5章137話 聖火祭

 幼女を抱きしめたまま俺は教室に入る。既に教室には司と澪がいてすぐに俺に気がついてこちらを見てくる。が、明らかにいつもと違う光景に言葉を失っていた。


「おはよう、司、澪。」


「お、おう。おはよう・・・じゃねーよ!誰だその子!?」


 誰だとは失敬な。今日からうちの子になった可愛くて賢い俺の娘だぞ!


 俺は司にこの子のことを紹介する。


「今日から私の娘になった子だよ?可愛いでしょ?」


 司は思いっきり自分の顔を引っ叩いた。絶対に夢だと思ったな、こいつ。そんなに信じられないか。


「綾、俺は夢見てんのか?最近女になったと思ったらいきなり小学生くらいの娘連れて学校に登校してくる親友を俺はどう扱えば良いんだ。」


「笑えば良いと思うよ。」


 綾のネタに司は大真面目に爆笑するのだった。いや、笑うしかないと言った感じではあったけど。

 そうして、我が娘との顔合わせが済んだわけなのだがここで澪が俺に質問してきた。


「雪の娘かどうかは別に良いとして。この子の名前ってなんて言うの?いつまでもこの子とか呼ぶの大変なんだけど。」


 そういえば確かに名前がなかったな。と言うか聞いても答えてくれなかったわけなんだが。


 俺は改めて名前を聞いてみる。抱き抱えたこの子を覗き込んで見るとあっちも俺をみてくる。可愛いかよ。


「名前、教えてくれる?いつまでも無いと呼びにくいな?」


 我が娘は首を傾げて俺の顔を見つめるだけだった。なんだろう、名前を言いたく無いわけでもあるのかな。

 俺がそうして睨めっこをしていると怜がある事をかんがえた。


「もしかして、名前がない、とか?それか雪につけてもらいたいんじゃない?」


 た、たしかに!何度聞いても答えないばかりか首をかしげるのは何でだろうとは思っていた。名前がなかったのか!そうだよな、ないのに聞いてもわからないよな。


 俺は納得してこの子に名前をつけるため考える。そうだなぁ、何が良いだろうか。うちだと赤い漢字をよく使うんだよな。母さんがそういう漢字なことが要因だとは思うけど。

 この子の綺麗な緑色の髪それに俺と似た赤い眼、まるで宝石みたいだ。そうだ、緋翠ひすいなんてどうだろうか。確かアレキサンドライトとか言う赤と緑に変化する石があったはずだ。それを模した名前だ。


「緋翠って呼んでも良いかな。どうかな?」


 少し悩んだ後に首を縦に振って満面の笑みで俺の方を向いて笑った。


「うん、私ひすい!ひすいだよ!」


 緋翠はとても嬉しそうに笑ってくれた。それを見た俺もとても嬉しくなった。


 その一部始終を見ていた綾たちは微笑ましさ半分困惑半分で雪を見守っていた。


「それで?その緋翠ちゃんをどうするの?今日は良いとして流石にずっとここに居させるわけにもいかないでしょ。」


 澪のいう通りだ。そもそも、小学生くらいの緋翠はここじゃなくて小学校に通った方がいい。それにここは全寮制だ。俺と綾の部屋で面倒を見るにしても今日ちゃんに迷惑がかかるかもしれない。


 「緋翠はどうしたい?」


 俺は緋翠に選択を託すことにした。もし、緋翠が俺と居たいと言うなら頑張って何とかするつもりだ。


 すると緋翠は何も言わないで俺に抱きついてくる。緋翠は賢い子だ。きっと自分が一緒にいると迷惑になるとわかってる。でも。


「そうだな、一緒にいようか。ごめん、みんな。もしかしたらみんなの力を借りるかもしれない。助けてほしい。」


 俺は一人で何もできないことを知ってる。一人の虚しさも辛さも。だから頼ろう。一人で抱え込むなとアイツも言ってた。


「おう、前に言った俺たちを頼れって言葉忘れてないな?協力してやる。」


 司が頭を撫でてくる。すごい雑だけど心のこもった手だ。司の顔はやれやれって表情だったけど少し口角が上がってた。


 始業の合図がなり俺たちは席についた。緋翠は俺の膝の上にちょこんと座ってる。暴れもしなくて大人しい。


 先生が教室に入ってくる。何か言われるかなと思ったら案の定こっちを向いて一瞬驚いた表情をする。


 やっぱり驚くよなぁ、急に生徒の一人が幼女を抱えて席に座ってるんだもの。


「ん"ん"っ最後こそ事件があったわけだが選抜大会ご苦労だった。各々自分の課題や力量を把握できたと思う。そして、選抜大会が終わったと言うことは・・・聖火祭が始まる!」


 えっ緋翠のことスルーするのか!?てっきり色々質問されると思ってたんだけど。


 俺は驚きつつもホッとしながら緋翠の頭を撫でた。そうしたら先生の言葉が気になったようで俺を見上げて聞いてきた。


「聖火祭って何?」


 何かって聞かれるとよく知らないんだよなぁ。


「うーん、お祭りかな?楽しいものだよ。」


「へぇー!楽しみ!」


 緋翠は目をキラキラさせて笑った。笑顔が眩しい!可愛いかよ。


「さて、そこで今日から聖火祭で行う出し物を決めてもらう!予算は必要だと判断されれば経費で落ちる。そして、最も人気のあった出し物は担任の給料が上がる!だから頑張れ!」


 本音ダダ漏れじゃねーか!?良いのかそれで?緋翠にはこう言う大人になってほしくないな。綺麗なままでいてくれ。


「あ、血桜はあとで職員室こい。その後で話がある。」


 あ、やっぱり説教はあるのね。


あとがき

是非星とフォローをお願いします!作者のモチベーションが上がりますので!何とぞ!

 それと0章辺りから大幅改稿を始めます。もう見た方もまた見てくれるとより雪の目標や感情を感じやすくなると思います!


新作を書き始めました!


日光浴したい私が吸血鬼!?〜レベルを上げるために私は今日もダンジョンに潜る〜


https://kakuyomu.jp/works/16817330651540224663


是非みにきてくれると嬉しいです!

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