4章131話 混妖狐紺

俺の頭の中をぐちゃぐちゃに思考が駆け巡る。

何でここに呪術師が!?本物の化紺先輩は?身体は本物って何だ!?本当に綾たちは無事なのか?体が痺れて・・・動けない!千奈ちゃんはどうなってる?マナスは何された!


指先すら動かない中目線だけ化紺先輩を名乗る呪術師に向ける。


「化紺先輩はどうした。お前は先輩じゃないんだろ!?今すぐ出ていけ!」


「あはは!良い顔してるねぇ、ユキチャン?お母さんの最期はどうだった?きっと良い顔で死んだんでしょう?」


「は?」


こいつ今なんて言った?母さんの最期だって?それに俺の名前をなんで知ってる。いつから化紺先輩を乗っ取ってたんだ。


「まさか、母さんが言っていたワイバーンの製作者って。」


「うちやねぇ。あの毒は解呪不可能、あの後すぐに死んだんやろ?なぁなぁ、どんな顔で死んだん?」


こいつは母さんが生きてることを知らない?もしこいつに生きてるなんて言ったらまた狙うかも。


「お前になんか教えるか。」


「ふーん、まぁええわ。それよりさっさと連れてこうか。早うしないとこわぁい人たちがくるもんなぁ。」


奴は何やら真っ黒な結晶のようなものを取り出して地面に投げつけて破壊する。するとまるであの時のワイバーンのような真っ黒い竜がいきなり現れた。


「さて、行こうか?マナスは未来予測の子を連れて来てな。ウチはユキチャンを連れてくから。」


怜の方に千奈ちゃん、いやマナスが向かって歩いていく。完全に操られてるのか抵抗する様子もない。


奴は黒い尻尾を揺らしながら俺の元までやって来た。少しでも時間を稼がないと。きっと異変を感じた人が魔防隊を呼んでくれる!


「なんで、私の名前を知ってる。教えた覚えはないけど。私が知ってる化紺先輩は既におまえだったのか?」


「明那ちゃんの記憶で知った・・・わけやないで?ドライアドの森、あそこで聞いたんや。」


ドライアドの森、だって!?まさかアーデの件もコイツが!

俺は初めて怒りが込み上げて来た。コイツは俺の大切な人たちを不幸にする。そう確信して手を握りしめる。


「マスター。」


呪術師の背後に千奈ちゃんが歩み寄って来た。怜はと探すと既に竜の上に乗せられていた。くそ、助けは来ないのか・・・!


「お、もう乗せ終わったんか。うちもユキチャン連れてかな。マナス手伝っーーー!?」


もうダメだ、そう思った矢先突然奴の体から黒い刃が生えて来た。


「やっと隙を見せましたね。千奈、融合解除します。」


千奈ちゃんの身体からマナスが出てくる。え?操られてたんじゃないの?


「実は全く操られてなかったんです!マナスと私が化紺先輩を乗っ取った呪術師に会った時に、私もうダメだと思ったんですけど融合したマナスが操られたふりをして隙を見せたら倒そうって提案してくれたんです!」


「確かに最初、操られそうになって人格すら破壊されそうだったんですけど、千奈の中に精神だけ避難させてもらったんです。元々、私は精神さえ無事なら問題ないので。コイツが精神が抜け出た抜け殻を勘違いしてくれたおかげでもあるんですけどね。」


「良かったー。本当に操られてるのかと思ったよ。それにしても腕輪で動けなくする必要あったの?」


それなら3人で奴を倒したほうが確実だった気がするんだけど。

私はうつ伏せの状態で聞くのだが何故か呆れた表情で話し出す千奈ちゃん。


「えっと、最初だけ痺れさせただけで動けるようになってますよ?てっきり雪さんも隙を伺ってるかなって思ってたんですけど。怜姉なんてほら。」


千奈ちゃんが指で示した方向を見ると凍らされた竜の上にいる怜が見えた。


「えー?もしかして気がついてなかったの私だけ?というかそんな魔力余ってなかった気がするんだけど・・・。」


「そこは私が魔力回復薬マナポーションを飲ませました!元々動けるのには気がついてたのでアイコンタクトで飲んでくれました。」


俺は耳まで赤くしながら立ち上がって呪術師に近づく。


「殺した・・・わけじゃないよね。昏睡状態かな。」


「はい!【呪剣 黒夜】相手を傷つけることはできない代わりに刺した相手を眠らせることができる剣です。化紺先輩の体を傷つけたく無かったので。」


千奈ちゃんが黒い剣を見せてくれたその時。


「待って千奈!!化紺先輩が居ない!」


振り返ると倒れていたはずの化紺先輩が居なくなっていた。一体どこに!?


「いやービックリしたわ。急に刺してくるなんて思わんやろ、普通。」


竜の足元から化紺先輩の声が聞こえてくる。そこには全く元気な姿の化紺先輩が立っていた。


怜はすぐに竜から飛び退いて私達の方まで下がって来た。


「一体どうやって千奈の呪剣を躱したっていうの。確実に刺したはず。私には確かにそう見えた。」


「確かに喰らって寝たけどな。魔力でレジストしただけの話や。あとは幻影残して隠れただけ。」


「嘘よ、千奈の呪剣は私の魔力を込めてる。そう簡単にレジスト出来るわけないわ。」


マナスが呪術師に反論する。

そうだった。マナスは千奈ちゃんの魔力バッテリーとしての役割もできるんだった。確かに2人の魔力を合わせたら怜の魔力量すら軽く越すくらいにはあるはずだ。


「そこはこの体が特別なんやけど・・・そんなことは今はええ。3人まとめて倒して連れてくだけや。【混妖狐紺】」


化紺先輩の身体から紫色の魔力が溢れてくる。ゆらゆらと揺らめきながら周囲に満ちていく。

黒い尻尾を9本揺らし立っている呪術師の背後に紫色の炎が大量に現れる。


「【狐火】」


一斉に紫色の炎を飛ばしてくる。まずい、まだ魔力が回復できてない!怜は!?いや、炎とは相性が悪い。


「【強奪の魔刃・大楯】!皆さんこの盾に隠れて!」


俺たちはマナスの出した黒い盾に隠れるが衝突する訳でもなく紫の炎は盾をすり抜けた・・・・・



後書き

新作を書き始めました!

日光浴がしたい私はダンジョンにもぐることにした。~吸血鬼になっちゃって全く日光浴ができません!?


https://kakuyomu.jp/works/16817330651540224663

ダンジョンものとなってるのでまた違った作風になる予定です!






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