4章129話 決勝戦 雪VS怜
『遂に長い選抜大会も今日でお終い。決勝戦です!この場で一年最強が決まります。対決するはこの二人!【銀嶺 怜】【血桜 雪】!』
俺は控え室の中で感慨深く上を向いて目を瞑る。
この前まで能力なんてなかったのにこんな所まで来てるなんて数ヶ月前の俺は信じないんだろうな。
「よし、行こう。」
俺は控え室を出て結界のある舞台に出ていく。
観客の歓声が徐々に大きくなっていくのを感じてより実感していく。
外に出て日光を浴びて眩しく感じる。会場の熱気も相まって凄く暑い。
『血を操り戦う
『一年生の頂点。これまでに倒してきたものたちの思いも背負って死力を尽くして出し切って欲しい。』
「私、あのデパートで出会った時にここまで雪と付き合う関係になると思わなかった。未来が見えてもわからないことってあるのね。」
怜は気合十分、眼をぎらつかせて俺に話しかけてくる。やる気満々って感じが凄く伝わってくる。
「私こそあの時あった人とここまで関わるなんて思わなかったよ。だからこの試合の結果も怜の思う
「未来は変えられるから強いのよ。私が思う未来を掴み取るわ。」
俺と怜は火花が散るくらい見つめ合う。
その火種を燃え上がらせるかのように審判が開始の号令をする。
「決勝戦【血桜 雪】対【銀嶺 怜】試合開始!!」
(最初から全開で行く!)
「樹刀、血を吸え雪華!【侵血刀】【凍血刀】」
雪華に授血効果を付与して右手で持つ。もう一振り左手に新しく手に入れた力、凍結する血で出来た血刀を持つ。
更に怜と打ち合うために鬼化する。
「【
(まだ【侵血】をするべきじゃない。もし怜に対策されたら魔力の無駄になる。)
俺が接近をしようと脚に力を入れた瞬間、怜の青い目が輝いた。
「【未来予測】!」
怜は薙刀に魔力を纏って準備していた。だけど俺は怜に向かって真っ直ぐ接近する。離れて遠距離攻撃しても全部撃ち落とされるからな。
「【
俺は走りながら背後から血の矢を大量に作り出して怜に飛ばす。怜を狙ったものじゃない。怜が動けなくさせてうざったいと思うことが目的。
「【波紋】」
怜は薙刀を振り払って前方の矢を全て凍らせた。あれで能力じゃないとか魔力量が綾の次に多いんだから凄いよな。
「でも隙は出来たッ【血斬】!」
怜が振り払った方向とは逆から一閃を喰らわせる。致命傷は与えられないにしても手傷は与えられた。そう思った矢先、目の前の怜がひび割れた。
「やられたっ!」
怜は薙刀を振り払ったと同時に氷で鏡を複数作って鏡像を見せてきてたんだ!
「【未来予測】【一槍凍界】」
既に俺に向かって大技を打つ体勢になってる!?これ喰らったら流石にタダじゃ済まない!
「【
避けられなくて後ろに跳んだが怜の薙刀から冷気が迸ってきた。
「・・・・・・ずらされた。一体どうやって?」
俺は何とか致命傷を避けることには成功し、結界の端の方にまで吹っ飛ばされたもののまだ戦える状態ではあった。だけどーーーー
「いたた・・・・・・左肩が凍ったか。読み合いで怜に勝てるわけないよね。」
(それでも接近戦をして情報を増やさないと一つ一つ怜に対処されてしまう。)
「さっきの雨・・・私の足元と薙刀を僅かに凍らせて致命傷を避けたのね?感触がおかしかったのはそのせい。」
「うん、それぐらいしか出来なかったけどね。」
怜の雰囲気が変化する。先ほどまでの静かな気配とは違ってまるで猛吹雪のような冷たくて激しい気配を感じる。
「【少し先の未来】」
来るッ!怜のペースに持ち込まれたら俺の負けだ。絶対に止めないと。
「【侵血】【爪鬼化】それと【
ツノを隠していた装甲も脱いで雪華を手に装着する。爪からは冷気が出ていて触れれば瞬時に凍結する。更に授血刀を地面に刺して周囲に血のフィールドを作り出す。
「【波紋】」
先ほど【
「【少し先の未来】・・・なるほどそういうこと。この血全てにあの凍る血が含まれているのね。氷冷耐性とでも言うのかしら?」
うわぁ、よく綾あそこまで怜を翻弄したなぁ!全部バレてるよ。
「反則だってそれ!さっき手に入れた力全部バレてるとか。」
「未来の私が代わりに凍ったんだからいいでしょ?それに。」
怜は薙刀を振り払う姿勢を取った。え、まさか。
「【一槍凍界】!凍らせることなら私の方が上よ。」
「はは、本当にどうやって勝てばいいんだ。」
考えろ、今持てる力でどうやって怜に勝つのか!綾みたいなジャミングは俺には無理だ!魔力切れを狙うったって吸血ができてないんだから先に切れるのはこっちだ。あの薙刀さえ無くなれば・・・・・・そうだ!
「【
「その技はもう効かないわよ。【波紋】」
怜は矢を凍らせようとする。しかし、その矢は・・・
「凍らない・・・!?」
あの血の矢には【
だから怜は必ず薙刀で防ぐ!
「硬く、ない?弾いた矢が薙刀から離れない!?」
血の粘度をかなり上げたその矢は怜の薙刀に引っ付いた。俺はその隙をついて矢を変形させて地面にくっつけて固定する。それに驚いた怜は薙刀を落としてしまう。その状態で薙刀を全て凍らせる。
『あーっと怜選手の薙刀が使えなくなってしまった!これでは血桜選手の攻撃を防げない!』
「怜姉こういう時ポンコツだからなぁ。いい意味でも悪い意味でも能力が優秀すぎてその後を見ないことがあるから。ーーーーでも、そのために私がいるんだよ。」
「ありがとう、千奈。お陰で私はまだ戦える。」
怜は急に腕輪から薙刀を取り出した。え、なんで?
「まさかの2本目があるなんて聞いてないんだけど!?なにその腕輪!?」
「千奈が昨日くれたのよ。腕輪型アイテムボックスよ。便利でしょ?」
嘘でしょ、せっかく薙刀を奪えたと思ったらまた出てきたんだけど?もうあの手は使えない!どうやって勝てばいいんだ・・・?
「ちょうどええなぁ、獲物が同じ場所にいるなんてうちへのご褒美みたいやわぁ。」
黄金色の尻尾を揺らしながら結界の制御装置の前にいる少女は笑みを浮かべてモニターを見ている。足元には制御装置を操作していた職員が倒れていた。
あとがき
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