第5話

 ペラッ……


 ―――


 今さらだが【始まりの庭】について解説しよう。


 【始まりの庭】の時間概念について、まずこの世界での体感の1時間は、現実の1分に相当する。つまりいくらインしていてもリアルでの時間はかなり遅く進むので時間を気にする必要はない。そして朝昼晩とがあるのでリアル感のある生活が送れる。


 キャラの姿に関して


 見た目や顔立ちは大なり小なりリアルに近い姿。


 髪型や髪色、肌の色は自由にクリエイトして変更する事が可能。身長は変えられない。あと体重に関してはゲームの適正基準(300kg)以上ならば適正基準ギリギリの体重だと思われる姿へと強制的に変更される。登録した時の姿が反映されるので、リアルで登録した後に整形して見た目が大きく変わってもゲーム内のキャラは登録時の姿のままで変わらない。


 続いての説明だが


 ここはゲームの世界。


 つまり能力値がある。


 まずは基本的な能力値名称について。


【Lv】キャラレベル。上がればステータス能力が全て上がり、更に1Lv上がる毎にボーナスで3ポイントだけ、どのステータス能力を上げるか任意に選べる。レベルが高いと装備Lvの高い物を装備出来たり、適正Lv以外入れない場所にも入れる。つまり高い程恩恵がデカい。上げるにはモンスターを倒す等すると経験値が貰えてLvを上げられる。上限は設定されていないが、Lvが上がれば上がる程レベルアップしにくくなり、モンスター自体から貰える経験値は凄く微量なので【始まりの楽園】では50Lv超えてると相当強い人だという認識になっている


【HP】ヒットポイント。いわゆる体力だ。この世界では攻撃を受けると現実と同じように体に傷が付いたり骨が折れたりするが、痛みはかなり軽減されており、傷を負うといってもその判定も甘く設定されている。更にこのHPがある限り死なないのが現実とこの世界との違いだ。


 そしてこのHPが0になってもすぐには死なない。それはHPが0になっても10分以内に蘇生魔法や蘇生アイテムを使えば復活できるようになっているからだ。結構優しい仕様である。


 そしてHP0で倒れて復活待ちのプレイヤーは敵の攻撃を一切受け付けないようになっている。


 しかし10分の時間を越えたら復活は出来ない。10分を越えなければ蘇生は何度でも使える。※HP0になったプレイヤーは攻撃やアイテムの使用やメニュー画面は開けないので、復活は1人では出来ず、近くの人に復活させてもらわなければならない。


 傷や骨折等外傷は、別で用意されている外傷を回復させる魔法やアイテムや時間経過でしか治せないので、ゾンビ戦法(死んでは復活して攻撃し続ける戦法)等はあまり使えない。ちなみに首を飛ばされたり、身体が原型を失くした状態でのダウンはシステムが即死と判断するため10分の猶予関係なく死亡になる。だから外傷等も少しは注意した方がよい。


 ちなみにHPは普段緑色で表示されているが、半分も切ると黄色に変わり、全体の10%を切ると赤色になる。俗にそれをグリーンゲージ、イエローゲージ、レッドゲージと呼ぶ。


【SP】スキルポイント。強力な攻撃スキルや魔法を放つのに使うポイントで、使えばそれに応じた量が減り、その場で動かず10秒経過したら自動で1秒度に1ずつ回復していく仕様。回復が始まったら動いても回復し続けるので、回復させたいなら10秒だけ待てば良いが、回復途中でSPを使用すると回復は止まる。


【AT】アタック。攻撃力。モンスターや他のプレイヤーへのダメージに大きく影響するパラメーター。


【DF】デフェンス。防御力。モンスターや他のプレイヤーからのダメージを軽減するのに大きく影響するパラメーター。


【MG】マジック。魔法力。魔法の攻撃力や魔法に対する防御力に大きく影響するパラメーター。


【AG】アジリティ。素早さ。走る速度や攻撃速度、反応速度等、速さに影響を与えるパラメーター。回避等にも大きく影響する。


【LC】ラック。運。会心攻撃と呼ばれる攻撃に加算されるボーナスダメージ等を出しやすくするためのパラメーター。これが高いとボーナスダメージの他にも、ギャンブルが強くなるとか、ピンチ時に敵に狙われにくくなるとか、鍛冶や商売や料理が上手くいきやすくなる等、運に左右される部分に強くなれる。


【RT】リキャストタイム。攻撃スキルや魔法を使用したら、一部を除いて身体が硬直して動けなくなる仕様である。それがRT。これは強力な攻撃がバンバン放てないようにして、プレイヤーが敵の隙を見つけたりどのタイミングで攻撃スキルや魔法を放てばいいか等の戦術を考えるために設けられたシステムである。


