=3 =3 =3 =3 =3 =3 =3

 田中くんの意志は固く、新しく採用されたバイトくんに仕事を引き継ぎ、会社を去って行った。

 今では道路工事の現場にいるという。彼の体力なら向いているだろう。

 俺は新人バイトと一緒に、資料室の書類整理に汗を流している。

 ああ、田中くんの怪力が懐かしい。

 青空の下で働いている田中くん、俺にも力を分けてくれ。

「佐藤さん、ちょっとここ見てくださいよ」

 新人バイトくんが何かに気付いたように俺に話しかける。

 彼が指差すのはコンクリ打ちの壁、胸の高さほどの場所。


「……暗くて分かりにくいけど、なんか変じゃないですか?」


 よく見るとコンクリートの壁が、人間の手のひら二つ分ほど、陥没していた。

 俺は恐怖よりも感動で目が潤んだ。汗を拭くフリをしてごまかしたけどな。


                                            



                                               おしまい

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破っ 西川 旭 @beerman0726

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