②
蝉がけたましく鳴り響く夏の頃。
一人の少年が勉強机の前でなにやら唸っていた。暑さもあってか少年の怒りが爆発した。
「夏休みの宿題が終わらない~!! こんなときに、ユーキはなにやっているんだ!!」
ユーキとは少年の双子の兄だ。ユーキはアイスを買いに出かけているが、あまりにも帰ってくるのが遅く、夏休みもあと一週間と切ったことからいらだちと焦りが募っていた。
「ただいま~アイス買ってきたよ」
扉を開けたら少年は軽く飛んだ。少年はなぜか扉の前におり、ユーキが扉を開けると同時に吹き飛ばされたようだ。内開きの扉にはよくある光景だ。相手が扉の前で開こうとしているときに相手が知らず開けるとぶつかってしまう現象のことだ。少年が吹き飛び、倒れている姿を見てだらけていると思ったユーキが「暑い中アイスを買いに行ったのに、眠っているとはどういうわけか?」とあきれてしまっていた。
そんなことをしていると、突如窓の外で白く閃光が走った。
「い、隕石だぁあああ!!」
慌てるかのようにアイスを放り出し外へ駆け出してしまうユーキに少年は一人取り残されてしまった。
外へ出ると街中はパニックに放っておらず、隕石が落ちたにもかかわらず砂埃どころか煙さえ見えない。携帯でニュースを見るが特に変化がない。どういうこっちゃ?
隕石が落ちたであろう場所に向かってユーキは走る。そこにいたのは友達が立っていた。
「奇妙な石を拾ったぜ」
小太りした少年が言った。名はコウチャ。ガキ大将にして喧嘩早い少年だ。
「不思議な模様ね、なんの模様かしら」
ユーキの友達でコウチャが密かに狙っている少女だ。名はシズネ。
「この形、似ているね。合わせてみようぜ」
背は低いが何かしらと金持ち自慢するドラ息子だ。名はソータ。
友達同士石を合わせるとカチリという音と共に光の柱が立ち上った。友達を覆うようにして辺り一面を白い閃光に包み込まれる。それと同時にベキベキ、メリメリという音と共に地面が激しく揺れた。空がまるでエレベーターかのように下へ下へと降りていく。青空がいつの間にか銀河系の彼方へと変わった。
「え、宇宙…?」
宇宙の中にいる。それだけじゃないなぜか息ができる。宇宙に出たのなら真っ先に空気がなくなるはずだ。それが空気は残ったうえ、激しい地震が起きたはずが建物や道など壊れた形跡もない。
「あ、あれに吸い込まれているのか!?」
ユーキがいるこの場所が赤い星に吸い込まれていくかのようにその星に向かっていっている。重力に引っ張られているのかそれとも誰かが操作をしているのかわからないが、この場所があの赤い星に向かっていることだけはわかる。
「墜落しちゃうよ~!!」
慌てるも街にいるはずの大人たちは出てこない。それどころか警察や自衛隊さえ出てこない。異常現象が起きているにもかかわらずだ。ユーキは急いで家に帰る。家に残していた双子の弟ユートのことが心配だったからだ。
家に帰ると同時にズズーンと音が鳴った。長らく揺れたが建物が倒れたりヒビが入った形跡はなかった。何かしらの力で守れているかのようだった。
それから家にいたユートと再会し、外で何が起きているのか探るため外へ出ると、玄関前でスライムに包まれた少年が立っていた。少年は息をしているようだが意識がないようでこちらから声をかけても反応しない。
「なにが起きているんだ?」
「分からない。わからないよ」
そんな折、空からなにかが降りてきた。それは蝶々の羽を生やした妖精のような生き物だった。体はボールのようで丸く羽は蝶々のように可憐だった。丸いボールには人間と同じように目と口があり、こちらの言葉がわかるように話しかけてきた。
「初めまして私たちはリチュといいます」
短編集 黒白 黎 @KurosihiroRei
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