5章136話 混沌
謎の幼女が俺を指差して「お母さん」だと言っている。意味がわからない。だって俺はついこの間まで男だったんだぞ!?こんな大きな子供いるわけない!
俺はものすごくまずい予感がした。大抵こういう時には本当に良くないことが起きる。怜ほどじゃないにでも俺だって勘は良い方だ。
「ねぇ・・・」
綾が俺の方を油の挿してない人形みたいにゆっくりと向いてくる。絶対に良くない、特にこの部屋だと!
「いったい、お父さんは誰なの!?司くん!?それとも鬼灯くん!?」
くそ、避けられなかった。今の時間帯だとあの3人は確実に起きてる!どうにかしないと!
俺は綾に確実に、しかし迅速に説得にかかる。掛からねばならない。
「綾、その子の勘違いに決まってるだろ?そもそも、俺は4月近くまで男だったんだぞ?そんな大きな子供いるわけないだろ。」
至極当たり前かつ正論でどうだ!?
「で、でもこの子はお母さんだって言ってるし・・・うーん?」
よ、よし!少し疑問を持ち始めた。声もこれなら外に聞こえることはない!
「きっと間違えただけだって。私に似た誰かと。だから、少し落ち着けって、な?」
「そ、そうだよね!ダヨネー!私ったらびっくりして変なこと言っちゃった。ごめん。それにしても誰が連れてきたんだろ?」
よし、完全に綾の誤解は解けた!後は何気なく学校に行ってこの子の誤解を解く!それだけーーーーーー
「ゆきー!」
はぅあ!?こ、こいつ俺の名前を!まずい、やっと誤解が解けたところだっていうのにここで名前を呼んだりしたら・・・!
「やっぱり雪ちゃんの知り合いなんじゃない!!」
くそ、こいつ確信犯なんじゃないのか?
俺はこの小さな死神をどうにか綾から離したくて思考を巡らせる。だけど、不幸というか嫌な予感というものは連鎖する。
「雪ー?大きな声出してるみたいだけどどうしたの?何かあったなら力になるよ!」
怜が声を聞きつけてやってきてしまった!最悪だ。もし、怜がこの子をみて能力を発動でもしたら・・・確実に
俺は怜に何ともないと言うためにドアに向かう。手が震える、心臓がはち切れそうだ!急いで行かないとあの悪魔がまた何かしでかす。そんな予感がする!
扉を開けると怜と千奈ちゃん、そしてマナスがいた。
「何でもないから!先に学校に向かってて?すぐに私たちも向かーーーーー
怜たちに先に学校に向かうように扉を少しだけ開けた状態で促す。そうする事で仲を見せないようにした、のだが。
「おかあさん!」
悪魔が再誕しやがった。背後には綾が悪魔を抱えて立ってた。
俺は負けたんだ。この、小さな悪魔に。
登校しながらも説得という名の裁判は続く。終わった。せっかくの学校生活だと思ったのにこんな訳わからん事がきっかけで終わるのか。
「うーん、眼は雪に似てる気がする。髪色はーーーー誰だろう。緑色の髪の毛なんていたかな。」
そうなのだ。俺は髪の毛が緑の人なんて知らない。待て、俺は人ではないが緑色の髪をした女性を知ってる。だけど、人間ではないから考えから除外していた。
「あっアーデに似てるかも!確か緑色だったよね!?」
そう、アーデに似てるのだ。でも、俺も彼女も女だ。いや、そもそも種族が違うんだけど。
俺はどうにかこの子のお母さんになることから逃げようとする。きっと、俺ではない本当の母親がいるはず。
「おかあさん、私、要らない?」
悪魔が上目遣いで俺をみてくる。物凄く良くわからないけど胸が苦しい。いや、むしろ高鳴ってくる。何だこの感情。
「私、要らない子?」
俺はその瞬間に電撃が走った。急いで綾から子供を奪い取って抱きしめる。その言葉はずるいだろ。
「そんなわけない!要らない子なんて居ないんだから!そうだね、君は私の子になりたい?」
要らないなんて言わないでくれ。そんな顔で見られたら護ってやりたくなるじゃないか!
あぁ、よく見たら可愛いな。俺に似た目をしてる。それに賢そうだ。きっと美人になる!
「うん!おかあさん!」
「おぉ、雪ちゃんも陥落した。やっと自分の子だと認めたんだね!いや、それなら父親は・・・私?」
綾が何か変な方向にずれていった。そんなわけないだろうに。もし、綾の子供ならこんなに賢そうにはならないだろうが。
「そろそろ茶番は辞めましょう。で?この子は誰が連れてきたんですか?」
マナスが冷たく話をぶった斬った。続いて怜も続く。
「そうね、やっぱりアーデに似てるんだから本人に聞いてみたら良いんじゃないかしら。」
確かにそうだな。お母さんは俺だがお父さん?はアーデかもしれないし。ん?アーデ?そういえば彼女に何か聞きたいことがあったような。
「あ、血桜さん!おはよう!」
登校中に声をかけられた。誰だろうと振り返ったらその疑問は解決した。
「おはよう、大樹!あっそうだ。加護について聞くんだった。」
大樹との試合中、トレント強奪事件でアーデに聞きたいことがあったんだった!
俺は大樹に挨拶した後、ブレスレットになっている雪華に向けて魔力を流してアーデに連絡する。
「アーデ、聞こえる?アーデ!」
俺はドライアドの森を出る前に一度試したからやり方は知ってる。その時と同じようにやった。
「あれ?返事がない。もしかして寝てる?」
アーデからの返事はなかった。というか繋がった感覚がない。まぁ、また連絡するか。
俺は雪華に魔力を流すのを辞める。
「アーデに繋がらなかったの?」
綾が俺の様子を見て聞いてくる。本来なら念話に近い方法で連絡するはずなのだがアーデの計らいでスピーカーみたいに連絡できるようになってるからだ。
「うん、寝てるんじゃないかな。また後でかけ直すよ。よし、お母さんと一緒に学校に行こうな?」
俺は我が子に話しかける。見れば見るほど自分の子に思えてくる。目に入れても痛くないとはこの事だろうと俺は実感する。
「完全に雪さんお母さんになるつもりだよ、マナス!」
「そうですね、まぁ良いんじゃないですか?本人がいいなら。」
千奈ちゃんとマナスが何か言ってる気がするけど聞きそびれた。何言ってたんだろう。
俺はこの子を抱き抱えながら校門に入る。
後書き
是非星とフォローをお願いします!作者のモチベーションが上がりますので!何とぞ!
それと0章辺りから大幅改稿を始めます。もう見た方もまた見てくれるとより雪の目標や感情を感じやすくなると思います!
新作を書き始めました!
日光浴したい私が吸血鬼!?〜レベルを上げるために私は今日もダンジョンに潜る〜
https://kakuyomu.jp/works/16817330651540224663
是非みにきてくれると嬉しいです!
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