rat rat ♯3
ささやかだったひととき。長い月日がサイモンを侵し縛りつけていた糸。エメはそれを悟って糸を手繰り紐解いてくれた。失っていたのだ。心の欠片、いや違う。もっと大切なものだ。
潤い満ちた感覚をそっと胸にしまい、寝室のベッドに身を投げた。暫く経っても、そわそわした感情が抑えられない。これ以上の言葉にできないナニか。けれど確かな予感がはっきりと感じ取れる。
自然、サイモンは人の気配を覚えた。扉に手をかけ限りなく静かな足取りで、サイモンの背後に歩み寄る。決して振り返らない。それが誰なのかはわかっている。
ベッドに腰掛け吐息を漏らす彼女は、自然とサイモンを後ろから抱きしめた。
しっとりと濡れた髪がうなじに触れ、甘くも爽やかさを帯びた香りが、サイモンの鼓動をゆっくり高めた。
静けさの中に満ちる緊張。エメは耳元で囁く。
「抱きしめて欲しい、……父さんの代わりに」
返す言葉が見つけられない。
静寂ではない、息苦しさとも違う。ただただ何も言えない、緊張としか表現できない沈黙が流れる。
エメはサイモンの心を感じとるように、抱きしめた手を解いて立ち上がった。
「ごめんなさい……こんなの間違ってるよね」
サイモンはスッと身を起こしエメの手を引いた。エメが与えてくれたものを少しでも返したい。だから気持ちが抑えられなかった。引いた手に力を込めそっとエメを抱きしめる。
鼻先が触れる距離。二人の吐息が混じり合い、二人は見つめあう。
サイモンはエメを抱きしめたまま、ベッドに身を預ける。かつて幼い娘にそうしたようにゆっくりと頭を撫ぜる。エメは確かに瞳を潤ませていた。サイモンが隠していたように喉を震わせるエメにもまた、見ぬ振りをしていた感情があった。
数刻の間、欠落を埋め合った二人は天井を見つめる。暖炉に再び飾られた写真と彼女が得られなかった父の記憶。二人は静かに添い合い満たされていた。
エメはふと強くサイモンを抱きしめる。予感。不思議な彼女の仕草に何かを感じた。
そしてエメは囁く。
「あなたって本当にロボットらしくない」
サイモンはその言葉が理解できなかった。いま、彼女は何と言った? 理解が追いつかないのに焦燥と不安が波のように押し寄せる。
「何を言った?」
「あなたの……こと」
「僕の……こと?」
僕のこと。ロボットらしくない。ようやく言葉を飲み込みサイモンは鳥肌が立った。
「僕はロボットなのか?」
「そう、あなたは……」
そんなことある筈がない。有り得ない……有り得ない言葉なのにサイモンの心に槍が突き立てられている。その槍は錆びついていて欠けた刃先が削りつけるように、深く、深く傷を抉る。
「本当のあなたを見て」
エメはそっと姿見を指差す。
割れた鏡に写った姿。それは人工皮膚にすら覆われていない、剥き出しの機械人形。モノアイのレンズが、意識に合わせてくるくると回っている。より近寄って顔を覗き込むと、毎日丁寧に剃り上げていた頬には、無数の引っ掻き傷が残っている。
サイモンは違和感を覚えた。なぜこの鏡は割れている?
