証券会社勤務の義田が抱えている金持ちに対するルサンチマンは、勤務終わりの居酒屋やタバコ休憩の愚痴で表出するようなかわいらしいものではない。顧客は愚か同僚にも見せることなく溜め込まれ、自分自身ではそのルサンチマンを正義感だと誤解すらしている(正義感であることは間違っていないかもしれない)。
そんなものは正直いって読んでいて気持ちの良いものではないのだが、ストーリーもキャラクターも筆力も魅力的で、散りばめられた時事ネタやインターネット・ミームも含めて、エンタメとしてグイグイ読み進めてしまう。
ラストも、そう、それでいいんだよといった風情。名作。