5章140話 鬼姫襲来

 俺は化紺先輩が起きたことを医師の方に連絡した。当然大騒ぎになったし、すごく喜ばれていた。特に大変だったのは衣手先輩が泣きつかれて寝てしまった後も化紺先輩から離れなかったことだ。俺には想像もつかないくらい心配だったんだろうな……。


 そのあと寮に戻った俺は綾たちに先輩が目を覚ましたこと、健康体そのものだったことで明日にでも退院できることを伝えた。意外だったのはマナスだった。いつもなら冷静だった彼女が誰よりも喜んでいた。


 最後に先輩を助けたのはマナスだったし、責任を感じてたとかかな……いや。今度こそ助けられたから、かな?


「ああ―いい天気!いいことが続くと気分がいいなぁ。」


「雪ちゃん、そろそろ行くよー?」

「今行く!緋翠もいくよ?」

「うん!」


 俺と緋翠はすぐにバックをもって綾のもとに向かう。


「そういえばさー雪ちゃんが先輩のお見舞い言ってるときに担任の先生が連絡に来たんだけど。聖火祭の警護もかねて魔防隊から人が来るらしいよ。前の秋さんみたいな感じで!」


 へぇ、でも今回は父さん事件の後処理とか捜査で忙しいみたいだから知り合いじゃないな。


「誰が来るとか言ってなかったのか?」

「それが、昨日到着したばかりで先生も知らないって。生徒と仲良くなれるようにうちの卒業生で歳も近いらしいってことくらいかな。」


 俺は思い当たる人物がいないから知らない人だなと思い、話を変えて綾と雑談しながら教室に入っていった。


 既に何人かクラスメイトは来ていて、特に各部門のトップ、料理部門【司】、装飾部門【美術部】、服飾部門【燃え子】がきていた。


「おう、雪。化紺先輩、目を覚ましたらしいな。」


 あれ?俺まだ司には伝えてないんだけどな。どっから聞いたんだ?


「昨日、衣手先輩が教えてくれたの。裁縫部にとって化紺先輩はデザインの要。部員のみんなが尊敬する人だから。」


 燃え子が教えてくれた。そっか、衣手先輩が。きっと発表の準備をするために戻った時に教えたんだ。化紺先輩が退院した後すぐにいろいろ作業しなくてもいいように。


「今日にも退院できるらしいから、後で会いに行ってきたらいいんじゃないかな。きっと喜ぶと思う。」


 緋翠のデザインで起きたとは言えないし、返してもらうの忘れてたんだよね……


 話していると続々とクラスメイトが登校してきた。やっぱりみんな出し物が気になるみたいで着た後すぐに手伝い始める。


キーンコーンカーンコーン


 始業のチャイム!?しまった、まだ出し物の準備したものを片付けられてないぞ。


チャイムと同時に担任の先生が入ってくる。


「あー、そのままでいいぞ?うちのクラスは優秀だからな、すでに授業でやるところは終わってる。余った時間は準備に使っていいと理事長のお墨付きで許可する。ただ少し連絡というか紹介したいことがあるので聞いてくれ。」


 なんだ?若干、先生が緊張してる。


「昨日も話したと思うが、今日から魔防隊から臨時講師として来てくださっている人を紹介したい。お願いします。」


 先生が扉に向かって合図すると女性が入ってきた。背中まである黒い長髪、優しげな瞼から覗かせる見通すような金色の瞳。俺はこの人を知ってる!だって。


「魔防隊から来ました、【血桜 緋真ひさな】です。よろしくお願いしますね?」


 緋真姉だ!!なんで!?大阪にいたはずでは。というより俺が女になったことどう説明すんだ!まだ家族の誰も緋真姉には話してないってのに!


 クラスがどよめきと歓声に包まれる中、先生の席払いで静かになる。女子より男子の方が揃って静かになった。先生の話の時は背中を向けていたやつもいたのに、みんなまっすぐ前を向いてやがる。わかりやすいなぁ。


「彼女はみな気が付いてると思うが雪のお姉さまだ。今回は以前来てくださった秋さんのご厚意で皆と年の近い彼女に来ていただいた。くれぐれも粗相のないように。」


「私はここのOBなのである程度皆さんと話題等も合うと思います。いろいろ質問してくださいね?しばらくはここで皆さんの手伝いをさせてもらうので気軽に緋真さんと呼んでください。」


 緋真姉は物腰柔らかに自己紹介をしていった。当然、俺についても質問されるわけで……


「雪さんとは、どういう感じなんですか?喧嘩とかは?」


「あまりしたことはないですね……私、実は虫が苦手で。雪と司君が虫を見せてきた時以来してませんね。」


 確かに、あの時ほど怖いものはなかったし、虫は禁忌だと学んだ。あれ?そういえば司どうした?


 俺は隣にいた司に目を向けると石になっていた。あ~急に緋真姉と会ったからびっくりしすぎたんだな。


「こ、ライバル恋敵ぃ!?そんな、もう来るなんて」


 あ、澪もダウンしてる。だからあれほど早くしろって言ったのに。


 待てよ?緋真姉が俺がここにいることに驚いていない!?まさか……はっ!!

 石像がサムズアップしてやがるッ愉快犯めぇぇぇぇぇえ!!


「そういうわけだから、この後二人だけで話しましょうね?雪。」


 司の犯行にイラっとしていると急に周りに影が落ちる。すでに自己紹介と質問する声が消えていた。


 なんだ!?う、後ろからワイバーン級の気配を感じる。振り向かないと死ぬっ

 

 俺が振り向くと、緋真姉が俺の真後ろに来ていた。終わった。


「は、はははいぃぃぃぃぃ!!」




あとがき

是非星とフォローをお願いします!作者のモチベーションが上がりますので!何とぞ!

 それと0章辺りから大幅改稿を始めます。もう見た方もまた見てくれるとより雪の目標や感情を感じやすくなると思います!


新作を書き始めました!


日光浴したい私が吸血鬼!?〜レベルを上げるために私は今日もダンジョンに潜る〜


https://kakuyomu.jp/works/16817330651540224663


是非みにきてくれると嬉しいです!


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