第2話帰らない元妻

「元気か?」

「もう帰らないのか?」

「叔母の様子は?」

 既読はつくが、返信はない。

 何年そうしていただろう?

 叔母から電話が入った。

「彼女、亡くなったわ」

 わけがわからない。叔母の世話をしに行ったのではないのか。

 なぜ、叔母から連絡が入るのか?

 病院に行くと最期だからと立ち会わせてもらえた。

 ガンだった。

 なぜ、気づいてやれなかったのか?

「彼女、あなたが自分のことばかりだから言っても無駄だって言わなかったのよ。友達にはいうのにね」

 おばの持っているノートには友人と思しき名簿が連なり、葬儀について通夜についてそのほかの日用品の処分といった細かいことまで記してあった。

「いつから?」

「随分前からだろうね。周りに頼みはじめたのはは5年前からだもの」

 その時はちょうど親の介護をしている時で、配慮してやることもしていなかった。

「何も知らないのは俺だけか」

 金銭的余裕はあるが、彼女のノートに名前もないし、あとを頼む名前にも俺の名はなかった。

「夫婦って何だろうな?」

「コミュニケーション不足なのかしらね」

 好きだけでも駄目だし、お金だけでも駄目なのだろう。

 元妻の葬儀は華やかで友人も遠くから駆けつけてくれた。

 俺の時はどうなんだろうな?

 ふと思う。

 仕事で妻さえも顧みない男の最期とはどうなるのだろうか。

 END

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熟年離婚 完 朝香るか @kouhi-sairin

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