 硬直時間は攻撃スキルや魔法の効果で変わるが大体1~6秒が一般的だと言われている。


【SG】スペシャルゲージ。【始まりの庭】特有のパラメーターで、最初は0だが攻撃を当てていくと溜まっていき100が最大値で、100なればその全ゲージを使用して攻撃スキルや魔法が打てる。SGで打てる攻撃スキルや魔法は予め設定した1つしか出せない。SGで放った攻撃スキルや魔法はRTを完全に無視して放てる上に、威力が1.5倍に上がる為、かなり重要なシステムである。


 以上が能力値に対する説明だ。


 次に【始まりの庭】の用語について。


【○○界】フィールドの名称で、1界から始まり全部で1000界ある。1界1界はオープンワールド形式で広さは全て日本の琵琶湖並みである。しかし最初の界だけは四国並に大きく設定されている。これはプレイヤーが多い事を考慮しての処置である。


 そして、25界度に敵が弱く敵の数も少ない【休息界】と呼ばれる界が存在する。


【ポータル】界間の移動や、同じ界に置かれているポータルへの移動を可能にする物。つまり移動を楽にするシステム。移動には素材が必要で、その素材は現在いる界のモンスターから取れる。上の界ほど必要量が多くなる為、市場では素材がよく売られていたりする。


 ポータルの形は様々で、主に(社)(神社)(祭壇)(祠)等の形で薄い翠色のオーラを纏っている。


【界ボス】それぞれの界にいるボス。これを倒すと界の中央に光の柱が上がり、界の各場所に置かれているポータルと呼ばれるものを使用する事で次の界へと旅立てる。


 ボスはある条件を達成する事で現れるが、その条件を探すのに苦労し、条件を達成して現れたボスも強いため攻略はなかなか進まないのが今の現状である。


【スキル】一般にSPを消費する攻撃スキル等がそう呼ばれている。攻撃スキルはいくつも覚える事が出きるが戦闘で使用できるのは4つまでとなっており、プレイヤーは自分に一番合っている攻撃スキルを4つセットしている。SGの登録設定を行う場合、この4つから選ばなければならない。


 攻撃スキルの中には、その人物しか使えない特殊な攻撃スキルがあり、それは【オリジナル攻撃スキル】と呼ばれている。


 普通の攻撃スキルの習得は、レベルアップやクエストの報酬で覚えたり、アイテムで覚えたり出来るが、【オリジナル攻撃スキル】の覚え方は特殊で、その方法はその人物が攻撃パターン等を独自に開発して【始まりの庭】のゲームシステムがそれを公式だと認識した際に覚えられるので他の人が覚える事はできない。


 更に付与効果も付く為【オリジナル攻撃スキル】はかなり強力である。


 その他にも選ばれた人間しか発動出来ない【特異スキル】と呼ばれるものがある。


 【特異スキル】はかなり強力で


 1つ持っていれば超人。


 2つ持っていれば英雄。


 3つ持っていれば神人。


 と呼ばれ、全プレイヤーでも数百人しかいないとされている。特異スキルは3つ以上は持てない仕様になっているが一つだけでも戦闘はかなり楽になり、神人1人いれば界のボスと渡り合えるだけの力がもてると言われている。


 攻略ギルドに所属している【攻略の希望 ライト】はその1人である。


【魔法】主に回復や、遠距離攻撃、バフ、デバフなどをSPを消費して放つ技。魔法を放つには詠唱が必要な場合もあり、RTと合わせるとかなり時間を取る為、後方の安全な位置からの支援攻撃が主になる技である。これも攻撃スキルと同じセット内で4つまでセット出来る。攻撃スキルがない人は攻撃スキルをセットせず魔法だけをセットして戦う人も多いが基本は攻撃スキルを3つ、魔法を1つセットするのがオーソドックスとなっている


【PK】プレイヤーキラー。プレイヤーのHPを0にするプレイヤーの事。0にして剥ぎ取れる装備やアイテムは、現在装備されている他の人からも見える物に限られており、メニューのアイテム欄に置いてあるものは取れない上に、経験値は極少のためメリットはほぼない。誤って1人PKしても何もないが、故意にPKを行う事や時間を置かずに2人目をPKすると自身の上に表示されている自身の名前の表示が黒く濁る。そうなればゲーム内での生き方や立ち振舞いが難しくなるため、名前の表示が黒く変わるのはかなり大きなペナルティであり一般には【黒表示】と言われている。


【PvP】プレイヤー同士の決闘の事。PKと違い、PvP機能中は相手を倒しても死なないし、傷も負わず痛みもない。倒しても黒表示のペナルティもない。決闘前に勝敗によるアイテム譲渡やスキル使用制限、制限時間等細かい点も設定出来る。


