのは地面に倒れる部員たちの姿だった。中には赤いものでダイイングメッセージを書いてる人もいる。「メイド最高……」最後の文字それかよ、と言うか赤いの糸かよ。
「血桜さん、いらっしゃい。聖火祭で使う服の試着?」
奥からゾンビたちを器用に避けて衣手先輩が出てきた。この避け方……慣れてるな。
「はい、試着が終わったら化紺先輩にも挨拶に行きますね!」
「そうしてもらえると明那も喜ぶと思う。あの堕狐、急にアイデアが湧いてきたとか言って服を作り出したから寝不足なのよ。」
確実に俺のせいだー!?いや、まさか化紺先輩が気にいるとは思わなかったんだって。というか待って、緋翠のやばいメイド服作ってないよね!?
「ははは、わかりました。」
「血桜さーん!こっちにきて?」
俺を呼ぶクラスメイトの声が聞こえてきて向かうとマネキンにメイド服が着せられていた。
「どう?我ら裁縫部の自信作は!!」
黒を基調としたメイド服に白いフリルなどがついていて、通常のメイド服と同じように見える。だが、若干胸元部分が深くなっていてスカートにもスリットが入っている。メイド服というより戦闘メイド服と言った方が正しいのでは?
「どう?言葉も無いかしら。機能性と可愛さ、そしてエロスを兼ね備える究極のメイド服が完成したわ。屍の山を踏み越えてできた最高傑作なの。」
いや、比喩表現じゃなくて物理的に屍の山出来てるんだよなぁ。それはともかくとして、これ俺が着るのかァ!?司や綾ならともかくとして、一般の人も2日目から来るらしいから朱音くるよな。地獄では?
「はい、それじゃあみんな着替えてきて。」
俺たちはそれぞれのサイズに合わせたメイド服を渡され、部室内の試着室に向かった。
「スカートには慣れたけど、このスリットは初めてだな。太ももが見えててすごく不安なんだけど。というか何故胸のサイズまで合ってるんだ……教えたことないはずなんだが。」
そう、文句を言いながらもメイド服を着ていく。正面には全身が写る鏡があり、メイド服を着た俺を写している。
うん、可愛い。ただ自分が見る分にはってだけだ。見られると凄く不安になる……ここまで露出のある服は着たことない!え?水着はいいのかって?だって綾たちしか見ないだろ?
「着替えたよーってなにこの惨事!?」
そこには何故かクラスの男子たちが血を流しながら倒れていて。綾たちが立ち尽くしていた。
「全く!見にくるのはいいけど鼻血で服を汚したら許さないんだから!」
困惑する綾たちと憤慨する燃え子。そして血を流す男子たち。何があったんだ?
「あ、雪ちゃん着替え終わったんだね!おおー可愛いよ。」
揺れっ!?そうか、みんな綾にやられたのか!しかも、裁縫部ですら読み違えるほどの山脈が見えてる!
「う、うん。取り敢えず、血をどうにかしようか。」
【血液操作】で床に落ちてる鼻血を全て取り除く。
「ま、まさか!血桜さんが俺たちの血を飲んでくれるのか!?」
「飲む訳ないでしょ!?」
誰が好き好んでやろうの血なんて飲むかよ。あ、いやその司の血は美味しいから飲むけどさ。ともあれ、鼻血は汚いので固めて男子たちに手渡した。あとは自分達で処理してくれ。
「まさか、私たちの【
そんな事もありながら細かい調節をしてメイド服は完成した。溢れそうになっていた綾の胸だが、胸の部分を今から変えるとどうしても、ポロリしやすくなるらしい。つまり、何も変わらなかった。
試着も終わって元の服に着替えると化紺先輩に挨拶に行った。先輩の部屋は奥にあるらしく案内されると何やら声が聞こえてきた。
「いや、胸をここまで開けるのは狙いすぎか……?やるならスカートにワンポイント穴でも開けた方が……いや、でもなぁ。」
凄い、職人って感じだ。いつもの飄々とした先輩しか見た事ないから驚いた。すると、俺に気がついたのか化紺先輩がこっちを向いた。
「ん?おお、雪!来てくれはったんやな。アレか?メイド服。」
「はい、試着も終わったので挨拶に来ました。見た感じ元気そうですね。」
「まぁな!起きがけにあんなデザイン見せられたら元気出てきたわ。緋翠ちゃんは来てないんか?」
緋翠?緋翠なら綾たちとメイド服を着てるはずだが?
「そうかぁ、ちょっと小さい子ように色々アイデアが出てきて服を作ってしもうたから着てみて欲しかったんや。というわけで、はいこれ。緋翠ちゃんにプレゼントや。」
「これ全部ですか!?」
10着くらい俺は服を渡された。見たところ、普段着としても使えるくらいクオリティの高いものばかりだ。貰ってもいいのだろうか?
「全部、緋翠ちゃんのサイズやから他の人は着れんよ?落ち込んでた気分も晴れたから感謝の印や。受け取ってくれ、な?」
やっぱりまだ、あの時のトラウマは心に残ってるんだ。俺は貰うことにした。化紺先輩なりの感謝の印なのだから。
「まぁ、交換条件って訳やないがミスコン、出てくれるんよな?丁度ええからその衣装も着てってや。」
そういえばそんなこと言われてたな。どんな衣装なんだろ。
化紺先輩が持ってきたのは赤を基調とした赤と黒のドレスだった。俺の鮮血武装に似てる。
「どや、綺麗やろ?」
「はい!凄い、こんなの着てみたかった!」
凄い綺麗なドレスだ。奥にはまだマネキンがあるから綾たちの分もあるのだろうか。というか俺、ドレスなんか着てみたいと思ったことあったか?
「そかそか、気に入ってくれてよかった。なら、綾たちも呼んで仕上げして終わんとな。」
それから、綾はまるで華のようなカラフルな色のドレスを、怜は氷のような白と青のドレスをマナスと千奈ちゃんは黒と白のドレスを試着していた。澪は空色のドレスを着ていた。
良かったな、澪。空色は司の好きな色だ。きっと気にいると思う。
最近、自分が女であることに違和感がなくなってきている気がするな……
あとがき
ここまで読んでくれてありがとうございます!
面白いと思ってくれたら星とフォローをお願いします!作者のモチベーションが上がりますので!何とぞ!
新作を書き始めました!
日光浴したい私が吸血鬼!?〜レベルを上げるために私は今日もダンジョンに潜る〜
https://kakuyomu.jp/works/16817330651540224663
是非みにきてくれると嬉しいです!
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