4章130話 黄金色

(まずい、もうあの薙刀をどうにかする方法なんて思いつかないぞ!?)


取り敢えずあの薙刀がどんな性能なのか確かめないと。もしかしたらただの薙刀かもしれない!


「【血の雨ブラッドレイン】!からの【血の棘ブラッディホーン】」


(これの対処で見極める!もし凍らせてきたらどうしようもない!)


俺は怜が対処するところを観察し続ける。怜の間合いに雨と棘が入った。どうする?凍らせてくるのか、それとも避けるのか!

怜は―———避けた!!雨を避けながら棘を走りながら斬っている。

まだ勝機は俺にある!。そう確信して俺は再び接近する。


「雪華、樹刀!血を吸えッ」


俺は走りながら血に最大限の魔力を込める。チャンスは一度。これを防がれると戦える魔力はもうほとんどない!覚悟を決めろ。


「くっやっぱりこの薙刀じゃ……。」


「【凍血刀】【|鮮血武装・転鎧《ブラッディアーマー・リロード】!」


凍える冷気を放つ刀を右手に持ちながら鎧が足にだけ集まっていく。凝縮された鎧が俺の足を強化していく。今にもはち切れそうなくらいに荒ぶる魔力を何とか制御しながら怜に照準を定め、赤い流星のごとく突撃する。

逃げる暇すら与えずに怜の間合いまで踏み込んだ。


「【凍刃・血斬】ィィィイッ!」


(確実に決まる!ただの斬撃じゃこの技には勝てない!それこそ一槍凍界並みのパワーでもない限り————は?嘘だろ。)


俺の目には怜が一槍凍界を放つ姿勢になっていて薙刀から俺と似た冷気を放つ光景が見えてしまった。避けても凍らされる、打ち合っても最悪相殺される。俺には相殺するしか手がなかった。

お互いも技がぶつかり合って相殺された影響で周囲にまき散らされた俺と怜の魔力によって互いに後ろに吹っ飛ぶ。


(なんとか助かったけどまさかブラフだなんて……。【未来予測】もそれなりに使ってる。そろそろ魔力が切れてもおかしくない。五分五分ってところだけどまだ魔力を奪えてないから俺の方も結構やばいことに変わりはない……。残り少ない魔力でどうする!?)


「雪もそろそろ魔力切れ?さっきの技にほぼほぼの魔力を使ったみたいね。」


怜は薙刀に魔力を込めて近づいてくる。だけどさっきまで程の魔力は感じない。本当に絞り出した最後の魔力ぽいな。それなら俺も全身の魔力を雪華に集め、て、なんだ!?結界が黒く変色していく!?怜が何か……したわけじゃなさそうだ。


「怜!結界の様子がおかしい!試合を中断しよう。」


「そうね、明らかに異常事態だもの。一体どうしたのかしら……。」


同時刻——――


『おっと、まさかの怜選手ブラフです!まだ凍らせられることを隠していたっ。血桜選手の渾身の技が相殺されてしまった!あれ?急に会場が暗く……』


実況席の声広が会場の異変に気が付いた瞬間、会場にいる観客たちが倒れ始める。瞬く間に会場中で昏睡者が続出していった。その中には司や綾も例外ではなく、少し耐えるも昏睡する。


「始まった。マスター、結界の内部に侵入します。」


千奈が千奈らしくない口調で呟いたのち結界の傍によって内部に侵入していった。




「はぁっ!……駄目ね。全く効果がないみたい、全力で一槍凍界を放てればもしかしたら、ってところね。雪は?」


「私も同じような感じ。吸血で魔力を吸えないか試しても斬りつけても成果なし。もう外から解除されるのを待つしかないかな。」


俺がそう話し終えたとき結界の上部が不安定に揺れ動く。俺と怜は武器を構えて警戒する。すると見覚えがある黄金色の人物が落ちてくる。


「ふぎゃ!いたた。お?入れたみたいやな!おお、二人とも無事みたいやな。助けに来たで~?」


「「化紺先輩!?」」


何故か先輩が結界の上から落ちてきた。それにしても風呂とかで見かけたときより尻尾の数が多い。なんでだろう。


「試合観戦しとったらいきなり結界が真っ黒になってしもうて助けに行かなあかんと思うて来たんや。外はここよりひどいで。みんな昏睡しとる。何者かが会場全体にデバフをかけたみたいや。」


「そんな、みんな無事なんですか!?」


「問題はあらへん、眠っとるだけやからな。うちはそういうんのには耐性があるからな。結界に介入してきたっちゅうわけや。」


化紺先輩が話していると結界の側面部分がさっきみたいに揺れ始めた。誰が次は来るのかと思ったら千奈ちゃんだった。


「雪さん!怜姉!良かった無事で。あ、化紺先輩!先輩も来てたんですね?」


「千奈!どうしてここに?昏睡してる筈じゃ・・・。」


「私は呪いとかには耐性ができてるから。それよりも。はい、雪さんもこれをつけて。怜姉と同じ腕輪です。軽い呪い耐性を付けておきました。」


千奈ちゃんが腕輪をくれたので早速つける。


「よし、それじゃあここを出よう!千奈ちゃん、化紺先輩。出る方法は?・・・・・・化紺先輩?」


「【隷属の腕輪】発動。【動くな】」


急に身体の自由が効かなくなって俺は黒い鎖に捕まってしまう。怜も同じ状況みたいだ。身体をがんじがらめにされてうつ伏せに倒れる。


「化紺先輩!?一体なにを!」


「雪、この人は化紺先輩なんかじゃない!偽物よ!」


「そんなわけないでー?正真正銘化紺明那やで?・・・・・・この体はな!」


化紺先輩の毛が黒く染まっていく。いや、金色の塗装が剥がれていくの方が正しい気がする。


「ここまで侵入するの苦労したんやで?この身体の持ち主を堕とすんのは。あ、マナス腕輪ありがとうな!」


化紺先輩が千奈ちゃんに向かって礼をしていた。まさか、マナスが千奈ちゃんから出てこないのって!


「うちの呪いを使役しとったみたいやから使うことしにたんや。」


「まさかお前は怜に呪いを掛けた呪術師!?」


「やっと気がついたか。おぉ、その表情が見たかった!」


呪術師が現れたら倒すと意気込んでいた怜も俺も全く動けないまま最悪の再会を遂げたのだった。










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