7日目:最後の選択

 ようやく肩の荷が下りた。闘技場に転がる巨人の両腕が意味するもの。それは私の勝利だった。

 完全なる勝利。作戦が功を奏した。能力強化の薬漬けドーピングで、長剣を振り回すという荒業はあまり気に入らないが、しかし勝ちは勝ちだ。甘んじて受け入れるとしよう。

 トンネルの前には、巨人の上半身が横たわっていた。胸には長剣が深々と突き刺さっている。もう胸上町は消えてしまっただろうか。散々世話になっておきながら私は彼らをほうむり去った。いくら住民がロボットとはいえ、少し良心の呵責かしゃくを感じる。しかし他に島を出る手段がない以上、私にはどうしようもなかった。

 巨人は今にも息絶えそうだった。苦しそうにあえいでいる。せめてもの情けだ。できるだけ早くトドメを刺してやろう。私は短剣を構えると、巨人の鳥頭へと近づいていった。

 だが、そのとき思いもよらないことが起こった。巨人と目が合った瞬間、私の頭の中に声が流れ込んできたのだ。


『終わらせる者よ。我に挑みし者よ』

「!?」

『そなたには選択肢がある』

「なんだこれは。幻聴か?」

『幻聴ではない。そしてこの島もまぼろしではない』

「巨人よ。まさかお前が喋っているのか? お前は何者だ?」

『知りたいか? だが答えは失われた。この島にある全ての町が消えた今、その問いに答えられる者はいない』

「答えになってないぞ。巨人よ、私はお前に聞いているのだ」

『知りたければ、巡礼せよ。終わりなき島、永遠の時間を、何度でも繰り返し訪れて、を見つけ出すのだ。どうかあの子を……私の代わりに……』


 すると、とつぜん巨人の胸がボンと弾けた。長剣が宙を舞って、私の近くの地面に突き刺さる。

 何が起こったのか。見ると、巨人の胸元の傷が大きく開いていた。そこから光がれ出している。傷口を覗き込むと、巨人の心臓部に小さな砂時計が埋まっていた。それが光り輝いているのだ。


『それは“周回の砂時計”。時を巻き戻し、島をよみがえらせる。終わらせる者よ。そなたには選択肢がある。私の首をハネてこの島を去るか。それとも、その砂時計に触れて真実を求めるか。ふたつにひとつだ。好きな方を選ぶといい』


 そう言うと巨人は黙りこくってしまった。どうやら私は選ばなくてはならないようだ。

 たしかに、この島の謎は少し気になる。それは事実だ。だが、これ以上深入りするのは危険だと私の本能が告げていた。

 とくにこの巨人。こいつからは何か邪悪なものを感じる。人語を操る遺物の口車に乗るのは、あまり賢い考えとはいえないだろう。


 さあ、そろそろ決断の時だ。

 私が選んだ答えは……


////

  巨人の首を切り落とす

|>砂時計に触れる

////


 結局、どんなに自分をごまかしたところで、好奇心には勝てなかった。私は冒険者だ。外の世界をもっとよく知りたいと思って旅に出た。ゆえに、このような魅力的な状況には逆らえない。

 もちろん、これがマズい判断なのは薄々わかっている。この闘技場の隅に転がる白骨死体の数々。おそらくかれらも私と同じ選択をしたのだろう。己の力量を越えた冒険に挑み、無惨にも散っていった。

 一歩間違えれば、私もそうなるかもしれない。だが、この湧き上がる気持ちはもうどうにもできなかった。これは私にとっての試練だ。死線をくぐり抜け、武人としてさらなる高みを目指すチャンスなのだ。


 さて、鬼が出るか蛇が出るか。ひとつこいつを試してみよう。

 私は生ツバを飲み込むと、覚悟を決めて、その小さな砂時計に手を伸ばした。




【エンディング2:飽くなき好奇心】




>古い塔の『南京錠』がひとつ解除されました。

>図書館の『特別資料室(1)』が一般公開されました。

>右足町の森には『変異生物』が一匹隠れているようです。

>そして……

>守護者の巨人は、よりその凶悪さを増し……

>あなたの再訪を心待ちにしています。


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 再スタート(二周目)

 タイトルに戻る

|>ゲーム終了

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終わりなき島と守護者の巨人 弐刀堕楽 @twocamels

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