5章143話 なんか、前より……

 俺は出し物の手伝いをするために早く学校に来ていた。

 

 かなりみんな気合が入っていて特に、男連中は率先して手伝いに来る。手伝おうとしても休んでて?という感じで本番までやることがなさそうなくらいだ。


 とはいえ手伝いたいし、何もやらないとソワソワしてくるんだよなぁ。前、司に怒られたけどそれでも誰かの役に立ちたいって思いはそう簡単に引き剥がせないんだよな。


「血桜さん!ちょっとこれが足りないから買い出しに行ってもらえないかな?」

「あ、それならこれも!」

 

 各部門の人が俺に紙を渡してくる。

 仕事キター!やるやるぅ!


「分かった!レシートは貰ってきた方がいいよね?」

「うん、後で生徒会に提出するから。」


 よし、それじゃあ買い物行ってこようかな。えーと、卵と小麦粉、それからマスキングテープか。近くにある店で買えそうだな。


「わたしもいくー!」

「緋翠も行きたいの?あーそっかお手伝いしたいんだ。よし、なら行こうか!」

「それなら、私も着いていくわ。生徒だけで外に行くのは危ないから。」


 俺たちが買い出しに行こうとしたら緋真姉がついていくと言い出した。

 そんな遠くまで買い物行くわけでもないし、大丈夫だと思うんだけどなぁ。


「そんな、子供じゃないんだから大丈夫だって。」

「それでも、よ。つい最近事件に巻き込まれたの忘れたの?そのための私なんだから。」

「あっ」


 そういえばそうだった。聖火祭のことで頭がいっぱいになってたけど今、この学校は魔防隊に警備されているんだった。


「ごめん、忘れてたよ。じゃあ3人で行こう。」


 俺たちは徒歩で店まで歩き出す。


「そういえば、緋翠ちゃんって誰が名付けたの?」


「私だけど?緑色の髪で赤い目、それに私の娘なんだから家族の色も入れたかったし。」


「……………そう。いい名前ね。」


 緋真姉は緋翠の頭を撫でながら笑った。なんだろう、さっき妙に魔があった気がするんだけど。


「うん、緋真お姉ちゃん!ありがとう。」

「………!」


 急に緋真姉は緋翠から手を離した。きっと緋翠の可愛さにやられたんだろう。うちの娘は可愛いからな。


「よし、着いた。それじゃあ買い物を済ませようか。そうだ、緋翠。大人しくしてたからお母さんが好きなお菓子買ってあげる。」

「ほんと?やったぁ!」


 あぁ、緋翠は可愛いなぁ。もし、この前みたいに「私いらないの?」なんて言われたら死にたくなる。要らない子なんて居ないし、ずっと私の家族だからね。


「……………………自分と重ねているのね。でも。」



「うん、卵も買ったし、小麦粉も買った。マスキングテープは色を聞き忘れたから何種類か買っておいた。問題なさそう。緋翠、何が食べたい?」

「あのぐるぐるした白いやつ食べてみたい!」


 白いやつ?あぁアイスクリームか。


「よし、買いに行こう!!ほら、緋真姉も!」

「あっ、そうね………」


 それから俺たちはアイスクリームを頼み堪能した。緋翠は初めてのアイスクリームを美味しそうに食べてた。


「顔についてるわよ、緋翠ちゃん。こっち向いてー?よし、完璧!可愛いわよ。」


 緋真姉も緋翠仲良くなって良かった。あった時はそれこそ急に姪ができて困惑してたのかギクシャクしてたからな。


「そろそろ、戻りましょう。みんな、待ってると思うから。」

「そうだね、緋真姉。緋翠も良いよね。」

「うん!楽しかった!」


 そうして俺たちは来た道を戻ることにした。その間に今までのことやら女になってどう思ったかなどを話してた。


 「それで、うわっと」


 あっやばっ転ぶ!?しまった、荷物持ってて両手塞がってる!


「気をつけなさい?下もちゃんと見るのよ。」

「ありがとう……」

「怪我はない?痛めたりは?」

「大丈夫だって。」

「やっぱり病み上がりなんだから外に出ない方が良かったんじゃない?」


 緋真姉のおかげでなんとか転ばなかったけど、少し過保護過ぎないか。昔からこんな感じではあったけど前より心配してくれる気がする。


「問題ないよ。少し段差に躓いただけだから。荷物で見えなくて。」

「それなら良いけど……雪って色々溜め込んだり、巻き込まれやすいから心配なの。なんでも言ってね。すぐに助けに行くから!」

「分かったよ……」


 もう、あんな大事件も起こらないだろうしそんな大変な目にはそうそう合わないだろうけど。


「買い出しから戻ったよー!」

「やっと来たー!」

「もう、あと卵一個だったから危なかったー。」


 あーソフトクリーム食べたの秘密にした方がいいなこれ。緋翠、秘密だからね?


 俺は緋翠にアイコンタクトで黙っておくように伝える。


「うん!ソフトクリームを食べたこと内緒にするんだよね?」


 あ〜小さい子に小声で喋れとは言えないもんなぁ。どうしようか、これ。


「雪ちゃん?遅れた原因は買い物じゃなかったんだね?」

「あ、えーと、その。緋翠がつまらなそうにしてたから、つい。」


 司からは無言の圧があるし、綾は笑いながら怒ってる!?こ、こういうとき緋真姉が助けてくれるんだよね!?


「緋真姉もです!買い食い止めてくださいよ。」

「そ、その。緋翠ちゃんが可愛くて……つい。私のソフトクリームも渡しちゃって……可愛かったんですよ?」


 ダメだ、自分に非があるって認めてるから強く出れてない!


「全くもう、罰として私たちの料理の味見役をして下さいね?」

「ゑ?あの、料理の腕って綾ちゃん今、どんな感じなのかなぁ。」


 緋真姉が俺の方に向いてくるけど既に処刑台に登ってる姉を俺は直視できなかった。

 きっと今絶望の顔をしていることだろう。


「雪ちゃんも、だよ?」


 あぁ、緋翠。お母さん今日でお別れかも……


「緋翠ちゃんは司くんお手製クッキーを食べて待っててね?」

「うん!」


 緋翠が楽しそうなら良いんだ。この、クッキーとは思えない漆黒の塊を食べさせない為にも!


あとがき


ここまで読んでくれてありがとうございます!

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新作を書き始めました!


日光浴したい私が吸血鬼!?〜レベルを上げるために私は今日もダンジョンに潜る〜


https://kakuyomu.jp/works/16817330651540224663


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