よく見るとフローリングも傷つき床板も覗いている。壁紙が剥がれ落ち、ベッド越しの窓辺からは夜風が吹き付けていた。サイモンは割れた窓の破片を踏みつけている。痛みも流れで出た血の跡もない。
サイモンは走り出していた。信じたくない光景の連続に慄きながら。煤けた廊下にバタバタと足音が響く。
慌てて飛び出した家を、振り返る勇気が持てず、震える膝を叩いた。カンカンと金属を弾く音。揺れ動いている。抱き寄せたエメの姿に脈打った心臓の鼓動も、今は感じられない。多くのものが崩れ去ろうとしている。それは背後にある。
勇気と呼べるのかわからない感情を奮い、サイモンは振り返った。
我が家と思っていたものを見据える。窓は割れ落ち、周囲は黒く焦げた跡が見てとれる。半焼、屋根や壁は歪みポーチの揺り椅子は炭色だった。
サイモンが夢だと、幻覚だと頭を叩いてもカラ、カラと金属音が虚しく響く。ふと娘の写真が頭を過る。あれが真実のはず。ただ気がつかず焼け落ちた家に住んでいただけ。それも幻覚だ。体が金属に見えてしまうほど疲れているだけだ。
少し気が病んでいる。
そう言い聞かせサイモンは暖炉に駆け寄る。歪んだ床板に足を取られながら、それを手に取った。
写真立ての中には何も写されていなかった。空白。愛らしくこちらに微笑みかける少女はどこにもいない。
10年間その少女のことを思って生きてきた。働き暮らしてきた。それが目の前から姿を消した。
立ち尽くしていたサイモンは背後から抱き締められる。感情に任せ振り解いた腕を離さず問いかけた。
「俺は人間じゃないんだな?」
エメは寂しげに、ベッドでの憂いをたたえたまま答える。
「そう振る舞うように作られた存在」
「迎える家族なんて最初からいなかった?」
分かりきった質問。言葉にしなくとも自身の姿と写真立てが物語っている。
「その思い込みが言葉なくあなたたちを働かせる。そう設計された」
「そうなんだな……わかった……この家は好きにしてくれ」
サイモンは焼け焦げ崩れ去ろうとしている我が家から、歩き出す。喪失を前に上げられる悲鳴も人工声帯では錆びついている。でも、するべきことははっきりと解る。その情景がモノアイの内側に映っている。明瞭だ。サイモンにもう迷いはなかった。
エメという少女の姿はもうそこにはない。サイモンを見送ることもなく消えていなくなっていた。温もりや鮮やかな色、魅惑的にほほ笑んだ面影は、銀塩に焼き付けられていたのに。もうすべては過ぎ去っていた。
特急リニアに揺られ失った田園は遠く移ろい、チタニウム構造体の縁へと走る。白亜の構造世界を抜けて、静かに停車したホームに彼女はいた。黒衣の女性。形容できなかった雰囲気を称えた彼女。サイモンはそっと歩み寄り傍に腰掛ける。
「喪ったのですね」
俯いたまま彼女は頷く。弱々しく、白くか細いうなじ。黒衣が白銀世界で揺らめいていた。今のいままで感じとれなかった現実。それがはっきりと理解できる。重い沈黙を置いて、絞り出すような声音が言葉となって語り出す。
「夫と連絡がとれなくなって半月になります」
「……」
「いくら問うても何も返って来ません」
だからこうして……と。
彼女は地下へと階段を下る人々の中に、叶わない願いを探していた。
その言葉の重さに渦巻く感情。それはあまりにも痛く切ないものだった。女性はポツポツと言葉を続ける。
「娘たちには何も伝えていません」
自分もそうだった。この暗闇を語ることはできない。だがそれは嘘、偽り、欺きだった。彼女は震える手で指さす。
「あの階段の先で何が起きていたのか知っているのですね?」
知っている。サイモンの10年という時が描いた物語。殻に閉じこもり目を向けていなかったもの。それがいま、ようやく理解できる。嫌というほど。
彼女の愛した人が誰かは知らない。誰かという個が軽んじられているから。
