コールオブ冬虫夏草

長月瓦礫

コールオブ冬虫夏草


冬虫夏草。虫に寄生するキノコ。

冬は虫、夏は草の姿をしていると伝えられ、漢方として知られている。

寄生した生物からエネルギーを得て生長する。


寄生者の頭に生えたマツタケが爆ぜた。

ポイントが着実にたまっていく。

ドローンが飛び回り、戦場を生中継している。


背後で地雷が次々と爆ぜ、参加者が星のごとく吹き飛ばされる。

すべてはマツタケを狩るためのトラップだ。


「これ、いつになったら終わるんですかね」


リュウが投げかけた質問に誰も答えなかった。

キノコに寄生された人間がどこからともなく現れる。現在、渋谷駅前の交差点は人ならざるモノで埋め尽くされていた。


帰宅途中の人間の頭からマツタケが生えている。

誰もがうつろな目をして駅前を歩いている。


駅構内で誰かがウイルスをばらまき、その場にいた全員が感染したらしい。

感染者は頭からマツタケが生え、生命エネルギーが吸収されてしまった。

脳みそは活動を停止し、目的もなくさまよう。


マツタケを切り取った瞬間、宿主となった人間は地面に倒れる。

ぴくりとも動かずにそのまま息絶える。


「今からボケるような真似をしたらどうなるか、分かってるよな?」


「この状況がギャグみたいなもんですけどね……」


カインはライフルで頭を打ち抜いた。

確実に頭を狙う。マツタケを取り除いた瞬間、生命活動を停止する。

放置しておけば、他の場所へ移り人間を襲うのは目に見えている。


ここで対処しなければならないし、渋谷駅の現状を隠さなければならない。

だから、キノコ狩りというふざけた催し物が開かれたのだろう。


マツタケを狩るたびにポイントを獲得し、一番多かったチームが勝ちだ。

幸い、キノコ狩りの参加者は多い。

あちらこちらで銃撃音が響き渡っており、すぐに殲滅できそうだ。


その場にいたカインとあやめ、リュウが対応する羽目になった。

武器はすぐさま調達され、一帯が封鎖された。

続々とチームが現れ、戦いは始まった。ゾッとするほど手際が良かった。


この競技を開くために、駅にウイルスをばらまいたとしか思えない。

誰かが秘密裏にイベントの情報を流し、重火器を用意していたのだ。


頼むからツッコミを入れさせないでくれ。

ただでさえ、カオスな状況に頭がついて行っていないんだ。


「現代人は何考えてるか分からねえからな。徹底的に潰すぞ」


火炎瓶を投げつけると、あたり一面に火の手が上がった。

感染者を排除するためなら、手段を選ばないらしい。

誰も彼もが頭からマツタケを生やし、虚空を見つめながら歩いている。


慎重に人の動きを見ながら、マツタケを駆除する。

人ごみの中で建物の奥へ紛れていくヤツがいた。

そいつの頭からひときわ大きなマツタケが生えている。


「逃がすか!」


カインは背後に回り込んで、頭に銃床を叩きこんだ。

頭から血が噴き出て、キノコが木っ端みじんに砕けた。


サイレンが鳴り響き、ゲームが終了した。

ボスを倒したことで、ポイントを大量に獲得した。


ドローンや他の参加者たちは煙のように消えた。

マツタケが生えた人間すら消え失せた。



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コールオブ冬虫夏草 長月瓦礫 @debrisbottle00

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