エピローグ

 目を覚ますと、毛布に巻かれ、父に肩を抱かれていた。周囲いっぱいに赤と青の明かりが回っているのが見えた。警察車両の回転灯だ。


 父の顔を見ると、涙でぐっしょりと汚れていた。私はワンピースのポケットからハンカチを取り出して、その顔を拭く。父はそれで、私が目を覚ましたのに気付いたらしく、驚きの表情を見せてから、私の手の甲に自分の手を重ねた。


「終わったの?」

「あぁ、終わった。あの男は居ない。もう安全だ」


 父の瞳から再び涙が零れる。冷たく、清々しい風が私の頬を撫で、朝の到来を告げた。


 父は救急車の後部ステップに腰かけていた。足元にはアスファルトの地面が見える。どうやら、ここは研究所手前の道路のようだ。父のすぐ隣には、例のケースが置かれていた。


 大勢の警察官が、所狭しと止められたパトカーや救急車両の隙間を縫って行き来している。


 アッシュとガベル。二人の姿は、どこにも見当たらなかった。


 ビルの隙間から朝日が空へ上り始め、辺りが明るくなって行く。


 再び瞼が重たくなって来る。二度寝の誘いと共に、私は目を閉じた。


 どこか遠くで、カマロが走り去って行く音が聞こえた気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ツインズ・バスタード 車田 豪 @omoti2934

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