サイモンは立ち上がり彼女を再び見据える。彼女も虚な瞳を投げかけ二人は視線を交わす。黒衣の女性は雫を一つ描きながら囁いた。
「全てを終わらせて貰えませんか?」
あぁ。その願いを受け取る覚悟。躊躇はない。恐れる必要もない。サイモンも欺かれていた。小さく頷いて階段を下る。この汚れを落とすのが自分の役目だったから。
薄暗く赤い回転灯が投げかける階段を早足で下る。サイモンは隊列を抜き去り観察ロボットに問いかける。ロボットは与えられた機能通りに人波を捌いていた。プログラムされた通りの感情のない目と声音で。
早足で歩み寄ったサイモンに彼は問いかける。
「サイモンさん、今日は非番となっていますが?」
問いかけを無視し澱んだ感情を、迷わず言葉に乗せる。
「昨日の事故の件数を教えてくれ」
「10件です。最近にしては多いですね。あまり良い傾向ではありません」
その殆どが配属されたばかりの工員が起こしたことは、今なら想像できる。サイモンは10年間その数字の意味を理解していなかった。それはあまりにも愚鈍だった。必要だと言い聞かせた鈍感さが、そうさせていた。
サイモンは笑いかけるようにロボットの肩を叩く。
「それは大変だったね」
大変だった。そんな言葉で片付けていいことじゃない。黒衣の彼女がそれを教えてくれた。
「大事な忘れ物があるんだ、通してもらっても良いかい?」
「ええ、構いませんよ。皆さんの邪魔にならないようになさってください」
ロボットとの間に信頼なんてない。いままでトラブルを起こしていなかったサイモンに加点があるわけもない。ロボットが見ているのは肉体的な健康状態だけだ。それが彼の役割でそれ以上、それ以下でもない。
セキュリティゲートを抜け、サイモンは真っ直ぐ自分のカーゴへと向かう。ドッキングベイのハンガー。相変わらず、カードと酒に熱中し、たむろする連中の姿があった。
背筋に嫌な予感が走った。澱んだ連中の視線。いやらしい笑みを浮かべ何かを待っている。
カーゴのスイッチをオン。ハッチに手をかけ回転鍵を回す。
そこにD18の姿はなかった……サイモンの中にあった一つの予感。抑えきれない気持ちを抱えD18の姿を探し求めた。そして確信に突き動かされながら、ふと目に留まった。ジャンクを押し込むダストボックス。
ボックスに手をかけ震える手で蓋を開く。中に詰め込まれていたのは、D18だったモノ。固い工具で叩きつけられ潰されたモノアイの頭部。四肢は引き千切られ、無理矢理に開かれた腹部の電子回路は、原型をとどめていなかった。
嘘と偽りに形作られた時の中で、唯一、彼だけに自意識、いや、心と呼べるものを打ち明けられていた。
それは失われた。10年の歳月をかけて共にした彼を取り戻すことは、もう叶わない。
そうなのだ。サイモンに失うものは、もう何もない。
突然、サイモンの足元でパリーンと甲高い音が響いた。ゆったりと振り返る。酒瓶をこちらへ投げ捨てた相手を、サイモンは初めて見据えた。
赤らめた頬を吊り上げ連中はげらげら笑っている。それはカードで負けたブービーメーカーの儀式。いままで何も感じず踏みつけてきたものの正体だ。
サイモンは酒瓶を踏みつける。何度も何度も。ジャリジャリと音を立て薄い足裏に、無数の破片が突き刺さる。
「失うものは何もない」
その言葉を聞いて男たちはサイモンに歩み寄った。
「ロボット君、どうしたんだい?」
沈黙で答える。男たちは鼻で笑い堪えきれない様子でサイモンを小突く。
「おいおい、とうとう壊れちまったか?」
「あぁ、そうさ。壊れたロボットだ。だから……」
「だから、何だよ」
だから、サイモンは掌を広げる。枝葉を伸ばすように広がる形状制御繊維。次第に男たちは絡みとられ、身動きさえ取れなくなる。震える瞳に恐怖が色づいた瞬間。男の顔面を握りつぶした。何が起きたか理解できない様子の男たちは、声も上げられない。瞬の間が流れ、男たちは腰を抜かし逃げまどう。
