ノモタシクナ

影神

ゲーム



俺がまだ中学生だった頃の話、、



誰しもが1度は必ず通るであろう、


まじない的な儀式が、うちの学校でも流行った。



それはとあるサイトの掲示板に掲載されていたのだった。



なんでも。


昔に失くしてしまった、"大切なモノ"が戻ると言う、


何処にでもある様なとても魅力的な儀式でもあった。



だが。。


不安定な若さは、根性を見せる為に。


自分が、ビビりでは無い事を証明する為に。



まだ考えの浅い彼等は。


訳も分からないこのゲームへと。


参加してしまったのだった。



一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一


これは、単純な鬼ごっこだ。


参加者は、無論。逃げる側である。



この儀式に参加するに当たって。


例え参加者等に、何らかの"事故"が起こっても。


例え、"掴まってしまった"場合であっても。



例え、



『帰って来れなくても』



私は、一切の責任を取る事は無い。



全て自己責任で行い。


あくまでもゲーム感覚で楽しめる者にのみ。


儀式の参加をお奨めする、、



詳しい内容は下記へ。



この儀式をするにあたっては、必ず扉が2ヵ所以上の場所で。


参加者以外には誰も居ない時にやる。



1.扉の上に、入と出の書いた文字の紙を貼る。


下記のこの画像を印刷して。



画像file.



2.生肉と、参加者の爪。


参加者の髪の毛を包んで、部屋の中央に置く。



そしたら完全に布団の中に入って目を閉じる。


「ノモタシクナ、ノモタシクナ、ノモタシクナ」


と3回唱え。


深く深呼吸すると、彼等の居る場所へと飛ばされる。



そこは古いお城の様な場所だった。


私は"奴"から無事逃げて帰って来れた。



そして、私の大切な"宝物"は戻って来た。


多人数でやる場合。


必ず人数分の"出"を貼る。



2人の場合は、入。出が2つなので、


扉が3つ以上ある所ならば可能だ。



説明は以上だ。


ひとつだけ。


成功者としてアドバイスするのならば。



"彼等はとても耳が良い"



だから決して音を立てない事だ。



では、君達の大切な物を取り戻せる様に。


健闘を祈っている。



一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一



祐也「だってよ??」


麻希「そんなあ。」


紫織「嘘っぽいね?」


啓汰「宝か。」


葉月「良いじゃん」


「そうだな。」



何の刺激の無い不自由な青春は、


無敵と言う名の無謀さを連れて、


ひと夏の思い出を期待していた。



だが。


待ち受けていた現実は。


そう、気持ちの良いものでは無かったのだ。



麻希「待ってよ!!」


啓汰「急げ!!!」



葉月「ごめん、、」


紫織「嫌だ、。



お願い。だから、、置いてっ、


いかな。いで、、」


祐也「必ず迎えに来るから。」



「祐也!!!


待てよ!!」


紫織「、、。


私のせいで、、ごめん。ね??」


「気にすんなよ?



、。。シッ、。」



ガタンッ、、



ギィイイイ。。



ガタンッ。



「大丈夫。。」



握った手の感覚が。


自分の放った言葉が。



今でもずっと、俺の中に残っている。。



「俺が音を立てて、反対側に誘き寄せるから。。


だから、その間に。行けるか??」


紫織「、、うん。。



でも。、」


「大丈夫。



俺。足早いだろ??」


紫織「盛大に、転けたけどね。。」


「そうだったか??」



俺なりに精一杯に笑わせてみた。


そしたら少し表情が緩んだ。



「もしも。


俺が掴まっても。


気にせずに行くんだぞ?



"約束"だからな??」



指切りをした。


それが彼女に触れた最後だった。。



「、、じゃあ。


っな??」



バタンッ!!



「こっちだよぉ~!!」



怖くない訳じゃ無かった。


身体は震えていた。



でも、カッコつけたかった。



「、、っはあ。。



はあっ、、はあっ、、」



俺は無事に奴から逃げれて。


戻っては、、来れた。



「紫織、、は??」



だが。


紫織は戻って居なかった。。



麻希は泣いていて。


啓汰が側に居た。



葉月と祐也は先生を呼びに行っていた。



暫くの間。茫然としていた。


今までの記憶が走馬灯の様に早送りで流れた。



俺達は体育館でやった。


その時は部活も何も無くて。早帰りで。


皆で計画して、その日に決行した。



布団の代わりに、マットレスの下に入った。


肉は家から持って来た。



、、やらなきゃ良かった。


サイトすら見なければ、こうはならなかった。



振り返ると。


出てきたハズの扉は既に無かった。



遅れて来る様に。


ようやく宿直の教師が来た頃には、、


既に遅かった。



紫織は、行方不明として片付けられた。


当たる場所も無かった俺は。



責任を他人に押し付けようとした。



「何で置いて行ったんだよ!!


、、俺ら親友だと思ってたのに。



最低だな!!」



葉月「、、ごめんなさい。。」


祐也「俺らじゃどうにもならないと思ったからだよ!!



啓汰と麻希は先に逃げただろうに!!



俺らばっかり責めるなよ!!」


葉月「紫織、、」


啓汰「戻って来たら扉が無かったんだ、、



助けを呼ぼうにも、、



どうしようも。無かったんだ。。



悪いのは、先に出た俺かも知れない。。」



俺も。


確認しなかった。


きちんと紫織出たのを見れば良かったんだ、、



誰にも。


他人を責める権利なんて無かったんだ。



紫織が欠けた事によって。。



俺達は、少しずつ離れて行った、、



まるで、起きた事を忘れさろうとするかの様に。。



そうして、大人になって行った。



何もかもを忘れられる訳も無く。


心の奥底へと深く刺さった傷は。



時に『悪夢』として蘇えった。



何もかもが。


当たり前の生活。



退屈な毎日。



彼女も居なければ貯金すら無い。


いや、、



"貯金がないから結婚すら出来ない"



が、正解だろうか。。



そんな毎日に。ふとした。


小さな、風が吹いた。



たまたまネットサーフィンをしていて。


それが目に止まった。



見覚えのある文章に。



『行方不明者』の文字。



再び投下されたのはSNSで。


それによって。


新たな行方不明者が続出する。



鬼の変わらぬ鬼ごっこは。


まだ、終わってはいなかったのだった。





















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ノモタシクナ 影神 @kagegami

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