【黒表示】【赤表示】


 先程にあったように【黒表示】は公式の場でない場面でPKを行う事でプレイヤー名が黒になる事をいう。あらゆるペナルティを伴う。【黒表示】を解除するには長い時間経過しかない。


【赤表示】は窃盗や器物損壊等軽微な犯罪紛いの事を何十回と行うとプレイヤー名が赤で表示される事をいう。【黒表示】ほどではないが軽微なペナルティを伴う。【赤表示】を解除するには時間の経過か、特定の人に弁償したり賠償金を払うなどの特定の行為を行う事で解除される。


【ギルド】一般ギルド、公共ギルド、攻略ギルドがあり


 一般ギルドは主に集まりたい人達が集まって好きなことをやるギルドで基本自由である。物品販売や飲食店、宿屋、建築関係のギルド等もここに入る。


 公共ギルドは警備や病院等の役割を果たすギルドで、一般人が依頼を出しその依頼を他の人に斡旋する依頼屋もここに入る。一応警察みたいな犯罪者を取り締まるものもあるが、現実と違い一般人が運営しているので機能してるとは言い難い。


 攻略ギルドは界の攻略を主とし、界の偵察、作戦会議、最適なチーム編成、拠点作り、ボスの捜索等様々な事を行う。


【ゴルド】【始まりの庭】の貨幣名称。1ゴルド=1円の認識でOK。手に入れ方は主にモンスターを倒した時に手に入る。しかしモンスターが倒せない人達は商売で稼ぐ。


 モンスターを倒し続ければ世界にお金が溢れかえると思われそうだが、転移や、鍛冶や、アイテム作成等にもお金が必要となり、それは誰の手にも渡ることなく消滅するため、「貨幣の価値が下がって商売人がいなくなる」等の事はない。無論NPCからのアイテム購入もお金は誰の手に渡ることなく消失する。


【始まりの庭】の役職


 最初に選択できるもので自身のパラメーターに影響を与える。役職にもレベルはありキャラレベルとは別扱いになる。


 基本はメインとサブで役職は2つしか選べない。2つの役職を変更したい時、神殿と呼ばれる所で変更をする事は出来るが、そうすれば現在のキャラレベルから-20、役職レベルを-10のペナルティを受ける為ほとんどの人が役職を変更しない。


 しかし役職レベルが上がると最初の役職から隠された上位役職にクラスアップ出来る。上位役職の解放条件は1人1人違う上に同じ上位役職になるのは稀である為、高レベルプレイヤーは皆バラバラの役職である。役職レベルの上げ方は判明していないが、おそらくキャラレベルと同じと思われる。



 選べる最初の役職一覧


【剣士】剣と盾を装備できるバランス型

【戦士】斧を装備できる攻撃型

【傭兵】槍と盾を装備できる防御型

【盗賊】短剣を装備できるスピード型

【魔法使い】魔法を使う支援型

【弓使い】短剣と遠距離武器を装備できる遠距離型


 これらが【始まりの庭】のゲームの攻略webで書かれている情報である。


 いやーここまで纏めたらこの本も売れるかな?


 ―――



 パタン……


 ポイッ!


 その最後の文章を読み終えると、黒猫は手に持ってる本を閉じてゴミ箱に放り投げる。


 ガコンッとゴミ箱にジャストインする。


「ちょっと何してるの?」


「ゴミが落ちておったから元に戻しておいたのじゃ」


「そう。そろそろ敵に遭遇するよ。武器構えて」


 スッ……と黒猫は道端に落ちている木の棒を拾って構える。



『【木の棒】片手剣 打 攻撃力+1』



「……ねぇ待って……ちょっと待って……この前買った【冒険者の剣】は?」


「…………」


「捨てたわね」


「重かったし邪魔だったのじゃ」


「バカなの?」


 バシンッとコノルは黒猫の頭を叩く。


 売るとか盗まれたとか落としたとかならまだ分かる。



 捨てる。



 一番選択肢として有り得ない。


 それを当たり前の様にする黒猫にコノル呆れながら自分のサブ武器を黒猫に渡す。


『【冒険者の短剣】短剣 斬 攻撃力+50』


「次捨てたら武器で殴り付けるからね」


「了解じゃ♪」


 気楽に答える黒猫はほっといて、コノルは目の前でメニュー画面を開くとピッピッピッと画面を押して武器を選択する。


『【枝千しせんのハンマー】片手混 打 攻撃力+160』


 パシッと、コノルは目の前に現れた、針を生やしたようなデカイハンマーを手に取る。


「……絶対捨てぬ」


 黒猫はコハルのトゲトゲしい武器を見て震えながら自分に言い聞かせるように呟いた。

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