第6話

 いよいよ戦闘


 の前に、コノルは敵の分析を行う。


 眼前には背中に羽根の生えた緑色の小さな蛇が3匹飛んでいた。


「あの空飛ぶ蛇を3匹倒せば4界に戻れる。丁度3匹、他にはいないわね。よし!【ヒーリングライト】!」


 コノルが刺の付いたハンマーを上に掲げるとコノルと黒猫の身体が黄緑色に光る。


 コノルが今使ったのは、30秒継続回復する全体回復魔法で、これさえ掛けておけばダメージを受けても直ぐに回復出来る。


 何故戦闘前に掛けたのかは戦闘前に掛ける事で詠唱時間とRTの無防備状態を考えないでいいからだ。


 しかし時間は30秒からRTを引いて残り25秒。


 それまでに戦闘を終えないと、回復バフが消えた状態で蛇と戦わなければいけないので急がないといけない。


 しかしそこはコノルも長年の経験があるので、作戦を立ててスムーズに倒せるビジョンを思い浮かばせていた。


 作戦は完璧!


「よし!いくよ猫さん!バックアタック決めて敵を1匹気絶させるから私の後に続いてもう1匹を攻撃――」


「のじゃあああ!」シュバッ!


 しかし、コノルが頭に思い描いていた作戦を指示する前に黒猫は勝手に突撃する。


 スカッ


 しかも黒猫の渾身の攻撃は見事に宙を切って外れ、3体の空を飛ぶ蛇はコノルと黒猫の存在に気付き、バックアタックは失敗。


 バックアタックとは、雑魚モンスターに気付かれずに後ろから攻撃を当てたらその雑魚モンスターを数秒間気絶状態に出来るシステム。気付かれた状態で後ろから殴っても気絶にはならないので最初しか使えない戦法である。


 その最初が肝心な作戦でヘマをする黒猫。


 コノルの勝利へのビジョンは一瞬で崩れ去る。


「のじゃああああ!?助けてコノリュウウウウ!?」


 そしてあの一瞬で黒猫は、HPをレッドゲージ手前のイエローゲージに変えながらコノルの元へ敵を連れて戻ってくる。しかも頭をちょいちょい空飛ぶ蛇につつかれながら。


 たった数秒で出来上がる間抜けな光景に言葉を失いながらも、コノルは黒猫を後ろに庇ってハンマーを前に出してモンスターを牽制する。


「何でいつも最後まで聞かないのよ!」


「倒せれば万事解決なのじゃ」


「倒せてない上にピンチに陥ってるのに気付いてた?まったく……【二連打撃】!」


 コノルは2匹のモンスターにそれぞれ一発ずつ攻撃を当てて遠くに吹き飛ばす。


 3匹同時の相手がキツいから、無理やり2匹を引き離したのだ。


 戻ってくる前に1匹は狩る!


 RTで1秒動けないコノルは蛇のしっぽ攻撃を受ける。


 バチーン


「痛っ!?やったわねぇ!【回弾撃】!」


 コノルは3回転しながらハンマーを蛇に3度当て最後におもいっきり振りかぶった一撃を蛇に浴びせる。


 ガコンッ!


 キシャー!


 それでも蛇は倒せず、さっき吹き飛ばした蛇2匹も戻ってきた。


(これはリキャストタイム3秒だからマズイ!やるタイミングミスった!ボコ殴られる!)


 3匹の攻撃が同時にコノルを襲う、と思ってたら黒猫が前に出て盾になろうとしていた。


「ちょっと猫さん!?私はまだ攻撃耐えられるけど猫さんはイエローゲージでしょ!!前に出ちゃダメだってば!!死んじゃうよ!!」


「コノルはわたしゃが守ると誓ったのじゃあ!」


 そう言いながら黒猫は目を瞑って敵の攻撃を怯えながら待つ。



 …………



 しかし待てども待てども、攻撃が来ないので黒猫はゆっくり目を開ける。


 するとそこには、空を飛ぶ蛇が全滅して光の泡となり消えている光景が。


「……のじゃぁ……わたしゃがやったのかの?」


 その状況に、黒猫は首を傾げる。



「違うに決まってんだろ。俺だよ。たく…情報屋に助けられるプレイヤーとか、多分お前らくらいだぞ?休息界の雑魚相手に死闘って……何がしたいんだよお前らは?」


 そう言ってコノルと黒猫の後ろから、デカイブーメランを手に持った小さな桃色の髪をした褐色の女の子が近付いてきた。

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