傘凡百

Garm

晴に雨傘(intro)

 ある日彼女は、晴天の下で傘をさしていた。

 日傘ではなく雨傘を、である。


 怪訝な顔をして、私は彼女に尋ねた。

 何故雨傘なのだ、今は晴れだろう、と。


 彼女は少しの間もなくこう答えた。

 雨はいずれ降るから、そのときのために備えているの。


 私は首を傾げた。

 てっきり日傘の代わりだろうと高を括っていたからである。

 私が怪訝そうに彼女の顔を覗き込むその間も、彼女はただ瞬きをするのみであった。





 何故あのとき彼女が傘をさしたのかは分からない。

 ついでに、何故今この話を思い出したか、それもよく分からぬままだ。

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