サイモンは男たちの背に手をかざす。形状制御繊維の螺旋は蜘蛛の巣となって解き放たれた。足元を絡め取られた男たちは腰を引きずり振り返る。恐怖に捉われた瞳をサイモンは見下ろし眺めた。
助けてくれ、俺たちが悪かった、だから。
だから、だ。サイモンは形状制御繊維の螺旋を研ぎ澄ませ、無数の枝先から鋭い切っ先を形作る。男たちの目先に迫る細長い針先。耐えきれず、言葉にならない悲鳴が木霊する。サイモンは貫いた。眼孔は抉られ、後頭部は破裂し砕け、脳は掻き乱される。骸が散らばり染まり切った不潔な血は床を赤黒く汚す。
形状制御繊維を引き抜き、サイモンはガラスが張りついた足で男たちの頭を踏み締めた。快感も憎悪もない。何も込み上げるものはない。汚れ切った音はもう消えていた。
「ここはコロニーで最も汚れていますから」そうだよD18。何かカラカラと回る音だけが聞こえてくる。
周囲からは人気が失せていた。工員たちの姿はない。ハンガーには淡々と警報が鳴り響いた。
血溜まりを踏み点々と汚れた足跡を残しながら、サイモンは大型作業艇へ向かう。
10年間、乗り慣れたコックピットで燃焼バーニアを立ち上げる。
「全てを終わらせてくれませんか?」その言葉がまたサイモンに過る。勿論だ。自分が全てを終わらせる。
バーニアに熱が入り、ドッキングベイから宇宙空間へとサイモンは飛び出す。燃料は十分だ。
サイモンは無数の星々が微かに輝く暗闇の世界を飛ぶ。向かうのは円筒世界の反対側、この世界の光輝く元。人々と無数の船が往来するメイン寄港地へ。
警備ロボットたちの追手が来る様子はなかった。
円筒世界の外縁を回り込み寄港地を前にサイモンは船を停める。高級客船やハイソな人々が乗る個人船は数えきれない。
そして振り返る。黒衣の彼女とD18が教えてくれた。ありがとう。君たちがいたから自分はここまで来れた。D18を喪うこともできなかった。彼女の告白。D18の姿が自分を突き動かし信じることができた。この正常さを。
サイモンは大型作業艇の最後のセットアップを終え、船を離れる。与圧服が自分に何の意味があるのかも、もうわからない。けれど最後は着慣れた服の中から全てを見届けたかった。
大型作業艇はバーニアを全開に港へと突き進んでゆく。船が耐えられない程のGに晒され、ボロボロと外装が剥がれていった。
船は個人船と客船を激しく巻き込む。自身に投げられた酒瓶が割れる光景が、リフレインする。大型作業艇は円筒世界の終焉に向かって進んでゆく。作業艇は放り投げられたガラス瓶。それを受けた船たちは小爆発を連鎖させる。メイン寄港地は崩れていった。ガラス瓶たちは華やかに砕けてゆく。
そしてボロボロの作業艇は最後の噴射の勢いに任せ、人工陽月へと向かって行った。膨大な熱エネルギー。緻密な設計と繊細な機構でコントロールするそこに。
無音の空間の中で響くことのない衝突音が、サイモンには、はっきり聞こえた。人々の叫び。崩れゆく人工陽月の軋みがありありと。
円筒世界は解き放たれた熱エネルギーに晒され、全ての生けるもの、住まう人々、鳥たちの囁きと静かな気配、いなないた馬たちの命も焼き尽くす。円筒世界は歪み、人口陽月は熱を帯びたコイルに似ている。円筒世界は歪みから自由で無数の亀裂が走り、次第に崩壊、宇宙へと砕けてゆく。
サイモンは全てを終わらせた。黒衣の女性と約束しD18が教えてくれた全てを。
思い出したのはエメのことだった。彼女がサイモンに与えてくれた色。明瞭で今まで感じることのできなかった鮮やかさ。あの時、覚えた本当の安らぎ。
彼女はそれが嘘偽りで欺瞞だと告げた。サイモンは家族という幻想を与えられた偽物。それを暴いてくれた彼女にもう一度会いたかった。どこか艶やかでありながらも屈託のない色に満ちた姿。それだけがサイモンにとっての真実だった。
