冬の日、4人は二つの世界で
雫石わか
第1話「山の中にある神社にて」
「みんな集まったようだし、そろそろ行く?」
冬の日の昼頃、4人の中学生が公園に集まっていた。今は13時ぐらいだが、外は冷蔵庫の中のような寒さで、大晦日の前日ということもあり4人以外に公園に人はいない。
4人ともしっかりと厚着をしていて、防寒対策はばっちりだ。
「そうだね、はやくしないと夕方になって暗くなっちゃうもんね。冬は日が沈むのが早いから」
そういうのは優しそうな目をしたポニーテールの少女、アカネ。
「だな。寒いし、早く動いて体あっためてぇ」
ところどころいい感じにはねている黒髪が特徴のクロトが身震いをしながらいう。
「…」
声には出さないが、ネックウォーマーに顔をうずめながらものすごい勢いで頷くシン。
「そうね、じゃあ出発!go!」
みんなの先頭に立つのはサラサラのロングヘア(茶髪)とぱっちりした目が印象的なミオ。
幼なじみである4人は今、近くの山の中にある神社に向かっている。
4人が小学校低学年の頃、山で遊んでいた時に迷子になり、そのときに神社を見つけた。木々の中にひっそりと佇み、神主もおらず、手入れもされていなかったが独特な雰囲気を放っていた。しかし、突然現れた彼らを追い払うような空気はなく、むしろ歓迎してくれているような空気だった。それを感じ取り、それ以降、4人はその神社でよく遊ぶようになった。時々掃除をしたりもした。だが、普通の人では絶対に迷子になるような道のりで、4人以外に人が訪れることはなかった。子供だったからこそ見つけられた、秘密の場所だった。
4人はいつもお世話になっている神社に毎年、大晦日の前日にお参りに行くのが恒例となっていた。大晦日当日はそれぞれ家で用事がある為、前日にくることにしている。
「アカネー、足元気を付けてね」
ミオは全体のまとめ役で世話焼きだ。すごく頼りになれる。
「ミオ、心配しなくても大丈夫だよ。昔は毎日来てたんだから!」
アカネはそういうが、おっちょこちょいなところがあるので危なっかしい。
そして、そんな二人の足元を照らすシン。
彼は口数は少ないが、意外とやんちゃで気遣いのできる男子だ。
「確かに少し暗いな。シン、お前も気をつけろよ」
クロトも周りをよく見ていて、顔は似ていないがシンとは兄弟のようなところがある。
「…クロトも」
山といってもそこまで傾斜はきつくないが、神社に行く道のりはくねくねしていて、道になっていないところを通るので、少し危ない。だが、小さいころからずっと通っている4人はすいすいと登っていく。(アカネはたまにこける)
山の中に小さな洞窟のようなところがあり、そこの中を通り、階段を降りるとひらけた場所に着き、そこに神社がある。一体どうしてこんなところに神社をつくったのかといつも疑問に思うアカネであった。
洞窟の中を歩いている時、下…神社の方に青い光が見えた。
「え、なにあれ?」
「あそこって神社のところだよね」
「まさか人がいるのか!?」
「人魂?」
シンの言葉に体をビクッとさせるミオと、目を輝かせるアカネとクロト。
二人は顔を見合わせて頷きあい、
「「Let's go!!」」
と叫んですごいスピードで洞窟の中を走って行った。
「ちょ、アカネ!クロトォ!私を置いてかないえよ!」
走り去る二人に手を伸ばすミオに背を向けて肩を揺らしていたシンは、ミオにぎろりと睨まれた。
「シンのせいだからね!人魂とかいうから!」
「フッ…怖がり」
「今鼻で笑ったでしょ!?笑うな!あと、べべ別に?怖くなんかないし!」
そんなミオをほほえましい目で見るシン。
「とにかく二人の後を追おう。絶対に離れて先行ったりしないでよね!?」
「りょーかい」
しかし二人が神社についたが、そこは全く違う場所のようだった。
「空の色が‥‥」
「…ピンク?」
さっきまで晴れていたのに、こんなに急に変わるはずない。二人はすぐにここがあの神社で会って、そうでない場所だということを悟った。
二人の頭上に広がる空は、薄いピンクと紫、オレンジが溶け合ったような色をしていた。夕方っぽいが時間的にありえないし少し妙だった。
「二人は?それに私たちはどこに来たの?」
同じころ、アカネとクロトは神社にいた。
ミオたちとは反対で、二人の頭上に広がる空は色がなかった。
「空が灰色?白っぽい所もあるし黒っぽいところも…」
「でも雨雲って感じじゃねえよな。なんか…別世界っていうか‥‥」
「そういえばミオたち遅くない?それに…」
アカネが震えた声でいう。
「姿が…ないんだけど」
「…やっぱりそうか。俺の気のせいじゃなかったのか」
二人は神社の鳥居を見つめてつぶやく。
「「ここは…どこ?」」
それぞれの場所、それぞれの二人の前にある神社。境内にはには髪色が反対なだけで、顔がそっくりの少女が、青いランプをもって、立っていた。
冬の日、4人は二つの世界で 雫石わか @aonomahoroba0503
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