ノエル


『私は弱い』

 だから、僕は強くなった。

『私は美しくない』

 だから、僕は誰よりも美しくなった。

『私は自分に自信がない』

 僕だって自信はない。

 それでも、熱に魘されたいつかの夜に君が見た、この優しい悪夢を守り続けた。

 忘れないでほしい。

 僕は、君とここに展示されている作品げんそうたちを、誰よりも愛してる。


 僕ですらも君にとっては一夜の夢幻ゆめまぼろしであるとしても、君が理想とする“自分”を演じることに苦は感じたことはないし、こうすることで君の心を救い続けている気になっていた。

「ノエル。いっしょに、いこう」

 だけど、本当の意味で救われたのは。

 僕の方なのかもしれない。





 ――――さぁ、目を開けよう。

 君と僕、二人ノエルの夢から醒める時間だ。


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夢葬博物館 霧谷 朱薇 @night_dey_

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