ザザ、ザザ。唐突に耳元へ覚えのないノイズが聞こえてくる。それが次第にはっきりとした声だとサイモンの脳が認識した。
「サイモン……」
あの色鮮やかな声音、感度が不安定な中でもはっきり彼女だとわかる。私はエメ。エメだけが私の名前。
「嘘をついてごめんなさい」
「……嘘?」
「あなたはロボットじゃない。本物の家族も地球にいる」
「それは……本当……なのか?」
「本当……これを見て」
与圧服のスクリーンデバイスに一枚の写真が映し出される。愛娘の写真。あどけなく愛らしい笑みを向けてくれている。彼女のついた嘘だった。だが、それに安堵と安らぎを覚えた。
自分には本当は家族がいた。その真実。10年間、思いを募らせていたことに間違いはなかった。迎える場所は壊してしまったけど……エメの打ち明けてくれた優しさだけで十分だった。
「ありがとう……ありがとう……家族が…僕の家族は……確かにいたんだ」
迎える場所も帰る場所も失ってしまった、けど。囚われた鈍感、心の澱み。それをエメは教えてくれた。そして与えてくれた鮮やかさが自身を突き動かした。こうなるべくしてなった。後悔は、ない。終わりがサイモンには必要だったから。
宇宙の藻屑となった円筒世界の塵に包まれ抱かれながら、サイモンは静かに消えてゆく。
エメは小さくて、か細い声で静かに囁いた。
「これが私の役目なの」
「終わったな」
小劇場に一人の男が腰掛けていた。ガレイスという名の男。左手の通路沿い、中程の席が決まって彼のお気に入りだった。昔懐かしい縦書きの映画字幕が見やすいからだ。
男は満足気に浸っていたが、すぐ険しい顔つきで傍の女性に話しかける。
「エメは良い感じだけど、こんな辛気臭い主役じゃ客に受けないな。こんなロボットモノの定番に流れるなんて、ジャンル的必然性に寄りすぎてるんじゃないのか? なぁウリヤナ」
ウリヤナと呼ばれた女性は懐から紙巻きを取り出し、かちゃりとオイルライターに火を灯す。暗い劇場に赤い点が浮かぶ。息深く紫煙を燻らせた。
チェーンスモークを止めず、彼女は語り出す。
「注文ばかりだな、完成してから言いやがって。本当に気に入らねぇよプロデューサー様」
「そりゃあ、俺の仕事だからね」
溜息を吐きながらたっぷりと煙を吐き出す。彼女はうんざりしている。
「次回作は西部劇で頼むよ、レオーネみたいなのがいいな」
その言葉に答えずウリヤナは立ち上がった。話すだけアホくさい。毒づくのすら。
劇場裏手の倉庫に向かったウリヤナはさらにうんざりした。試写を終えた映画の後片付けが途方もない。心底、憂鬱な気分だ。紙巻きを革靴で踏み潰した。さっさと終わらせなきゃ次も撮れやしない。想像力を無限に実体化するエンジン。それが彼女の映画作りの根幹だ。
使い回せそうな劇中の小道具を実体からデータに置き換え、古びたトランクデバイスへ次々と放り込んでゆく。
ふと、目に留まった。劇中でサイモンと呼ばれたロボットの残骸だった。
二度と使うこともないそれを見つめるうち、サイモンは突然動き出した。
「僕の家族……家族はいたんだ……いたんだ」
彼女は呆れながら、見窄らしいサイモンの後頭部に手をかけた。メモリーカードをピッと抜きとり眺める。これはまだ使えそうだ。
「返して……返して……僕の家族がそこに……」
サイモンは足首を掴み必死に抵抗する。無駄に人格を与えすぎたな。こんなジャンクにもう用はない。必死な姿に苛々する気持ちを抑えきれず、ウリヤナは頭を蹴り上げた。
「ジャンクは大人しく眠ってな」
倉庫の端に転がり砕けたサイモンはもう二度と喋ることはなかった。〈了〉
rat rat 春葉節 @HALdesu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます